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高齢者が1日にとるべき水分摂取量とは? おすすめの摂取方法を介護福祉士に聞く

 更新日:2023/04/28
高齢者が1日にとるべき水分摂取量とは? おすすめの摂取方法を介護福祉士に聞く

人間は、体に必要な水分を定期的に摂取する必要があります。しかし、高齢になると、体の老化や食欲の低下などにより、1日の水分摂取量は低下しがちになり、脱水症のリスクも高まります。そこで、高齢者が1日にとるべき水分摂取量とおすすめの摂取方法について、介護福祉士の千葉さんに対応策を聞いてみました。

千葉 拓未

監修介護福祉士
千葉 拓未(介護福祉士)

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1983年生まれ。札幌市在住。専門学校卒業後、社会福祉士資格を取得し高齢者介護の道へ。通所介護、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護にて介護士として従事する。現在は、Webライターとして、介護問題を中心に執筆している。

水分摂取量が極端に少ない高齢者は脱水症のリスクが高まる

水分摂取量が極端に少ない高齢者は脱水症のリスクが高まる

編集部編集部

はじめに脱水症の仕組みについて教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

脱水症とは、体内にある体液が失われることで、体に不具合が起きている状態を指します。体液には血液やリンパ液、唾液などが含まれ、私たちの体を健康に保つ働きがあります。しかし、何らかの理由で体液が減少すると、体のバランスが崩れて脱水症につながるのです。

編集部編集部

脱水症の原因には何が考えられますか?

千葉 拓未さん千葉さん

気温や乾燥、着ている服といった外的の要因と、食事や水分の摂取量といった内的の要因が考えられます。高齢者が特に気をつけたいのは内的の要因です。高齢になると、食欲が低下したり、喉の渇きを感じにくくなったりします。水分は食事や飲み物から摂取するため、食事や飲み物の摂取量低下は、脱水症の原因につながるのです。

編集部編集部

脱水症状の危険性を詳しく教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

脱水症状が進むと、十分な栄養素を体に取り込めなくなったり、老廃物の排出が不完全になったりするおそれがあります。初期症状は目まいやふらつきですが、脱水が進行すると、頭痛や吐き気を強く感じるようになります。さらに症状が進行すると意識障害やけいれんが起こり、命の危険にもつながります。

高齢者の適切な水分摂取量の目安は? おすすめの飲み方も紹介

高齢者の適切な水分摂取量の目安は? おすすめの飲み方も紹介

編集部編集部

そもそも高齢者の水分摂取が大切な理由はなんでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

高齢者の水分摂取が大切な理由は、2つあります。1つ目は、若い人よりも脱水症や熱中症にかかるリスクが高いためです。高齢者の場合、食欲不振や嚥下障害などにより、必要な水分量を摂取できない可能性があります。

編集部編集部

もう1つの理由についても教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

2つ目は、寝たきりのリスクです。脱水症や熱中症になると安静にしなくてはいけませんが、その間に運動不足により筋力や体力が低下してしまいます。その結果、寝たきりになるリスクが発生するのです。

編集部編集部

脱水症を防止するための高齢者の最低水分量の目安はどのくらいでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

個々の高齢者にあわせた水分量を設定することが大切です。「体重×30ml」という計算式もありますが、こちらはあくまで目安として捉えてください。高齢者に限らず、水分を取り入れる能力、水分を外に出す能力は人それぞれによって異なります。そのため、その人にあった最低水分量を設定しましょう。かかりつけの医師、ケアマネジャー、介護スタッフなどの専門家に相談して、本人のアセスメントを実施してもらい、適切な最低水分量を見つけましょう。

編集部編集部

それでは高齢者の水分補給は何がおすすめですか?

千葉 拓未さん千葉さん

水分は、食べ物からも摂取できますので、食欲のある方はバランスの取れた食べ物にみそ汁などを用意するのがおすすめです。果物やゼリーなど水分が含まれているデザートも効果的でしょう。ジュースやコーヒーでも水分は摂取できますが、砂糖やカフェインのとり過ぎにつながるため、注意が必要です。また、コーヒーには利尿作用があるため、尿量増加や夜間帯の覚醒につながる可能性もあります。本人の希望や体質と相談して、調整してみてください。

高齢者の脱水症を防ぐ対策と注意点

高齢者の脱水症を防ぐ対策と注意点

編集部編集部

高齢者の脱水を防ぐポイントを教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

高齢者の脱水症を防ぐポイントは、「摂取できるときに水分を飲んでもらうこと」です。無理やり飲ませようとすると、強い拒否が予想されますので、本人がその気になったタイミングで促しましょう。隣で一緒に食事したり、午後にティータイムを設けてみたりと、「食べること」「飲むこと」を楽しめる環境を作ってあげるのもポイントです。

編集部編集部

ポイントはわかりましたが、準備する介護者の負担が心配です。

千葉 拓未さん千葉さん

若い人でも食べたくない日があるように、高齢者の食事量にも波があります。摂取量が少ない日があっても焦ることはありません。介助される側は、介助者の表情や様子を案外よくみているものです。がっかりしたりイライラしたりすると、その感情が相手に伝わるおそれがあるため、時には「次はうまくいくさ」と気軽に構えることも大切です。

編集部編集部

介護者の負担を減らしながら脱水を防ぐにはどうしたらよいですか?

千葉 拓未さん千葉さん

家族や社会資源といった周りの力を借りてみましょう。身内に子どもやお孫さんがいる方は、夕食を一緒に過ごしてみてはいかがでしょうか? 一緒にご飯を食べると家族団らんの時間になり、本人の食欲も増すでしょう。介護サービスなどの社会資源を利用する方法も効果的です。訪問介護やデイサービスは、在宅介護をサポートするサービスです。担当者に水分摂取を依頼すれば、介護の専門家が対応してくれるでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

千葉 拓未さん千葉さん

在宅介護では、悩みや不安を1人で抱え込まないことも大切です。「1日〇〇ml飲ませなくてはいけない!」とプレッシャーを抱え込まずに、家族に介護の悩みや不安を吐き出したり、専門家によるサポートを受けたりして、在宅介護の負担を軽減してください。

編集部まとめ

「1日〇〇ml飲ませる」という意識で無理に飲ませるのではなく、「摂取できるときに水分を飲んでもらう」ことを意識することが大切だということがわかりました。適切な水分補給ができると、高齢者が体調を崩すリスクは低減します。本人に適切な量の水分補給を達成するために、まずは信頼できる医師や専門家に相談してみましょう。

この記事の監修介護福祉士