「魚が認知症予防に効果的」な理由を管理栄養士が解説 どのくらい摂取するのが望ましいのか
「魚を食べることは健康にいい」という話しは有名だと思います。実際、魚を食べることで肥満や生活習慣病の予防になるため、食べているという人も多いのではないでしょうか。近年では「魚を食べることで認知症予防に繋がる」という話しもあるようです。注目されつつある認知症予防としての魚の有効性について、管理栄養士の片村さんに伺いました。
監修管理栄養士:
片村 優美(管理栄養士)
目次 -INDEX-
魚には認知症予防があるって本当? 魚と認知症の関係を示す研究データを解説
編集部
魚を食べると認知症になりづらいという話しを聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
片村さん
魚介類の摂取量が多いほど認知症のリスクが低下したという研究報告があります。ただし、この研究にはさまざまなバイアスが含まれるため、全ての結果を鵜呑みにすることはできません。しかし、日本は海に囲まれ魚をよく食べる文化があるので、魚の摂取量が少ない国のデータよりは信頼度が高いと考えても良いでしょう。
編集部
認知症と生活習慣病は関係していますか?
片村さん
認知症と生活習慣病は相互に関連があると言われています。特に糖尿病は認知症の原因となるアミロイドβというたんぱく質の蓄積を促進すると考えられています。また、認知症になると日常的な食事の管理が難しくなるため、生活習慣病のリスクが上がると言えるでしょう。
編集部
どのような魚を食べれば良いですか?
片村さん
魚は白身魚や青魚などいろいろな種類があり、栄養素の構成もそれぞれ異なっています。認知症予防効果を期待されているのは、n-3系脂肪酸と呼ばれる種類の脂肪酸です。サプリメントに配合されていることも多いので聞いたことがあるかもしれませんが、n-3系脂肪酸とはDHAやEPA、DPAのことを指します。これらが多く含まれるのはサバやサンマなどの青魚です。
魚に多く含まれているDHA、EPA、DPAが認知症予防に効果的
編集部
DHA、EPA、DPAとはどのようなものか詳しく教えてください。
片村さん
DHA・EPA・DPAはn-3系不飽和脂肪酸と呼ばれる脂肪酸です。これらは体内で合成することができず、不足すると皮膚炎などを発症します。このことから1日あたり1gの摂取目安量が設定されています。
編集部
DHA、EPA、DPAの効果にはどのようなものがありますか?
片村さん
中性脂肪の低下、不整脈の発生防止、血栓防止などの生活習慣病に関わるものが挙げられています。60歳以上になると魚介類の摂取量がグンと高くなるのですが、これは加齢に伴い健康意識が高まっていることが背景にあり、このような情報を元に食事を選択しているのではないかと推察できます。
編集部
認知症予防に対する効果はどのような働きによるものでしょうか?
片村さん
DHA、EPA、DPAなどのn-3系不飽和脂肪酸は、神経機能に保護的に働く可能性が示唆されています。そのなかでも、最も認知症予防に関連があると考えられているのがDHAです。DHAは私たちの脳内の細胞膜にも多く含まれており、特に記憶を司る海馬の活動になんらかの関係があると考えられています。しかし、まだ明確な根拠やデータがないので明言はできません。
1日にどのくらい魚を食べればいいのか 摂取目安量を解説
編集部
どのくらいの量の魚を食べれば効果を期待できるのでしょうか?
片村さん
1日1切程度とされています。切り身の大きさにはバラつきがありますが、平均的に70〜80gの摂取で認知症リスクを低下させる可能性があると言えそうです。また、生活習慣病の観点から摂取量を考えると、EPA及びDHAを1日0.9g以上摂取している群では心筋梗塞のリスク減少が見られたとの報告があります。
編集部
おすすめの魚料理はありますか?
片村さん
n-3系不飽和脂肪酸は魚の脂に多く含まれていますので、サバやサンマなどの青魚を摂るとよいでしょう。魚焼きのグリルを使うのは脂が落ちてもったいないので、効果的にn-3系脂肪酸を摂る調理法としては煮魚がおすすめです。
編集部
魚を食べる上での注意点はありますか?
片村さん
健康的な食べ方は、いろいろな食品をバランスよく食べること。いくら体に良いと言われている食品でも、そればかり食べていると栄養バランスが偏り、かえって体に悪影響を及ぼすこともあります。青魚だけではなく白身魚やほかの魚介類などもとり入れるようにしましょう。また、魚によっては水銀やダイオキシンなどの環境汚染物質が含まれていることもあります。国から発表される有害物質の耐容摂取量にも注意を向けておく必要がありそうです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
片村さん
簡潔にまとめると、魚の摂取は認知症予防に効果が期待できます。具体的な摂取目安量は1日70~80gで調理法としては脂を逃さない煮魚がおすすめです。魚は認知症だけではなく脂質異常症やメタボリックシンドロームの予防にも役立ちます。普段魚不足を感じている人は意識して魚をとり入れていきましょう。
編集部まとめ
魚をよく食べる人は認知症のリスクが低下するというデータがあることがわかりました。これは、DHAやEPAなどのn-3系不飽和脂肪酸と言われるもののおかげです。n-3系不飽和脂肪酸は青魚に多く含まれており、逃さず食べる方法としては煮魚が良いということです。n-3系不飽和脂肪酸は生活習慣病予防にも良いとされています。普段魚をあまり食べない人は、意識してとり入れてみてはいかがでしょうか。