【闘病】「成人スティル病+新型コロナウイルス感染症」になってしまった
弛張熱(間欠的な発熱)と皮疹、頭痛、関節痛などの特徴的な症状を引き起こす病、それが「成人スティル病」です。難病にも指定されている膠原病の1種で、検査による原因特定が難しい疾患です。1年前に「成人スティル病」と診断され、現在もステロイドの内服による治療をつづけているもりもとさん(仮称)に、これまで体験したことを話してもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年5月取材。
体験者プロフィール:
もりもとさん(仮称)
1970年代生まれの男性。2021年7月中頃から突然眠れないほどの頭痛、夜中にひどい寒気を覚える。翌日には39度の発熱があり、解熱剤を使用しても症状が改善しなかった。総合病院で精密検査を行うが明確な原因を特定できず、40度を超える発熱もあったため順天堂医院で入院となる。明確な原因特定には至らなかったが、最初の症状から2カ月ほど経過した9月末頃、最終的に「成人スティル病」と診断が確定した。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
あらゆる検査で原因不明、最終的に残ったのが「成人スティル病」だった
編集部
もりもとさんが診断を受けた成人スティル病について教えてください。
もりもとさん
成人スティル病は発熱、皮疹、関節症状を伴う全身性炎症疾患の1つです。私の場合は、成人スティル病に特有の皮疹などの症状がなかったため、発症から診断までに2カ月以上かかってしまいました。
編集部
診断が確定するまでの経緯も聞かせてください。
もりもとさん
始まりは2021年の7月中ごろでした。突然眠れないほど強い頭痛、それと酷い寒気が表れ、翌日には39度の発熱もありました。コロナ禍のため近所の内科を受診してPCR検査をしましたが、結果は陰性で解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)をもらって対処しました。しかし、解熱鎮痛剤を内服しても間欠的な発熱で、時には40度になることもあったため、髄膜炎の検査をするため総合病院を受診することになりました。
編集部
総合病院を受診した結果、どうなったのでしょうか?
もりもとさん
結果として髄膜炎ではなかったものの、原因がわからず、そのまま帰っても改善しないので、検査入院になりました。7月末から8月中旬まで検査入院しましたが、やはり原因がわからず、総合診療科のある大学病院宛の紹介状をもらって退院しました。
編集部
大学病院での話も聞かせてください。
もりもとさん
その大学病院ではPET-CTなどの検査を通院で行う予定でしたが、発熱症状が酷くなったため入院させてもらうことになりました。そして、生検などの精密検査を行っても、原因が特定されなかったため、9月末ごろに最終診断として「成人スティル病」となりました。
編集部
成人スティル病と診断を受けてから、どのような治療を行っているのでしょうか?
もりもとさん
現在(取材時)もステロイド服用による治療を継続中です。治療開始直後はステロイドの内服薬を60mg/日でスタートし、問題がなければ2~3週間ごとに10%ほど量を減らしていく治療方針です。35mg/日まで減量したところで退院になりました。11月末に退院して、その後は通院をしながら徐々に減量し、2022年5月の時点で17.5mg/日になっています。
編集部
治療は良い方向に向かっているのですね。
もりもとさん
そうだったのですが、5月に入ってステロイドが17.5mg/日に減量してからは、頭痛と発熱がたまに出るようになり、不安定な状態になっています。一度39度の発熱はあり、微熱や38度の熱もありますが、まだ再発と判断されてはいません。再発があったらステロイドの量を戻すと説明を受けています。
編集部
話は少し戻りますが、成人スティル病の診断が確定したときはどのような心境でしたか?
もりもとさん
一番は「やっと治療が開始できる」という想いでした。解熱鎮痛剤で症状は和らぎますが、発熱時の不快感がたまらなく嫌でした。なので、「治療を始めれば熱が上がらなくなるのでは」という期待感が強かったです。
発症後は生活面で色々な変化が表れた
編集部
発症後の生活にはどのような変化がありましたか?
もりもとさん
治療を開始する前の変化としては、味覚が変化したことです。以前は何でも食べられたのが、発症後は味覚が変化して受け入れられないことがありました。長期入院とステロイド治療のせいか、体の芯の部分が弱った感じがします。手や足の指先に痛みというか痺れというか、何とも言えない違和感がずっと残っています。そういう状態のせいで、以前ほど外出もしなくなりました。ただ、仕事は会社が元々在宅勤務に寛容なので、その点では助かっています。
編集部
治療中の心の支えはどのようなものでしたか?
もりもとさん
今現在も治療中ですが、家族や友人、仕事仲間など周囲の方の存在が心の支えになっているのは確かです。それと少し変わっているかもしれませんが、レアな病気になったこと自体もモチベーションになっています。実は発症中に新型コロナウイルス感染症にも罹患したのですが、「成人スティル病+新型コロナウイルス感染症」になった人なんて、世界にもそういないだろうと、ポジティブに捉えていました。
編集部
現在の体調や生活の様子を教えてもらえますか?
もりもとさん
4月にステロイドを減量してから、あまり体調は良くないです。それまでもステロイドの副作用はありましたが、再発を疑うような症状はなく順調でした。しかし、現在は週の後半に入ると若干の頭痛と足の指の関節が痛む感触が出てきて、それから発熱に至ることが数週間続いています。在宅中心なので仕事は継続できていますが、最近の体調は良くありません。
未来のことはわからない、日々できていることを大事にしてほしい
編集部
成人スティル病をよく知らない方に伝えたい言葉はありますか?
もりもとさん
私の場合は仕事仲間に2つのことを伝えています。「人混みに行けないから外出予定はなるべく組まないで」ということと、「夜に予定を組まないで」ということです。あとは意識していてもしていなくても、言われるとイラっとする言葉は多いです。
編集部
それはどんな言葉ですか?
もりもとさん
例えば、「調子どう?」と尋ねられても、そもそも調子が良いときがありません。「顔がふっくらしたね、安心した」と言われても、ステロイドの副作用なので健康的ではありません。心配して聞いてくれていることでも答えづらかったり、内心傷ついていても愛想笑いをしたりして、気遣いをしていることを理解してほしいと思ってしまい、そんな我儘を相手に要求したくなる自分に余計イラっとします。
編集部
体験を通して、医療機関に望むことはありますか?
もりもとさん
総合診療科をもっと身近に増やしてほしいです。私は発熱が原因で受診しましたが、どの診療科で治療を受けるべきか素人に判断が難しく、苦しい時間だけが増えるのです。成人スティル病なら皮疹が特徴なので、最初に皮膚科に行く人も多いと思います。そこで膠原病内科に案内されればラッキーですが、塗り薬だけを出されて様子見というケースも聞いたことがあります。
編集部
最後に読者に向けてメッセージをお願いできますか?
もりもとさん
成人スティル病は死に至る病気ではありませんが、今は1年前の何の不調もなかった自分の体を思い出せないほど、常に何らかの不調を抱えています。だからこそ、日々の出来ていることを大事にしてほしいと強く思います。病気を患っている方は、主治医の先生、家族、友達、仕事仲間など周囲に協力を得なければならないことも多いですが、決して落ち込まず、諦めず前向きに治療に進んでほしいと思います。
編集部まとめ
もりもとさんの患っている成人スティル病は検査所見が乏しく、非常に診断の難しい病気です。強いて言えば、症状は間欠的な発熱とそれに伴う皮疹、関節痛が特徴ですが、それ以外に特徴となる所見がほとんどありません。生命予後は良い病気ですが、闘病をする当人にとっては苦痛の強い病です。もりもとさんの体験談から、多くの方が成人スティル病への理解を深めてくれれば、同じように闘病を続ける方への助けになるでしょう。