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「股関節脱臼」発生の仕組みを小児整形外科医が解説! 脚を引っ張ると脱臼するのはウソ?ホント?

 更新日:2023/03/27
股関節脱臼発生の仕組みを小児整形外科医が解説!脚を引っ張ると脱臼するのはウソ?ホント?

はじめての子育てに取り組んでいる方の中には、赤ちゃんのオムツ替えの際に「脚を引っ張ると股関節が脱臼する」と言われて、恐る恐るおこなっている人もいると思います。しかし、本当にそれだけのことで赤ちゃんの股関節は悪くなるのでしょうか。そもそも股関節脱臼はどうやって起こるのか。小児整形外科医の中川先生に回答してもらいました。

中川 将吾

監修医師
中川 将吾(つくば公園前ファミリークリニック)

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2009年筑波大学医学専門学群医学類卒業後、小児整形外科を専門とし、筑波大学附属病院、滋賀県立小児保健医療センター整形外科、茨城県立医療大学付属病院整形外科などで勤務し、様々な経験を積む。2022年にはつくば公園前ファミリークリニックを開設し、地域に誇れるクリニックを目指し診療に励んでいる。

脚を引っ張ることで股関節が外れることはない

脚を引っ張ることで股関節が外れることはない

編集部編集部

股関節脱臼はどのような病気ですか?

中川 将吾先生中川先生

その名の通り、股関節の骨が外れてしまう病気です。赤ちゃんに起こることが多く、外れることで歩けなくなることはありませんが、そのままの状態で成長すると骨の発育に悪い影響が出てしまうことがあります。

編集部編集部

今回は赤ちゃんの話しに絞りたいと思います。股関節脱臼はオムツ替えで発生すると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?

中川 将吾先生中川先生

オムツ替えの際に脚を引っ張ることと股関節脱臼発生の関連性を示した研究結果はありません。膝と股関節を伸ばした状態にしておくことが脱臼の発生に関係しているといわれており、解剖学的に考えてもオムツ替えが股関節脱臼につながる可能性は低いと考えられます。

編集部編集部

股関節脱臼は抱っこの仕方と関係あるという話は本当ですか?

中川 将吾先生中川先生

日本小児整形外科学会では、股関節を深く曲げて、股関節を曲げた状態で両脚をM字の形に広げた「コアラ抱っこ」が推奨されています。反対に、膝や股関節がまっすぐに伸びた状態になってしまうため、股の間に手を入れておこなう横抱きは良くないと考えられます。抱っこ紐と股関節脱臼発生の報告はいまのところありません。

参照:日本小児整形外科学会「先天性股関節脱臼予防パンフレット」2013

股関節脱臼は発育にともなって発生する!?

股関節脱臼は発育にともなって発生する!?

編集部編集部

股関節脱臼はどうして発生するのですか?

中川 将吾先生中川先生

なぜ股関節が脱臼してしまうかについてはまだはっきりとはわかっていません。しかし、現時点では、性別(女児)、骨盤位分娩、股関節疾患の家族歴などが発生のリスクファクターと言われています。ここに力学的な要因が重なることで股関節脱臼が発生すると考えられています。

編集部編集部

股関節脱臼はいつ発生するのですか?

中川 将吾先生中川先生

産まれたときには脱臼していなくても、その後の発育過程の中で徐々に脱臼していきます。そのため、以前は先天性股関節脱臼と言われていましたが、近年では発育性股関節形成不全と呼ばれる様になっています。

編集部編集部

股関節脱臼はどうやって発見するのですか?

中川 将吾先生中川先生

先述したリスクファクターに当てはまる場合には、3ヵ月以降に専門医による診察を受けることが勧められています。そのほかにも乳児健診での診察項目の一つになっており、必要であれば専門医が紹介されます。両親が最初に気付くポイントとして、股関節の開きの左右差やオムツ替えのしにくさが言われています。

股関節脱臼の予防方法

股関節脱臼の予防方法

編集部編集部

股関節脱臼は予防できるのでしょうか?

中川 将吾先生中川先生

確実な予防方法は提唱されていませんが、「コアラ抱っこや脚の締め付けをおこなわない」「自由な運動をさせる」「膝が内側に入ってこない寝方をする」などが勧められています。近年のユニークな方法としてオムツを2枚当てることなども報告がありますが、効果がないといった報告もあり、今後の発展が期待される分野だと考えています。

編集部編集部

股関節脱臼が心配でも、地域によっては専門医の先生にすぐ診てもらうのが難しい場合があると思います。受診までそれまでどの様に過ごせば良いでしょうか?

中川 将吾先生中川先生

リスクファクターに当てはまる場合は、遅くならないうちに専門医の受診が勧められています。しかし、小児専門の整形外科医が減少し、地方では受診へのハードルが高くなっています。なので、ご自宅で予防することが求められます。当院でおこなっている予防法としては、向き癖がある場合は首や肩の下にタオルやクッションを入れてまっすぐに寝られる様にし、股関節を無理なくリズミカルに曲げ伸ばしして遊ぶことなどを勧めています。

編集部編集部

お母さんが股関節脱臼で治療をおこなっていた経験がある場合、娘さんに遺伝するのでしょうか?

中川 将吾先生中川先生

股関節脱臼発生に関する遺伝子は見つかっていません。ただし、家族歴がリスクファクターとなっており、母親や祖母といった3親等以内に脱臼の方がいる場合には専門医の受診とその後の経過観察をおこなっています。

編集部まとめ

股関節脱臼は様々な要因が重なることで発生すると考えられており、その発生についてまだ分かっていない点が多くあります。成長に伴って徐々に脱臼が起こるため、現代の子育て方法の中でこれをやってしまったから脱臼するといった極端な方法はないようです。正しく知って、予防をおこない、少しでも変だと感じたら早めに専門医を受診しましょう。

医院情報

つくば公園前ファミリークリニック

つくば公園前ファミリークリニック
所在地 〒300-2654 茨城県つくば市水堀485-1
アクセス つくばエクスプレス 「万博記念公園駅」下車 車5分
診療科目 小児整形外科、リハビリテーション科

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