手術後は翌日からリハビリ開始⁉︎ 早期リハビリのメリットを理学療法士が解説
多くの人が手術後のリハビリに対して不安を抱える要因に、リハビリの内容や効果について、あまり知られていないことがあると感じます。今回は手術後早期から行うリハビリの内容や早期に行うことによるメリット、さらに注意点について「理学療法士」の小島さんに伺いました。
監修:
小島 雄也(理学療法士)
ユマニテク医療専門学校(現・専門学校ユマニテク医療福祉大学校)理学療法学科卒業。卒業後、三重県のリハビリ病院に就職して主に重度脳卒中患者のリハビリに携わる。愛知県のリハビリテーション病院に転職後はロボットなど先進医療機器を活用した歩行訓練を多数行い、学会発表も経験する。現在も病院で働く傍らトレーナーとしてダイエットサービスを提供している。
手術後のリハビリとは
編集部
手術後は翌日からリハビリをすることも多いと聞きましたが、実際のところどうなのでしょうか?
小島さん
体の状態にもよるのですが、手術後すぐにリハビリを始めることが多いですね。早期からリハビリを開始することのメリットは大きいので、体調の変化に配慮しながら積極的に進めていきます。関節の柔軟性、筋力、痛みの程度など患部の状態を確認しながら、術後のリハビリをスムーズに行う目的で、手術後だけでなく手術前から理学療法士が介入することもあります。
編集部
どのような手術の後にリハビリを行うのでしょうか?
小島さん
大腿骨つけ根の骨折、膝関節を人工関節に変更するなど整形外科的な手術後の患者を対象にリハビリをすることが多いですね。また、脳卒中発症後も当日から積極的にリハビリを行います。
編集部
実際に行う早期のリハビリ内容について教えて下さい。
小島さん
整形外科的な手術後の場合、関節が硬くならないように手術した箇所を中心に機械などを使って早期から動かします。また、積極的に行うリハビリの1つが離床です。手術当日からリクライニング式のベッドで体を起こすなどしていきます。立って荷重するリハビリを行うかは、手術方法や骨の安定性などから主治医によって判断されます。
早期からリハビリをするメリットとは?
編集部
早期にリハビリを開始すると、どんなメリットがあるのでしょう?
小島さん
リハビリを早い時期から行うことで、歩行能力の早期回復が期待できます。手術後に関節はどうしても弱くなってしまうので、関節を重点的にリハビリすることで回復が早くなります。したがって、結果的に早い時期からリハビリを開始した方が、早く退院できる傾向にあります。
編集部
逆に早期からリハビリをしないとどうなりますか?
小島さん
高齢者の場合は認知症の進行が懸念されます。術後に寝たきりになっていると全身の筋力低下に繋がり、歩行能力の回復が遅れてしまいます。また、筋力低下は足だけでなく、口周りの筋肉にも起こりますので、飲み込みが上手く行えずにむせてしまい、誤嚥性肺炎に繋がる危険性もあります。
編集部
手術後は、どれくらいの期間リハビリが必要でしょうか?
小島さん
まずは手術を行う急性期病院で状態が安定するまで2週間前後、回復期病院で2カ月ほどリハビリを行います。ほかの疾患をお持ちの場合は、状態を加味して期間が調整されます。医師の指示があれば、希望に応じて退院後に整形外科などで外来リハビリ、介護保険を利用してリハビリをすることも可能です。
早期のリハビリで気をつけること
編集部
早期のリハビリで気をつけることはありますか?
小島さん
股関節の人工骨頭を入れる手術の場合、脱臼するリスクがあるため注意が必要です。手術前から脱臼の管理方法について説明を行い、習慣化していきます。また、手術後は体調が変化しやすい時期でもあるので、血圧、体温、患部の痛みなどを考慮して慎重に進めていきます。
編集部
そんな早くから動かして痛くないのでしょうか?
小島さん
痛みを伴うこともありますが、関節の構造を考えながら、負担がなるべくかからないように進めていきます。必要に応じて痛み止めの薬を使って痛みをコントロールすることもできますので、痛みがある場合はご相談ください。
編集部
早期リハビリを行うことで、身体に悪い影響はないのでしょうか?
小島さん
いきなり離床することで、血圧の急降下が起こる危険性がありますので、測定しながら慎重に進めていきます。しかし、早期リハビリをしないことによるデメリットの方が多いので、体調を確認しながら行っていきます。
編集部まとめ
早い時期からリハビリを開始することで、身体の早期回復が期待できるということが分かりました。手術後というと動けない状態をイメージしていたので、当日からベッドを起こすなどの簡単なリハビリを行うというのは意外でした。手術後は痛みなどの不安も大きいですが、薬などで痛みをコントロールすることも可能なようなので、相談しながら進めて早期回復に努めたいですね。