「睡眠障害」の原因を医師が解説! 症状や治療法・日常的な対策もご紹介
眠りたいのに眠れない「睡眠障害」。不眠症をストレスに感じる場合もあれば、短時間の睡眠で全く平気という人もいるでしょう。こうした眠りの問題をどう捉えるべきなのか。睡眠薬の必要性やセルフケアも含めて、「リブ再生クリニック」の住吉先生を取材しました。
監修医師:
住吉 公洋(リブ再生クリニック)
睡眠障害とはどんな病気なの?
編集部
「睡眠障害」に定義はあるのでしょうか?
住吉先生
睡眠に関連した様々な病気を、まとめて睡眠障害と呼びます。大別すると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、過眠症、寝付きが悪いことの総称としての不眠症、体内時計が狂う概日リズム睡眠障害、それと夢遊病のような睡眠時随伴症、むずむず脚症候群のような睡眠関連運動障害も含まれます。
編集部
そうなると、不眠の原因は分類ごとに異なりますよね?
住吉先生
そうなります。不眠症の原因としてイメージしやすいのは、騒音や個人的な不安などでしょう。ですが、それ以外にも肥満が睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こしていることもあります。また、女性不眠症の原因として、女性ホルモン分泌の急激な低下や更年期障害なども考えられます。したがって、個々に不眠の原因を探って対策していきましょうということです。
編集部
からだの病気のほか、「こころの病気」もありそうです。
住吉先生
入眠障害や中途覚醒自体にお悩みで、悪循環に陥るようなケースですね。また、寝られないのではなく、過眠症に分類される「ナルコレプシー」という病気もあります。別名、「日中の居眠り病」とも言われていて、突然、気を失ったように眠りに落ちてしまいます。居眠りという症状自体も心配ですが、生活への支障を悩まれる人もいらっしゃるでしょう。
編集部
睡眠が足りないに限らず、寝すぎることも障害の一形態ということですか?
住吉先生
そういうことです。ヒトは本来、「意識を覚醒させておく」という能力を持ち合わせています。しかし、何かしらの原因によってこの能力が低下すると、いつも眠たい状態を続けてしまうのです。この状態も障害の一形態でしょう。
睡眠障害の治し方は? 治療法は睡眠薬以外にもある?
編集部
次は治療方法です、睡眠薬の処方が一般的でしょうか?
住吉先生
いいえ、原因によります。例えば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)なら、睡眠中の呼吸をアシストする「CPAP(シーパップ)」という機器の貸し出しになります。概日リズム睡眠障害なら、生活習慣の改善を目的とした認知行動療法やアドバイスが有効です。また、睡眠薬以外の薬で症状を和らげることも、症例によってはありますね。総じて、「睡眠障害にはこの治療方法」ということが一概に言えず、状態によって異なるということです。
編集部
「睡眠薬には依存症がある」と聞いたことがあります。
住吉先生
はい。睡眠薬の常用は控えるべきです。睡眠薬が効きにくくなる「耐性」の問題もありますしね。日本睡眠学会のガイドラインでも、徐々に減薬しつつ、最終的には「睡眠薬からの卒業」を念頭に置いています。常用している方の減薬はかなり難しくなるので、あくまでも一時的な補助が睡眠薬の正しい使い方になります。
編集部
市販の睡眠改善薬やサプリメントについてはどうでしょうか?
住吉先生
エビデンスが示されている事実として、「大豆に含まれるトリプトファンが、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンに変わる」というものがあります。この機序を製品化しているとしたら、信頼性は高いです。ただし、市販品は依存のコントロールが効かないですよね。加えて、真の原因をスルーしてしまうかもしれません。やはり受診だけはして、そのときに市販品の相談もされてみてはいかがでしょうか。
医師が勧める日常生活でできる睡眠障害の対策
編集部
日頃からの心がけについてさらに伺いたいです。
住吉先生
例えば、枕やマットレスを新調するといった「睡眠の質を高める」ための工夫も取り入れてみてはいかがでしょうか。市販品でも高機能で有用なものが出回っています。とくに枕の高さ、つまり「眠るときの首の角度」は重要です。また、マットレスの硬さは直接、体への負担としてはねかえってきますよね。あとは、寝具とは別ですが、起床時に日差しを浴びることで、体内時計が整います。
編集部
「昼寝」については、どのようにお考えでしょうか?
住吉先生
15~20以内の昼寝なら、脳の休憩という意味でも有効でしょう。しかし、昼寝の時間が一般に20分を過ぎると、脳は「睡眠時間」としてカウントします。そのせいで、夜に眠りにくくなることがあるかもしれません。上手な昼寝の仕方は、カフェイン飲料を飲んでから仮眠することです。カフェインは、摂取してから20分後くらいに効いてくるからです。
編集部
寝る直前に何をしていたかも問われますよね。
住吉先生
もちろんです。例えば、リラックス目的でゲームをしていたとしても、脳には膨大な情報が流れ込んでいます。自律神経の「交感神経」が優位となる興奮状態が続くでしょう。他方で睡眠に適しているのは、「副交感神経」が優位な休憩状態です。この切り替えは、すぐにできません。
編集部
寝酒についてはどうでしょうか?
住吉先生
アルコールは肝臓で分解されるので、あまり負担をかけすぎないようにしましょう。飲み過ぎて眠ると肝臓が疲れて、むしろ浅い眠りになってしまいます。酒量が次第に増加していくと悪循環ですし、二日酔いもつらくなると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
住吉先生
一般に、睡眠障害を医療機関で治すという発想が乏しいのかもしれません。ご自身では気づけないような不具合のチェックも含めて、もっと医療機関をご活用ください。「質の高い眠りでハッピーに1日を送ろう」という願望も、立派な受診動機だと考えています。
編集部まとめ
どうやら、「なかなか眠れない、睡眠中にたびたび起きてしまう」ことをして、睡眠障害だと捉えていました。しかしそれは、不眠症という1カテゴリーにすぎません。寝具の新調といった“不眠症対策”はいくつか聞けたものの、例えば、フカフカのマットレスで夢遊病が解決するとは思えません。同様に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)なのに、睡眠サプリメントに頼ろうとすることもナンセンスです。やはり、個人ごとの原因を受診して確認することが先決でしょう。
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