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【不妊治療】ストレスが不妊の原因に? 心理カウンセラーに聞く「妊活うつと不妊治療中のメンタルの保ち方」

 更新日:2023/03/27
ストレスが不妊の原因に? 心理カウンセラーに聞く「妊活うつと不妊治療中のメンタルの保ち方」

「ストレスが不妊の原因になるって本当?」「不妊治療中のストレスとはどう向き合えばいいの?」。このような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。不妊治療中は、治療に伴う身体的な苦痛のほか、妊娠への焦りなどさまざまなストレスを生じることがあります。しかし、このようなストレスが不妊の原因になっているとしたら、どのようにして治療に臨んだら良いのでしょうか。そこで今回は、ストレスと不妊の関係や不妊治療中のメンタルの保ち方などについて心理カウンセラーの平山先生に詳しくお話しを伺いました。

平山 史朗

監修生殖心理カウンセラー
平山 史朗(東京リプロダクティブカウンセリングセンター/東京HARTクリニック)

プロフィールをもっと見る
生殖心理カウンセラー、臨床心理士、公認心理師、家族心理士 他
日本生殖心理学会 副理事長、 日本の生殖心理の第一人者、大学・米国で指導を受けたのち、20年以上不妊治療専門クリニックで患者さんの心理ケアに携わる。
生殖心理に関わる数々の専門講座の監修・講師なども幅広く務める。

ストレスがたまっていると妊娠しにくい?

ストレスがたまっていると妊娠しにくい?

編集部編集部

ストレスのせいで不妊になるって本当でしょうか?

平山 史朗先生平山先生

これから妊娠を希望されている方や不妊治療を受けている方の中には、「ストレスが不妊の原因になる」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ストレスが不妊の原因になるというよりは、不妊自体がストレスの原因になっていると考える方が妥当でしょう。不妊の本質的な原因は卵子と精子の質的な問題であることが分かっています。ただ、不妊や不妊治療によって生じるストレスが、妊娠を妨げるような働きをする可能性があることも指摘されています。

編集部編集部

具体的に、ストレスは妊娠にどのような影響を与えるのでしょうか?

平山 史朗先生平山先生

実際には、ストレスと不妊とを関連づける根拠は乏しく、はっきりとしたことは分かっていません。しかし、不妊治療中のストレスによってホルモンバランスが乱れることはよく知られており、研究レベルではありますがストレスは着床に影響を与えうるのではないかという見解も出てきています。不妊治療中は多くの方がストレスを感じていると思いますので、治療を受けながら、どのようにストレスと向き合うかということは妊活中のカップルの課題ともいえるかもしれません。

妊活がうまくいかないストレスによって起きる「妊活うつ」

妊活がうまくいかないストレスによって起きる「妊活うつ」

編集部編集部

「妊活うつ」の特徴や症状について教えてください。

平山 史朗先生平山先生

妊活うつ(不妊うつ)は正式な病名ではありませんが、妊活中に生じる抑うつ症状によって、うつ病になってしまうことを指します。抑うつ症状とは、うつ病によくみられる、気分の落ち込みや自責感、睡眠や食欲の異常などのことです。妊活のストレスによってこれらの症状がでてきて苦痛を感じる場合に、妊活うつとよばれます。妊活うつで現れる症状としては、妊活だけでなくあらゆることに興味や意欲が湧かなくなってしまったり、突然涙が出てしまったりするほか、不眠や希死念慮など、さまざまな症状があげられます。

編集部編集部

「妊活うつ」はどのような人がなってしまうのでしょうか?

平山 史朗先生平山先生

妊活うつになるのはめずらしいことではなく、体外受精などの高度生殖医療の初期段階で、半数以上の方に軽度以上の抑うつ症状がみられたという最近の調査結果もあるほどです。しかしこれは妊活中の女性が精神的に弱いなどの気質が影響しているのではなく、パートナーとの関係や経済的な負担、治療に伴う身体的苦痛などさまざまな要因が重なり合った結果生じるものといわれています。さらに不妊治療中のストレスは、がん患者さんが感じるストレスと同程度ともいわれており、妊活うつの方は強いストレス状態にあることが考えられます。

編集部編集部

妊活がつらいと感じ、「妊活うつかな?」と思ったら、予防法や対策法はありますか?

平山 史朗先生平山先生

妊活中のストレスを全てなくすことはできませんので、上手く付き合っていくことが大切です。例えば、パートナーや友人に悩みや不安を聞いてもらったり、妊活だけでなく仕事や遊びなどほかのことに集中したりする時間を持つことも有効です。気持ちが楽になり、不妊治療に前向きになれるかもしれません。しかし、妊活うつは心の不調であり「病気」でもありますので、治療を受けている産婦人科の主治医に相談するほか、心療内科や精神科を受診することや「心理カウンセリング」を受けることも大切です。不妊治療中だけでなく、これから治療を始めるという場合にも、心理カウンセリングを受けることで妊活うつの予防に役立つでしょう。

不妊治療中のメンタルの保ち方・メンタルケアの重要性

不妊治療中のメンタルの保ち方・メンタルケアの重要性

編集部編集部

「心理カウンセリング」はどんな時に受けるものなのでしょうか?

平山 史朗先生平山先生

不妊治療中、少しでもストレスやつらさを感じる場合には心理カウンセリングを受けてみても良いでしょう。心理カウンセリングでは悩みをただ聞いてくれるだけでなく、メンタルの保ち方や医療従事者とのコミュニケーションのとり方など治療との付き合い方を身につけることもできますので、ストレスが大きくなる前に受けることをおすすめします。マッサージを受けるような気持ちで、気軽に受けてみてはいかがでしょうか。

編集部編集部

カウンセリングを受けると、どんな効果がありますか?

平山 史朗先生平山先生

心理カウンセリングは、治療中の抑うつ症状や不安などを改善する効果が期待できることが分かっています。また、治療を受ける方だけでなく、パートナーが治療に前向きに向き合えるようサポートしてくれます。特にこれから不妊治療を初めて受ける方は分からないことも多く、治療にどう向き合えば良いか不安に感じることもあるでしょう。心理カウンセラーの中には、訓練を受けて不妊の専門知識を持った人もいるので、不妊治療の疑問や不安を理解しています。そのため、幅広い悩みに適切な助言をくれるだけでなく、治療への具体的な疑問にも対応してくれます。

編集部編集部

不妊治療がつらく、やめたい時などのメンタルの保ち方はありますか?

平山 史朗先生平山先生

不妊治療は明確なゴールが見えず、つらいと感じてしまうこともあるかと思います。そんな時は一度肩の力を緩め、妊活以外のことに意識を向けてみましょう。パートナーとも妊活のことばかりではなく、二人で旅行や趣味を楽しむ時間を持つことも大切です。たまには治療をお休みして、思いっきり楽しめることをしてみてはいかがでしょうか。そのような気分になれないという状態であれば、すでにストレスが強くかかっているということでもあると思います。また、不妊治療はご自身だけでなく、パートナーと二人三脚で進めるものです。なんでも一人で背負わず二人で共有することで、不安も半減するかもしれません。

編集部編集部

ほかにお勧めの方法はありますか?

平山 史朗先生平山先生

ほかにも、 SNSで同じような境遇の人とつながることや、信頼できる不妊当事者団体のイベントやおしゃべり会など、悩みを共有できる仲間を見つけることも役立ちます。同じ妊活している方に話を聞くと、つらいのは自分だけではないということが分かり、精神的に楽になるでしょう。また、友人や家族に悩みを打ち明けにくいという場合などは、気持ちに共感してくれる新たな友人と出会えるきっかけにもなるかもしれません。ストレスと上手に付き合いながら心理カウンセリングを活用し、無理なく妊活を進めていきましょう。

編集部まとめ

不妊治療開始初期の半数以上の女性に抑うつ症状があることがわかっています。しかしこれは心が弱いなどの気質によるものではなく、身体的な苦痛や経済的な負担、妊娠への焦りなど、さまざまな要因が重なって生じるものとのことです。そのため、不妊治療中はストレスと上手く向き合いながらパートナーと協力して治療を進めることが重要といえるでしょう。また、治療中の悩みや不安は家族や友人に相談するほか、「心理カウンセリング」を受けることも有効です。一人で悩まず、専門知識を持ったカウンセラーに相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修生殖心理カウンセラー