心電図で異常があると言われたらどうすべき? 医師が心電図検査の見方や注意点を解説
健康診断や人間ドックで心電図検査を受けて異常を指摘されたことがある人は、意外と多いのではないでしょうか。一体、心電図検査で異常が見つかった場合、どのような疾患が疑われるのでしょう。また、そのときにはどうしたらいいのでしょうか。今回は「高針クリニック」の竹中先生に心電図に関する疑問を解決していただきました。
監修医師:
竹中 真規(高針クリニック)
健康診断などの心電図検査で異常が出たらどうしたらいい?
編集部
健康診断の心電図検査は、なんのためにおこなうのですか?
竹中先生
簡単に言えば、心電図検査は心臓の動きを波形に表して、心臓に病気がないかどうか見るための検査です。心臓は筋肉から弱い電気信号を流して、それによって心臓を拍動させています。心電図検査では、その電気信号を拾って波形で記録して、心臓のリズムが乱れていないか、心筋に虚血が起きていないかなどを調べます。
編集部
異常が見つかることもあると聞きました。どのような異常が見つかることがあるのですか?
竹中先生
心電図の異常には様々な種類がありますが、大きく分けて「波形の異常」と「リズムの異常」があります。
編集部
まず、「波形の異常」とはどのようなものですか?
竹中先生
そもそも心臓は、収縮する際に電気的な刺激を発していて、心電図では心臓のどの部分がどのように動いているかを、「P波」「Q波」などに分類してグラフへ記録します。正常な心臓の心電図に比べて、これらの波が高すぎたり低すぎたり、正常とは異なる形になったりしている場合、「波形の異常」が指摘されます。
編集部
次に「リズムの異常」とはどのようなものですか?
竹中先生
リズムの異常は、文字通り心臓が規則正しく拍動していない状態のことです。健康な心臓は、規則正しく一定のリズムを刻んで拍動しています。しかし、ときには拍動が早くなったり遅くなったりと、不規則に飛ぶことがあります。これを「リズムの異常」と言います。
心電図検査の異常・所見で見つかる病気は?
編集部
心電図検査では、どのような病気が見つかることが多いのですか?
竹中先生
まず「波形の異常」が起きている場合、考えられるのは心筋梗塞や狭心症などの心疾患です。そのなかでも、とくに怖いのは心臓に酸素や栄養を届ける冠動脈が詰まって心筋が壊死してしまう心筋梗塞です。心電図の波形を見ることで、心筋梗塞がどれくらい進行しているか、発症してからどれくらい時間が経ったかなどを推測することができます。
編集部
次に、「リズムの異常」が起きている場合には、どのような病気が考えられるのですか?
竹中先生
最も多いのは「不整脈」です。簡単に説明すると、心臓が正しく拍動していない状態のことを不整脈と言います。不整脈には様々な種類があり、脈が遅くなる「徐脈性不整脈」や、脈が速くなる「頻脈性不整脈」、脈が不規則になる「期外収縮」があります。また近年、話題になることが多い「心房細動」も、不整脈の一種です。
編集部
心房細動について、もう少し詳しく教えてください。
竹中先生
心房細動は、心房が痙攣(けいれん)したように細かく震え、血液を全身へ送り出せなくなってしまう状態です。動悸や息切れなどが起こるほか、悪化すると脳梗塞など命のリスクを引き起こすことがあります。
編集部
心電図では、どのタイプの不整脈か見分けることができるのですか?
竹中先生
およそ検討をつけることができますが、注意しなければならないのは、心電図検査では記録時間が10~20秒間と短時間であるため、その測定時間に不整脈が起きなければ記録できないということです。そのため、不整脈を確実に見つけるには、ほかの検査が必要になることもあります。また、期外収縮は健康な人でも起こることがあります。
編集部
心筋梗塞や狭心症、不整脈には自覚症状があるのですか?
竹中先生
必ずしも自覚症状があるわけではありません。例えば、心筋梗塞には胸の痛みや胸が締め付けられるような感覚を訴える人もいますし、不整脈の場合は動悸や息切れなどを訴える人もいます。その一方で、半数くらいの人はなにも自覚症状がありません。そのため、人間ドックや健康診断で心電図検査を受け、異常が見つかって驚いたという人も少なくありません。
心電図検査を受けた後に注意すべき点は?
編集部
心電図検査で異常が見つかった場合、どうすればいいのでしょうか?
竹中先生
心筋梗塞や不整脈のように、自覚症状がない疾患が潜んでいる場合もあります。実際、心電図検査を受けて異常が指摘されることは、珍しくありません。そのため、放置してしまう人も多いのですが、必ず医療機関を受診して精密検査を受けるようにしてください。
編集部
なぜ、心電図検査で異常を指摘されることは珍しくないのですか?
竹中先生
加齢やストレスなどが原因となって、心電図に異常が起きることもあるからです。しかし、裏には重篤な病気が隠れている恐れもあります。一度でも心電図異常を指摘されたら、専門医の診察を受けるようにしましょう。
編集部
受診する場合は、何科に受診するのがいいですか?
竹中先生
循環器科や循環器内科を受診するのがおすすめです。もし、近隣に循環器科がない場合は、まずはかかりつけ医に相談してみるといいでしょう。
編集部
心電図検査は20~30代の若い人も受けた方がいいのですか?
竹中先生
はい。年齢に関係なく、若い人でも不整脈が見つかることがありますから、予防のために年1回程度、受けることを推奨します。とくに肥満の人は受けるようにしてください。子どもも学校で心電図検査がありますから、そこで異常が見つかった場合は早めに病院で詳細な検査を受けることをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
竹中先生
心電図の異常は、心臓の病気のサインかもしれません。とくに、最近増えている心房細動のような放置すると脳梗塞など重篤な病気を引き起こしかねないものもあります。人間ドックなどで心電図異常が指摘された場合は、必ず早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。その際は、人間ドックなどの心電図を持参するのがおすすめです。再検査の手間を省くことができ、診察がスムーズに進みます。場合によっては再度、心電図検査をおこなうこともあるかもしれませんが、心電図の検査は痛みや被ばくなどのリスクもありませんし、体に優しい検査です。ぜひ、安心して受けていただきたいと思います。
編集部まとめ
ストレスや寝不足などでも心電図検査で異常が指摘されることもあるため、「病院に行かなくても大丈夫」と安易に考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、心臓の病気は前触れなく発症し、静かに命を蝕んでいくこともあります。一度でも心電図検査で異常を指摘されたら自己判断せず、専門医の診察を受けるようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒465-0061 愛知県名古屋市名東区高針1丁目1525番地 |
アクセス | 名古屋市営地下鉄東山線「星ヶ丘駅」 バスで8分 |
診療科目 | 内科、循環器内科、心臓リハビリテーション |