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肉食による大腸がんのリスクを専門医が解説 鶏肉・赤身肉・加工肉など種類による違いはあるのか?

 更新日:2023/03/27
肉食による大腸がんのリスクを専門医が解説 鶏肉・赤身肉・加工肉など種類による違いはあるのか?

「肉をよく食べる人は大腸がんになりやすい」という話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか? また、「ソーセージやハムなどの加工肉を食べすぎると危険」と言われることもありますが、実際のところどうなのでしょう。浜野胃腸科外科副院長の浜野先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。

浜野 徹也

監修医師
浜野 徹也(浜野胃腸科外科医院)

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杏林大学医学部卒業。立川相互病院、東京女子医科大学八千代医療センターを経て、2021年浜野胃腸科外科副院長就任。東京女子医科大学八千代医療センター内視鏡科非常勤講師、東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科非常勤医師、千葉県がんセンター消化器内科非常勤医師。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本内科学会認定医、日本胆道学会認定指導医。

肉食によって大腸がんのリスクが高まるって本当? 発がん性の理由を消化器の専門医に聞く

肉食によって大腸がんのリスクが高まるって本当? 発がん性の理由を消化器の専門医に聞く

編集部編集部

肉をよく食べる人は大腸がんのリスクが高くなると聞いたことがあります。本当でしょうか?

浜野 徹也先生浜野先生

研究により、肉食と大腸がんのリスクには相関関係があることが示されています。たとえば、国立がん研究センターが過去に行った研究によると、「赤肉の摂取量が多いグループで女性の結腸がんのリスクが高くなった」「肉類全体の摂取量が多いグループで男性の結腸がんリスクが高くなった」という結論が得られています。

※国立研究開発法人国立がん研究センター「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html

編集部編集部

なぜ、肉をよく食べると大腸がんのリスクが高まるのですか?

浜野 徹也先生浜野先生

「肉」と一口にいっても大腸がんとの相関関係が指摘されるのは、赤肉です。赤肉とは、一般的に牛肉、豚肉、羊肉のように見た目が赤い肉のことを言います。赤肉には亜鉛とヘム鉄が多く含まれており、亜鉛は大腸がんのリスクを軽減する働きをしますが、反対にヘム鉄は大腸がんリスクを上げてしまうことがわかっています。

編集部編集部

生肉だけでなく、ハムやベーコン、ソーセージなどの加工肉も大腸がんのリスクを上げると言われますが。

浜野 徹也先生浜野先生

ハムやベーコン、ソーセージなどを加工する過程で、硝酸塩や亜硝酸塩などの添加物が使用されます。これらは、加工肉の鮮度維持や防腐を目的として使用されるのですが、実は、これらに発がん性があるため、大腸がんのリスクを上げるとされているのです。もちろん大腸がんだけに限らず、がん全体のリスクが上がります。

鶏肉は赤身肉(牛肉・豚肉)や加工肉(ハム・ソーセージ)と比べて大腸がん発症のリスクが低いのはなぜ?

鶏肉は赤身肉(牛肉・豚肉)や加工肉(ハム・ソーセージ)と比べて大腸がん発症のリスクが低いのはなぜ?

編集部編集部

鶏肉は赤肉ではないですよね。赤肉や加工肉に比べて、大腸がんの発症リスクが低いのですか?

浜野 徹也先生浜野先生

これまでの研究により、鶏肉には大腸がんのリスクが赤肉に比べて低いだろうとされています。かつて、国立がん研究センターが行った研究によれば、牛肉、豚肉、加工肉は結腸がんのリスク上昇と関連性が認められたのに対し、鶏肉は優位な関連は認められなかったということです。

※国立研究開発法人国立がん研究センター「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」
https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/8496.html

編集部編集部

それはなぜですか?

浜野 徹也先生浜野先生

鶏肉は赤肉に比べて低カロリーで、脂肪が少なく、良質なタンパク質を多く含みます。「脂肪が多い肉を食べると大腸がんや乳がんのリスクを上げる」ということも、これまでさまざまな研究で明らかになっており、その点、低脂肪でヘルシーな鶏肉は、がんのリスクを上昇させることがないだろうと言われています。

編集部編集部

鶏肉だったら、どれだけ食べてもいいのですか?

浜野 徹也先生浜野先生

もちろん調理法も大事です。揚げた鶏肉ばかり食べていては脂肪分が高く、がんだけでなく肥満や生活習慣病などのリスクを招いてしまいます。魚や野菜などとともに、バランスよく摂ることが大事です。

肉が好きな人は摂取量を抑えれば良い? 大腸がんの予防には鶏肉や野菜中心の食生活が必要? 正しいがん予防は?

肉が好きな人は摂取量を抑えれば良い? 大腸がんの予防には鶏肉や野菜中心の食生活が必要? 正しいがん予防は?

編集部編集部

牛肉や豚肉、加工肉が大好きでやめられないという人は、どういうことに気をつけたら良いでしょうか?

浜野 徹也先生浜野先生

2007年に改訂された「世界がん研究基金(WCRF)」と「米国がん研究協会(AICR)」による報告書では、赤肉の摂取量は週に500g未満にすることを推奨しています。毎日、牛肉や豚肉をたくさん食べているという人は、自分が食べている量を見直し、これを下回る摂取量に減らすことを検討すると良いでしょう。なかには、硝酸塩や亜硝酸塩を含まない無添加の加工肉も販売されていますから、そういったものを選ぶのも良いのではないでしょうか。

編集部編集部

肉は鶏肉に変えた方が良いのですか?

浜野 徹也先生浜野先生

鶏肉は高タンパク低脂肪でとても優秀な食材です。ただ牛肉や豚肉、羊肉などの赤肉には鉄分やビタミン類などが豊富に含まれています。「赤肉を食べすぎない」ように気をつけつつ、バランスよく取るのが良いのではないかと思います。

編集部編集部

ほかに、食習慣で気をつけることはありますか?

浜野 徹也先生浜野先生

大腸がんを予防するために大切なことは、常に腸内環境をよくしておくことです。そのためには食物繊維をたくさん摂るようにしましょう。例えば、野菜や果物、海藻類、きのこ類などを積極的に摂るといいでしょう。また禁煙をする、過度な飲酒を避ける、運動習慣を身につけることも大切です。生活習慣に気をつけることで、大腸がんは十分予防できる病気です。ぜひご自分のライフスタイルを見直してみましょう。

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあれば。

浜野 徹也先生浜野先生

確かに「食の欧米化」が大腸がんのリスクを増加させていると言われています。しかし、アメリカで大腸がんの患者さんが増えているのかというと、実際は罹患率も死亡率も減少しています。なぜならアメリカでは、がん検診の受診率が非常に高いからです。つまり、牛肉や豚肉、加工肉を食べていても、きちんと検診を受けているので、早期に発見することができているのです。反対に、牛肉や豚肉、加工肉を控えたとしても、検診を受けなければがんを見逃してしまいます。検診を受け、自分の健康状態を確認することは、健康を長く維持するためにとても大切なこと。最低でも40歳になったら、できれば35歳くらいから、毎年1回人間ドックを受けることを習慣化しましょう。

編集部まとめ

大腸がんを予防するには、「牛肉や豚肉、加工肉を食べなければがんにならない」と安易に考えるのではなく、「食べる量を適切にする」と同時に、検診を受けて定期的に健康状態をチェックすることが大切。ぜひ、家族や夫婦で誘い合って、検診を受けることを習慣化してみましょう。

医院情報

浜野胃腸科外科

浜野胃腸科外科
所在地 〒276-0040 千葉県八千代市緑が丘西2-1-4
アクセス 東葉高速線「八千代緑が丘駅」より徒歩1分
東葉高速線「西船橋駅」より移動時間15分
京成本線「勝田台駅」より移動時間8分
診療科目 消化器内科、胃腸内科、内視鏡内科、内科

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