幼児食の味付けは大人と分けた方がいい? 管理栄養士が解説
子どもは、離乳食を起点として徐々に大人の食事に近づけていくことが一般的です。しかし、一体いつから大人と同じ味付けで食べさせていいのでしょうか。今回は、何歳まで味付けを分けたらいいのかなどを含めた、幼児食の味付けに関する疑問を、管理栄養士の佐野さんに解説していただきました。
監修管理栄養士:
佐野 未来(管理栄養士)
体が未発達の子どもは食塩摂取量に注意
編集部
そもそも、なぜ味付けを変える必要があるのですか?
佐野さん
発達途中の子どもの体に合わないからです。大人と同じ味付けで食事をしていると食塩摂取量が多くなります。子どもは消化機能や腎機能などの発達が未熟なので、食塩の摂取過多で体調不良を起こしたり、ときには命の危険があったりするので、味付けを変えることは必要不可欠といえます。また、舌の味覚を司る味蕾(みらい)という細胞は、出生時をピークとして成長とともに減ってくるため、味蕾が多いうちに繊細な味付けを経験させることが必要です。好みも含めて味覚が形成されるのが出生時〜10歳前後なので、離乳食から学童期前半では味覚の形成を邪魔しないように、大人と同じ味付けは避ける必要があります。
編集部
子どもの食塩摂取量の目安はどのくらいですか?
佐野さん
編集部
何歳から大人と同じ味付けにしていいですか?
佐野さん
子どもの胃腸機能は、4〜6歳の間に大人とほぼ同じくらいまで発達するとされています。したがって、3歳程度までは薄味に、4〜5歳の間に味付けを変えていき、小学校に上がった後は大人とほぼ同じ味付けにしていけば大きな問題はありません。ただし、唐辛子やわさび、辛口カレーなどの刺激物は引き続き避けましょう。また、大人と全く同じ食塩摂取量になるのは12歳以上です。味覚形成も考慮する必要があるため、小学校に上がった後でも際限なく味を濃くして良いわけではないので注意しましょう。
無理なく食塩摂取量を抑えるには
編集部
味付けを分けるには、どうやって調理したらいいですか?
佐野さん
同じ鍋でできる「取り分け」が便利です。煮物やカレーなどの具材は一緒に煮込み、薄めに味付けした後で子どもの分だけ取り出します。あとは、残った鍋に調味料や香辛料を追加すれば出来上がりです。幼児食のみならず、子どもが成長した後も使えるテクニックなので試してみてください。
編集部
塩分を減らす必要があるということは、市販の食材は使わない方が良いのでしょうか?
佐野さん
インスタントの味噌汁を使う時には、お湯の量はそのままで味噌の量だけ減らして溶かせば使えます。また、フリーズドライスープも1/2〜1/3程度削ってお湯を注げば大丈夫です。それ以外の総菜や調味料に漬け込んだ魚や肉は、味付けを薄くするのが難しいため不向きですね。使用する場合には盛り付ける量を1/3程度に抑え、薄味にできるほかの料理を足してあげましょう。
編集部
特に注意したい食品はありますか?
佐野さん
いわゆる加工食品、特にウインナーやハムといった食肉加工食品は注意が必要です。ウインナーは1本(20g前後)で0.4g程度、ハムは1枚(10g前後)で0.2g程度の食塩を含みます。単品なら少なく思えますが、ほかの食材にも塩分が含まれているので、トータルの摂取量が多くなる傾向にあります。また、子どもが好きだったり、簡単に調理できたりといった事情で頻繁に出すことも多いので注意しましょう。
幼児食の味付け、こんな時はどうする?
編集部
薄味だと子どもが食べません。どうしたらいいですか?
佐野さん
単に醤油や塩を減らすのではなく、かつお節やごまなど風味のある食材を加えたり、濃いめにとっただしの香りで仕上げたりするのがおすすめです。また、魚や肉の表面に小麦粉や片栗粉をまぶして焼くと、香ばしさや食感が良くなるうえ、少ない調味料でもしっかり絡んで満足度が増します。調理法を工夫して目先を変えると、案外パクパク食べてくれることもあるので試してみてください。
編集部
おやつは大人と同じものでも大丈夫ですか?
佐野さん
大人用のせんべいなどは子どもの体には食塩量が多すぎるので、できるだけ食塩無添加のおやつを選びましょう。また、幼児期から学童期のおやつも重要です。健康に良いイメージがあるナッツや昆布なども食塩量が高くなる傾向にあります。ナッツは素焼きのものを選ぶ、海産物を使ったおやつは避けるといった工夫をしましょう。
編集部
外食する際の注意点も教えてください。
佐野さん
1〜3歳の間は、外食時に大人と同じメニューを食べるのは避けた方が無難です。離乳食の持ち込みが可能かどうか、うどんなど消化に優しく調整しやすいメニューがあるかを確認しましょう。4歳以上なら、キッズメニューを利用しても問題ありません。その際には、ハンバーグのソースやマヨネーズなどの食塩・脂質が多い調味料を加減してあげると安心です。また、外食してから数日は自宅での食事の食塩量は抑えるように意識します。
編集部まとめ
子どもの食事の味付けは、体の発達や味覚形成の段階に合わせて調整する必要があります。乳幼児期から学童期の食事は、子どもの将来の食習慣や健康に関わる重要な位置づけであり、注意して準備することが大切です。とはいえ、大人と完全に別で用意するのは大変なので、食品の選び方や取り分け調理などの工夫をして、できるだけ家族みんなで同じものを食べられるようにしてみましょう。