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【闘病】運動不足のせいだと思っていた不調・肩こりが難病だったとは《混合性結合組織病》

 更新日:2023/02/22
【体験記】 ステロイド治療での筋力低下が辛かった《混同性結合組織病》

混合性結合組織病(MCTD)は、複数の膠原病(全身性エリテマトーデス・強皮症・多発性筋炎/皮膚筋炎)に特徴的な症状が混在する、自己免疫疾患です。膠原病の一種で、見た目だけではわからないため、闘病者は周囲の不理解などの問題もあるようです。今回は混合性結合組織病を抱えるKyuさん(仮称)に、詳しい話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。

Kyuさん

体験者プロフィール
Kyuさん(仮称)

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千葉県在住、1984年生まれ。家族構成(実家の近隣で、小学校5年生の息子と2人暮らし)。診断時職業はアパレル販売員。2014年に混合性結合組織病を発症し、ステロイドの投薬治療で2ヶ月の入院。その後、月に1度の通院生活となる。職場復帰までは7ヶ月を要した。その後順調に薬も減薬していたが2021年5月に再燃。胸膜炎、心膜炎の発症で呼吸困難になり、1ヶ月半の再入院も経験した。

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

レイノー現象がきっかけ

レイノー現象がきっかけ

編集部編集部

病気に気づいたきっかけを教えてください。

KyuさんKyuさん

きっかけは2014年、レイノー現象という指が白くなる典型的な膠原病の症状が現れたことでした。同僚の母親が同じレイノー現象で通院していたのを聞いており、2つの病院を経て最終的に専門医のいる現在の病院を受診しました。

編集部編集部

診断がつくまでに、いくつか病院を巡ったのですね。

KyuさんKyuさん

はい。最初は子どもの時から喘息でお世話になっている診療所を訪ねたのですが、田舎の小さな診療所だったので、診断がつきませんでした。2021年4月に40度近い高熱が出たため、次は総合病院の内科を受診しました。レイノー現象があることを伝え、リウマチの検査もしてもらいました。その結果、数値が基準値のなんと4000倍近くあるとのことので、緊急ではないもののリウマチ専門医のいる病院の受診を勧められました。

編集部編集部

その後の症状の経過はどうでしたか?

KyuさんKyuさん

5月に入ると肩が上がりにくくなりました。もともと肩こりがあったので、運動不足かと思ってあまり気にしていませんでした。しかし6月になり、状態がみるみる悪化し、朝自分で起き上がれないほどになりました。朝のこわばりもひどく、起きても2時間は動けない。日中痛みはあるけど、こわばりはいくらか軽くなるので、仕事中は痛み止めでごまかして出勤していました。最終的には、翌朝目が覚めないのではないか、二度と動けないのではないか、という不安と危機を感じるほどでした。

編集部編集部

診断のために、どのような検査を必要としましたか?

KyuさんKyuさん

筋電図検査、筋生検、CT、MRIなどです。ただ、筋生検は麻酔をしないでおこなうと聞き、断固拒否していました。結局、筋電図で混同性結合組織病の診断となり、免除していただけました。そのころ混合性結合組織病からくる多発性筋炎の症状がでており、筋肉が炎症を起こしていたため筋力が低下していたそうです。

治療とステロイドによる副作用

治療とステロイドによる副作用

編集部編集部

病気が判明した時、どのような心境でしたか?

KyuさんKyuさん

安心したというと変ですが、正直なところホッとしました。「やっぱり病気だったのだな」と。家族はショックが大きかったようです。見た目は普通だったこともあり、長期の入院ということに子どもも驚いていました。とても病人には見えないので、職場でもかなり驚かれました。それまでは家族に症状を訴えても「気の持ちよう」「みんな疲れてる」「甘えだ」などと言われていたのに、診断がついたとたん、いきなり優しくされて戸惑いました。

編集部編集部

医師から、どのように治療を進めると説明されましたか?

KyuさんKyuさん

入院して追加的に検査をおこなって確定診断し、そこからはプレドニンなどのステロイドの投薬治療を行うと言われました。

編集部編集部

入院生活はどのように過ごしていましたか?

KyuさんKyuさん

特に上半身に痛みやこわばりが出たので、ひたすら散歩していました。散歩していないと歩けなくなってしまうのではないかと怖かったので。また、長期入院のためポケットWi-Fiを契約してパソコンを持ち込んだのですが、電波が拾えずに全然使えなかったのを覚えています。

編集部編集部

二度の入院を経験されたそうですね。

KyuさんKyuさん

はい。一度症状は落ち着いたのですが、2021年5月に再燃があり、2回目の入院となりました。その時は、心膜炎、胸膜炎からの呼吸困難で、10日ほど絶対安静でした。しばらくは、ベッドの上からまったく動けませんでしたね。やがて病状が落ち着いて、動けるようになりましたが、コロナ禍で面会禁止だったため、退屈に感じることが多かったです。ただそこはWi-Fiがつながるのが唯一の救いでした。

編集部編集部

治療による副作用はありましたか?

KyuさんKyuさん

ステロイドの副作用でも筋力・体力の低下、不眠、「頭がボーッとする」、頻尿、免疫力低下などがありました。見た目にも、ムーンフェイスや野牛肩(やぎゅうかた/肩に脂肪が蓄積する)もあります。女性としては、やはり気になるところでした。日常生活では、筋力や体力の低下が一番きつかったです。徐々に、日常生活ができるまでには戻りましたが、数年かかりましたね。現在も、以前ほどには戻っていません。

編集部編集部

治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?

KyuさんKyuさん

家族の存在はありがたかったです。週に一度、当時小学校5年生だった息子を、母親が連れて会いに来てくれたことが励みになりました(一度目の入院時)。また、友人たちがお見舞いに来てくれたのも嬉しかったですね。直近の入院では、コロナ禍のためお見舞いも禁止され、スマホでのやり取りだけだったこともあり、心細い時もありました。家族とはLINEでマメに連絡をとっていたのですが、やはり直接会えるのに勝るものはないですね。高校生になった反抗期の息子は、口うるさい母親がいなくて自由にやっていたみたいです(笑)。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけるとしたら、どんな助言をしますか?

KyuさんKyuさん

休息は大事。気づかぬうちに無理をしているよ。頼るのは悪いことじゃないし、自分のキャパを見極めて、甘え上手に(なって)ね」と言います。

体力の低下と今後への不安

体力の低下と今後への不安

編集部編集部

お仕事はどうなりましたか?

KyuさんKyuさん

発症当時のアパレル販売は、フルタイムだと体力的に難しいため、時短勤務にしてもらいました。日給月給だったので、収入が減ったのはかなりきつかったですね。現在は1年程前に転職し、デスクワークの仕事をしています。職場の理解があり、復職直後は週3回勤務からはじめ、徐々に出勤ペースを戻していきました。

編集部編集部

現在の生活の様子はどうですか?

KyuさんKyuさん

日々の生活では細々不便を感じます。筋力がないので、料理で固い食材が切れない、体力が落ちたので長距離を歩けないなど、もどかしいことばかりです。入院中の、箸がやっと握れるレベルに比べればかなり回復していますが、まだまだ以前の自分に追い付いていないのを感じます。最近は疲れると動悸や頻脈があり、今までの疲れや脱力感などの症状に、更に症状が増えてしまいました。

編集部編集部

現在の不安は何ですか?

KyuさんKyuさん

目下、一番の心配は仕事です。現在の職場は3年契約なので、その先の就職活動を考えるととても不安です。正社員希望ですが、この病気を抱えながら運良く就職できても、フルタイムはかなり難しいでしょう。しかし、収入がないと生活に影響が出てしまいます。この先、難病患者への理解が進み、色々な働き方が増え、就職の間口が広くなってほしいと切に願っています。

編集部編集部

あなたの病気を知らない方へ、一言お願いします。

KyuさんKyuさん

世の中には様々な病気があります。最近は「ヘルプマーク」がだいぶ浸透していますが、見た目ではわからないこと、伝えても理解されないことが多いのです。駅で階段を上るのが遅いと舌打ちされたり、優先席に座っていると白い眼で見られたりします。病気に甘えるわけではないのですが、周りに病気を抱えている方がいたら、ほんの少し、優しさを分けてくださると嬉しい限りです。

編集部まとめ

最近は病気に悩まされていることが見た目だけではわからない、という世の中になってきました。しかし、裏では病気そして治療そのものにより、想像できないくらい大変な思いをされていることにも目を向けていくことが求められます。少しの心の余裕と優しさが大切だと思います。

この記事の監修医師