止まらない涙の治療「涙道内視鏡手術」を医師が解説 痛みはある? 費用や流れは?
「涙が止まらない」「片目だけ涙が出る」などの涙の症状。いわゆる「涙目」でお困りの方が、年齢とともに増えています。今回は、止まらない涙に対する治療である「涙道内視鏡手術」について、眼科・形成外科医の松田 弘道先生(まつだ眼科形成外科)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
松田 弘道(まつだ眼科形成外科)
目次 -INDEX-
涙が止まらない涙目(流涙)の原因は? 涙道と涙の仕組み
編集部
「何もしていないのに涙が止まらない」原因にはどんなものがありますか?
松田先生
原因には様々ありますが、最も多く、かつ見逃されやすいのは涙の通り道である涙道が狭くなる「涙道閉塞(るいどうへいそく)」です。涙があふれて見えにくい、目やにが多いなどの症状がでます。涙道閉塞を正しく診断することは涙道の専門医でなければ難しく、眼科を受診していても様子見となっている方が大変多いです。
編集部
涙道が閉塞すると涙が止まらなくなるのですか?
松田先生
涙は、目尻の上にある「涙腺」というところで作られ、本来の目的である「目を潤す」「異物を流す」などの働きをした後、目頭側にある「涙道」を通って鼻腔の方に流れていきます。その「涙道」がなんらかの理由で細くなったり(狭窄)、詰まってしまったり(閉塞)することがあります。その結果、いわゆる「排水管が詰まった」状態となり、涙が鼻の方へ流れていかず逆流を起こし「涙や目やにが止まらない」といった状態になります。この状態に対して、目薬での治療では効果は非常に限定的であり、治すためには手術が必要です。
編集部
どのような手術がありますか?
松田先生
涙道の狭窄や閉塞に対しては、大きく2つの治療法があります。狭窄・閉塞した場所を開いて広げるか、または新たに別のルートを用意してあげるという方法です。施設によっても異なりますが、どちらの術式でも日帰り手術で対応可能です。
涙道内視鏡手術とは目のどんな症状で行う手術なのか 目頭にチューブを挿入するって本当? 痛みは?
編集部
手術法について、もう少し詳しく教えてください。
松田先生
詰まった場所を開いて広げるのが、「涙管チューブ挿入術」です。涙道内に直径1.0mmの細い内視鏡を挿入し、狭窄や閉塞している部位を直視下に確認します。そして、狭窄・閉塞している内腔を広げたあと、ステントの役割となる「涙管チューブ」を挿入します。「涙管チューブ挿入術」は涙道内腔の確認と治療を兼ね備えた優れた術式です。局所麻酔で、手術時間は10分程度です。
編集部
痛みはありますか?
松田先生
目頭付近に麻酔の注射をしますので、処置中に痛みを感じることはほとんどありません。ただし、涙道内に硬い閉塞がある場合、それを解放する際のみ痛みを伴うことがあります。とくに、詰まっている部分が鼻に近い部位、つまり麻酔を打つ場所から遠い場合には、少し痛みを感じる方が多い傾向にあります。
編集部
挿入したチューブは入れたままですか?
松田先生
手術後、1〜2ヶ月の間、チューブを留置したままとします。これは、手術で広げた涙道を休めて粘膜の回復を待つためです。外からチューブは目立たないため、日常生活を送るのにも支障はありません。シャワーや洗顔、コンタクトレンズの装用なども可能です。チューブの抜去は診察室などで痛みなく簡単に行えます。
編集部
もうひとつの、「新たに別のルートを用意」というのはどのような手術ですか?
松田先生
涙管チューブ挿入術後、チューブ抜去後に再発してしまった例や「涙嚢炎」(るいのうえん/涙を溜めておく「涙嚢」に菌や微生物が繁殖してしまい、炎症が起きた状態)を生じた例などに対しては、「涙嚢鼻腔吻合術」(DCR)が適応となります。詰まっている涙道とは別に、涙嚢から鼻腔内へ新しくバイパスとなる道を作成します。局所麻酔で、手術時間は1時間程度です。
涙道内視鏡の検査・手術の費用や術後の痛みなどについて教えて
編集部
では、手術の費用について教えてください。
松田先生
いずれの手術も保険が適用されますので、各自の負担割合によって手術費用は異なります。「涙管チューブ挿入術」の場合、3割負担の方で約7500円、1割負担の方で約2500円となりますが、別途、保険医療材料費としてチューブ代金がかかります。こちらも保険適用で、3割負担の方で約6000円、1割負担の方で約2000円です。「DCR」の場合は、3割負担の方で約7万円、1割負担の方で約2万4000円となります。その他にかかる費用などは施設によって異なりますので、治療予定の医療機関に確認してみてください。
編集部
術後に痛みなどはありますか?
松田先生
チューブが入っている違和感をわずかながら感じる方はいますが、大抵の場合無症状です。処置後数時間は瞼が下がるとともに、ピントが合わず物が二重に見えることもありますので、お帰りの際はお付き添いの方とご帰宅されることをおすすめしています。とくに、ご自身で自動車を運転して帰宅するのは危険なのでご遠慮いただいています。
編集部
術後、再発することはありますか?
松田先生
「涙管チューブ挿入術」では手術の性質上、長期的にみると再発することがあります。排水管の詰まりを一度綺麗にしても、また詰まってしまう場合があるのと一緒ですね。一方、「DCR」では新たな通り道を作りますので、根治を望めることが多いといえます。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
松田先生
「涙道閉塞」は、専門治療を受けることで改善が期待できます。点眼薬だけで長年にわたり様子見とされてしまい、我慢しておられる方も多いかと思います。「もう歳だから」「病気ではないから」と諦めず、治療が可能な医療機関に相談してください。涙目を治療するだけで、見え方が大きく変わり、生活の質も上がります。
編集部まとめ
涙が止まらない、いわゆる「涙目」は、涙道の詰まりが原因であり、適切に治療すれば改善が期待できることがわかりました。日帰り手術が可能で、術後も日常生活にほとんど支障が出ないのは嬉しいですね。
松田先生、ありがとうございました。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |