「若年性パーキンソン病」の症状や原因、受診の目安を医師が解説
独特の運動障害を伴い、難病指定も受けている「パーキンソン病」。その多くは高齢になってから発症しますが、40歳以下にみられる「若年性パーキンソン病」というものも存在しています。若いうちから運動時の緩慢さなどがみられたら、きちんと診断してもらいませんか。そんな受診の目安について、Medical DOC編集部が、神経内科医の霜田先生(銀座内科・神経内科クリニック)を取材しました。
監修医師:
霜田 里絵(銀座内科・神経内科クリニック)
若年性パーキンソン病とはどんな特徴のある病気なのか
編集部
若くてもパーキンソン病になると聞きました。
霜田先生
はい。パーキンソン病の原因は、「ドーパミン」という物質が不足することにより、脳からの指示を十分に伝えられなくなることです。「指定難病6」に指定され、その結果として各種運動障害が生じます。パーキンソン病の多くは高齢者にみられますが、一部の有病者は若い方です。一般に40歳以下で発症したケースを「若年性パーキンソン病」と呼んでいます。
編集部
若年性パーキンソン病でも、主な症状は「運動障害」と考えていいでしょうか?
霜田先生
それで構いません。具体的には、手足の動かしづらさや歩きづらさ、震えなどです。ただし、若年性パーキンソン病の進行は「比較的緩やか」とされています。薬での治療成績も、基本的に良好です。
編集部
一般的なパーキンソン病は「寿命を縮める」と聞いたことがあります。実際どうなのでしょうか?
霜田先生
パーキンソン病は、寿命を“縮めません”。一般に、発症から10~20年以上経過すると、生活上の手助けが必要とされるようになってきます。このとき肺炎や骨折などを合併して、寝たきりになる可能性があります。
編集部
どんな人が若年性パーキンソン病になりやすいのでしょうか?
霜田先生
若年性に関わらずパーキンソン病そのものが、いまだ詳しく解明されていません。「指定難病6」を受けているのも、このためだと考えられています。考えられるとしたら、遺伝要因は否定できません。
若年性パーキンソン病の初期症状と受診の目安は?
編集部
どの程度の運動障害なら、若年性パーキンソン病を疑うべきでしょう?
霜田先生
進行性の疾患ですので、「元に戻る」ということは原則としてありません。ですから、程度問わず、「動かしにくさや歩きにくさ、震えといった動作の変化をご自身で気づいたとき」です。また、周囲の人の指摘もサインになり得るでしょう。
編集部
放っておけば、「そのうち治まる」というものではないということですか?
霜田先生
はい。ただし「震え」は出るときと出ないときがあります。動かしづらさや歩きにくさにも、ある程度の“波”はあります。問題は、こうした間隔や頻度が、10~20年という長いスパンで進行していくことです。そのため、早期の治療介入をすることが重要です。
編集部
運動器の悩みなので、整形外科を受診してしまう場合もありそうです。
霜田先生
整形外科などで若年性パーキンソン病の可能性に気づけるかどうかですね。可能性として、整形外科から神経内科などを紹介される場合もあれば、若年性パーキンソン病に気づかないまま整形外科などで「運動器の治療」が続いてしまう場合もあるでしょう。若年性パーキンソン病は、運動器でなく脳に起きる病気です。
編集部
逆に受診した結果、別の治せる病気だったというケースもありますか?
霜田先生
はい。実際にインターネットなどで自らの症状を調べて、「若年性パーキンソン病ですか?」と受診される患者さんがいらっしゃいます。そして、甲状腺ホルモンの異常のような、ほかの病気だったというケースも少なくないです。医療機関は「病気を治す場」に限りませんので、ぜひ「確認の場」としてもご活用ください。
若年性パーキンソン病の診断方法・治療
編集部
若年性パーキンソン病の初期でも診断は付くのでしょうか?
霜田先生
可能です。昨今、「ダットスキャン」という検査機器がパーキンソン病の確定診断として“有用”となってきました。パーキンソン病の傾向を「数値化」できるので、客観的な診断が付けられます。もちろん、家族歴などを確認することも重要です。加えて、MRI検査を、「ほかの病気による症状ではないこと」を確認するためにも用いています。
編集部
若年性パーキンソン病は「治る」と考えていいのですよね?
霜田先生
現時点で根本的治療はないですが、症状のコントロールは可能です。難病指定なので難しいところですが、不足しているドーパミンを薬で補いながら生活していくイメージですね。治るというより、薬で症状のコントロールをしていく進め方になります。
編集部
薬によるコントロールが及ばなくなってくることはあるのでしょうか?
霜田先生
経過観察次第ですが、薬が効きにくくなってきた方に対して、電気的に脳を刺激する外科的治療の適応が増えてきました。安全な治療方法ですので、安心してご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
霜田先生
若年性パーキンソン病は長期の治療が欠かせませんので、「長く付き合える医院選び」に留意しましょう。身体的かつ精神的な「支え」になってくれるような担当医師が必要となります。私自身、患者さんの根気と努力に「尊敬の念」を抱きながら、応援やお手伝いしています。
編集部まとめ
パーキンソン病の主な症状は、手足の動かしにくさや歩きにくさ、震えということでした。原因は脳内のドーパミン不足によるものですが、どうしてそうなるのかは不明です。そして、40歳以下で発症したケースを「若年性パーキンソン病」と言います。心当たりがあったら、この病気は進行しますので、早めに受診して調べてみましょう。
医院情報
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