「アレルギー性鼻炎」のレーザー治療はどんな人におすすめなのかを耳鼻咽喉科医が解説
アレルギー性鼻炎の治療選択肢の1つに、鼻の粘膜をレーザーで照射する方法があります。花粉症対策としても注目されている治療法ですが、適応範囲はあるのでしょうか。ほかにも選べる治療選択肢があるとしたら、どう判断するべきでしょう。この点を、「深谷耳鼻咽喉科クリニック」の深谷先生に伺ってみました。
監修医師:
深谷 和正(深谷耳鼻咽喉科クリニック)
即効性はあるが、永続性はない
編集部
花粉症の治療には、色々な方法がありますよね?
深谷先生
はい。飲む服用薬や点鼻・点眼薬、舌下免疫療法、レーザー治療などの外科的な方法があります。なお、アレルギー性鼻炎というくくりのなかに花粉症が含まれています。そして、今回のテーマである「アレルギー性鼻炎のレーザー治療」は、文字どおり“鼻炎対策”です。鼻水や鼻づまり、くしゃみに有効ですが、例えば花粉による目の諸症状には用いません。
編集部
レーザー治療は、具体的に何をするのでしょうか?
深谷先生
鼻の粘膜の一部を照射して焼きます。鼻の粘膜には花粉などの「センサー」が備わっていますので、このセンサーを効きにくくする仕組みです。花粉症の諸症状はアレルギー反応ですから、アレルギー原因物質に「反応しにくく」しているわけですね。
編集部
しかし、体の傷がそうであるように、粘膜も自動修復されませんか?
深谷先生
はい、いずれ自然治癒します。したがって、レーザー治療の持続期間は「平均で1~2年」と限定的です。一般に、若くて自己修復機能が強い人ほど持続しません。ただし、レーザー治療を繰り返して受けることは可能ですし、そのことによる合併症もほとんどありません。
編集部
即効性はどうでしょうか? 舌下免疫療法の場合、数年単位と聞きます。
深谷先生
外科的な処置なので即効性はあります。治療の効果が実感できる方の割合は、おおむね8割前後とされています。もっとも、花粉症の症状が強く出ているハイシーズンには、「かえって粘膜や免疫を刺激してしまう」ので用いません。年末から1月あたりのオフシーズンが“治療の受け時”でしょうか。花粉症の症状で困ってからご相談されても、できないことがあるのでご注意ください。
短期でも「薬要らず」が期待できる
編集部
一般的な「鼻づまり」は、全く別の話でしょうか?
深谷先生
アレルギーがなく、単に「鼻の中の形が曲がっていて鼻づまりを起こしやすい人」の場合、レーザー治療での解決は難しいでしょう。アレルギーによって鼻炎を生じさせていることが前提です。また、「鼻の中の形が曲がっていて、なおかつアレルギーの人」の場合、レーザーの先端が鼻の中に入れにくいため、治療効果は落ちます。
編集部
そもそも、手術が怖い人には向いていない方法ですしね。
深谷先生
そうですね。手術が怖い人は問合わせもしないでしょう。投薬療法や舌下免疫療法が治療選択肢になります。他方で、花粉症の薬を飲み続けることが煩わしくて、比較的“短期”でもいいので「薬要らず」になりたい、なおかつ手術に抵抗がない人であれば、レーザー治療を検討してみてください。
編集部
鼻のレーザー治療に年齢制限はありますか?
深谷先生
医学的にはとくにありませんが、幼いお子さんの場合、術中に嫌がって抵抗される場合があります。無理をしてでも施術するのか、いったん中止にするのかは保護者とご相談のうえになります。
編集部
年齢以外の禁忌があれば、教えてください。
深谷先生
リスクとして、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人などが考えられるものの、「切開手術」ではないので“禁忌”というほどのことでもないでしょう。それでも、「口に血が入ると嫌だ」というのであれば、施術を見送ります。
施術のタイミングはシーズン前
編集部
花粉症は、年齢が上がると「楽になる」と聞いたことがあります。
深谷先生
アレルギーは免疫反応ですから、良くも悪くも高齢になるほど免疫の能力が衰えてきます。したがって、「年齢が上がるほど楽になる」ことはあり得ますね。また、免疫反応は年齢要因に限らず、普段の食事・ストレス・睡眠の質などでも左右します。
編集部
ということは、そのときどきで花粉症の治療方法も変わり得るということですか?
深谷先生
そうかもしれませんね。免疫反応には環境要因も関係してきます。例えば、普段は薬で花粉症の対応をされている人が、「今年の花粉はひどいと聞いたので、レーザー治療を受けてみたい」というケースもあります。あるいは、妊娠や受験の予定があり、薬を一時的にやめたいケースなどでしょうか。
編集部
つまり、花粉症の治療方法は、「都度、判断」ということでしょうか?
深谷先生
それが結論です。ぜひ、そのタイミングでの「最適解」を探しましょう。また、複数の治療方法を組み合わせてもいいと思います。ただ、忘れてはならないのは「花粉症の症状がひどくなってくると、レーザー治療は難しい」ということです。もちろん、季節を問う花粉症だけがレーザー治療の対象ではありません。ハウスダストによる慢性的なアレルギー性鼻炎などにも効果があります。慢性疾患なら、原則として施術のタイミングは問いません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
深谷先生
かつては、度々レーザーによる照射と自己修復を繰り返していると「がんになる」という誤解がありました。しかし、そのような症例報告は出ていません。花粉対策としてなら、ぜひ、年末から年明けにかけて、“早めに”レーザー治療を検討してみてくだい。
編集部まとめ
花粉症も含めたアレルギー性鼻炎対策を「決め打ち」しないようにしたいものです。治療法アリキではなく、その年の花粉の状況や自分の症状・体調によって流動的に考えましょう。ただし、迷っているうちにハイシーズンに差しかかると、できることは少なくなります。医療機関に相談した時期が「治療方法を決める」側面もあるのです。オフシーズンだからこそ、最も多くの治療方法を選べるということですね。
医院情報
所在地 | 〒355-0072 埼玉県東松山市石橋1816-9 |
アクセス | 東武鉄道東上本線「森林公園駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 |