目薬は開封後なるべく早く使い切るべき! 処方される目薬の有効期限が短い理由を薬剤師が解説
眼科で目薬を処方されると、「〇日以内に使い切ってください」と言われることがあると思います。でも、目薬の容器に書かれている使用期限は1年後になっていることも。なぜそんなに短い期間で使用しないといけないのでしょうか。「使用期限」と「有効期限」の違いについて、薬剤師資格をもちながら学術業務に従事する福島さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
福島 沙織(薬剤師)
使用期限と有効期限
編集部
そもそも、目薬には使用期限はあるのですか?
福島さん
食べ物に賞味期限があるのと同じように、目薬にも品質を保証する「使用期限」が定められています。これは製薬メーカーが試験を行って設定しているもので、目薬の種類によって異なります。
編集部
有効期限と使用期限の違いは何ですか?
福島さん
目薬の容器や箱に使用期限が書かれていることがありますが、これは未開封の場合の期限です。目薬を開封すると、蓋をしていても雑菌が入って、どんどん劣化していきます。防腐剤が含まれていないものであれば開封後10日前後、防腐剤が含まれているものでも1~3カ月程度で使い切ることが推奨されています。一般的にこの期間を有効期限と呼びます。つまり、開封前は使用期限まで目薬を使用できますが、開封後は有効期限内に使い切る必要があります。
編集部
有効期限を過ぎたものを使うとどうなりますか?
福島さん
有効期限を過ぎると、目薬の有効成分が分解されて無くなってしまったり、気温や湿度、紫外線などによって別の物質に変化したりして、正しい効果を示さない可能性があります。また、目薬に入った雑菌による汚染が進むと、目のかゆみやトラブルを引き起こしてしまうこともあります。
編集部
いつ開封したか分からない場合はどうすればいいですか?
福島さん
覚えていないということは、開けてからずいぶん時間がたっている可能性があるので、廃棄することをおすすめします。また、色が変わってしまったものや、中にモヤのような浮遊物が発生しているものは使用してはいけません。
目薬には添加物が含まれているものが多い
編集部
市販の目薬のほうが、眼科でもらった目薬より有効期限が長いのですが、なぜでしょうか?
福島さん
一般的に、市販薬は処方薬より防腐剤の量が多いため、有効期限が長くなります。よく見かける防腐剤の成分としては、塩化ベンザルコニウムがあります。防腐剤を加えることで、開封後の目薬の中に雑菌が繁殖するのを防いでいます。
編集部
防腐剤が入っていても目に影響はないのですか?
福島さん
通常使用する分には問題ない程度の濃度に調整されています。しかしながら、コンタクトレンズをしている人は注意が必要です。防腐剤はコンタクトレンズに吸着されやすいため、防腐剤が角膜に触れる時間が長くなり、角膜障害やコンタクトレンズの変形、白濁や変色を引き起こす可能性があります。市販の目薬を購入する場合は注意書きをよく読み、眼科で処方してもらう場合は医師の指示に従ってください。
編集部
防腐剤の入っていない目薬にはどんなものがありますか?
福島さん
市販薬ではパッケージに「防腐剤フリー」「防腐剤無添加」などと書かれているものがあります。また、1回ごとに使い切りの形状になっているものもあります。防腐剤の入っていないものは有効期限が短いため、限られた使用期間で使い切るようにしましょう。
目薬の正しい使い方
編集部
目薬は1回に何滴使えばいいでしょうか?
福島さん
目薬の1滴分は約40μlですが、目にたまる量は約30μlといわれています。よって、1回1滴落とせば十分でしょう。
編集部
目薬をさすときの注意点はありますか?
福島さん
まず、目に触れる可能性があるので手はきれいに洗いましょう。目薬の容器の先がまつげや眼球、手などに触れないようにして、1滴落とします。目からあふれた液は優しくティッシュで拭きとり、点眼後しばらくは静かに目を閉じ目頭を押さえます。必要な量の薬液を目にとどまらせるため、まばたきはしないようにしてください。
編集部
開けた後はどこに保管すればいいですか?
福島さん
保存方法は目薬によって異なりますが、特に指定がない場合は、直射日光が当たらない所に室温(1~30℃)で保管してください。場所や季節によっては、室内であっても1℃を下回ったり30℃を上回ったりすることがあります。そのため、保管場所としては5℃前後で安定している冷蔵庫がおすすめです。ただし目薬が凍ってしまうことがあるので、冷気口の近くは避けましょう。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
福島さん
気軽に使いがちな目薬ですが「薬」のひとつです。正しい使い方を身につけて、大切な目を健康に保ちましょう。
編集部まとめ
目薬は開封すると劣化が始まってしまうので、使用期限だけでなく有効期限にも気を付けなければいけないということがわかりました。せっかく目薬をさしても、その目薬が雑菌に汚染されていたら意味がありません。使い方をきちんと守って、何か変だと感じたらすぐに薬剤師や眼科医に相談しましょう。