塗り薬の適切な量、キーワードは「手のひら2つ分」 塗り薬の正しい使用法について薬剤師が解説
病院で塗り薬をもらったとき、説明書に「1日2回、適量を塗ってください」などと書かれていることがありますが、適量とはいったいどれくらいの量を指すのでしょうか。塗り薬の適切な量について、薬剤師資格をもちながら学術業務に従事する福島さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
福島 沙織(薬剤師)
塗り薬にはいろいろな種類がある
編集部
塗り薬というと「軟膏」や「クリーム」があると思うのですが、何が違うのでしょう?
福島さん
「軟膏」は保湿力が高く、皮膚を保護する効果がありますが、その分クリームに比べるとベタつきが強いという特徴があります。刺激はほとんどないので、肌の弱い人でも使用することができます。
編集部
「クリーム」の特徴についても教えてください。
福島さん
「クリーム」は皮膚から吸収されやすいため、皮膚の深い部分に薬剤を浸透させたい場合に適しています。サラサラとなめらかでベタつきにくいのですが、水で簡単に洗い流せるので、汗などでも流されやすいという特徴があります。軟膏に比べて刺激が強いため、傷のある部位には適していません。その他、水やアルコールに薬の成分が入っている「ローション」の塗り薬もあります。ローションは即効性に優れているので、かゆみ止めなどによく使われています。
編集部
塗り薬でよく見かける「ステロイド」とは何ですか?
福島さん
人間の体内でつくられているステロイドホルモンを医薬品へ応用したものです。体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑えたりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われています。ステロイドには怖い副作用があるというイメージをもつ方もいますが、使い方を守って正しく使えばとても便利な薬です。
塗り薬の正しい使い方
編集部
塗り薬はどのタイミングで塗るといいのでしょうか?
福島さん
塗る時間については、基本的には医師の指示に従ってください。特に指示がない場合は、「朝ご飯を食べたあと」「夜お風呂から上がったあと」のように、毎日だいたい決まったタイミングで塗るようにしましょう。そうすることで塗り忘れを防ぐことができます。
編集部
塗り薬を使用した際、衣服についても問題ありませんか?
福島さん
薬を塗ってからすぐに服を着ても問題はありません。ダメージを受けている肌は薬の吸収も早いので、衣服につくことはあまり気にせずしっかりと必要量を塗るようにしましょう。
編集部
1回あたりどれくらいの量を塗ればいいですか?
福島さん
塗る量についても、基本的には医師の指示に従ってください。塗る場所や症状、薬の種類にもよりますが、一般的には、大人の手のひら2つ分の面積に塗るのにちょうどいい量を目安とします。軟膏やクリームの場合は人差し指の先から第一関節まで、ローションの場合は1円玉ぐらいの大きさの量が、手のひら2つ分に相当します。これをもとに、患部の大きさに合わせて調整します。
編集部
塗る薬が何種類もある場合、順番はどうしたらいいですか?
福島さん
順番についても医師の指示に従い、特に指示がない場合は、一般的に塗る面積の広い方から先に塗ります。そうすることで、塗る必要のないところに余分な薬を塗り広げてしまうことを防ぐことができます。
塗り薬を使うときの注意
編集部
薬はしっかり塗り込んだほうが効果は高くなりますか?
福島さん
多くの軟膏やクリームは、患部にやさしく塗るのが一般的です。必要以上に強くこすると、薬の効果が十分に得られないだけでなく、刺激などで患部が悪化してしまうこともあります。一方でスキンケアに使用する保湿剤や筋肉痛に使用する消炎鎮痛剤は、体内への吸収を促すため、擦り込むように塗りましょう。薬を塗る時にはまず患部と薬を塗る指や手をきれいにして、皮膚のしわの方向に沿って、皮膚の流れの方向に塗ると塗りやすいでしょう。
編集部
塗り薬はいつまで使えますか?
福島さん
チューブタイプの塗り薬は、薬に書かれている使用期限まで使用することができます。ただし、薬を塗る時にチューブの先端を患部に直接つけてしまうと、そこから細菌により汚染されてしまう場合があります。使用前にきれいに手を洗って、指に出してから患部に塗ることで、衛生的に使用できます。また、病院や薬局で複数の塗り薬を混ぜて処方されたものについては、別で使用期限が決められているものもあります。その場合は医師や薬剤師の指示に従ってください。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
福島さん
塗り薬は、塗る量が多すぎても少なすぎても適切な効果が得られません。患部の状態や大きさ、部位に合わせて正しく使い分けることが大切です。
編集部まとめ
塗り薬の使い方は薬の種類や患部の状態によって異なるので、今回紹介した塗り方はあくまで目安として考え、医師の指示や薬の説明書きをしっかり守ることが第一であることがわかりました。おおげさに副作用を怖がる必要はありませんが、何か変だと感じたらすぐに薬剤師や医師に相談するようにしましょう。