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乗り物酔いの対策、症状や年齢ごとに選ぶ薬は変わる?

 更新日:2023/03/27
乗り物酔いの対策、症状や年齢ごとに選ぶ薬は変わる?

「乗り物酔い」は、車やバスなどに乗ったときに起こる自律神経系の病的な反応のことです。吐き気や嘔吐などの症状が出るため、せっかくのお出かけや旅行が台無しになってしまうこともあるでしょう。酔い止め薬は市販でも購入できますが、製品によって期待できる効果や特徴が異なるのをご存知でしょうか。自分に合う酔い止め薬を選ぶことで、外出がきっと楽しくなるはずです。今回は、乗り物酔いの対策や酔い止め薬の選び方などを「薬剤師」の岡本さんに詳しく伺いました。

岡本 妃香里

監修薬剤師
岡本 妃香里(薬剤師)

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薬学部を卒業後、大手ドラッグストアに就職。管理薬剤師を経験した後、現在はフリーライターとして活動中。「正しい情報をわかりやすく」をモットーに、医療や健康に関する情報を発信している。

成分から見る酔い止め薬の選び方

成分から見る酔い止め薬の選び方

編集部編集部

乗り物酔いの薬は、どのように選ぶのがよいのでしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

酔い止め薬はどれも同じに見えるかもしれませんが、予防に強いものと酔った後の症状を抑えるものがあります。予防に強いのは、抗コリン薬が入っている酔い止め薬で、予防に優れた効果を示しています。また、予防として飲む場合は、乗り物に乗る30分前には服用してください。直前に飲むと薬が吸収されておらず、効果が出ないことがあります。

編集部編集部

酔ってしまった後、症状を抑えたい場合の薬についても教えてください。

岡本 妃香里さん岡本さん

すでに酔った後に服用する場合は抗ヒスタミン薬の入っているものが向いています。抗ヒスタミン薬は抗コリン薬ほど予防に効果はありませんが、症状が出た後でも効果を発揮します。ただし、抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が出やすい成分です。寝てやり過ごしたい方には向いていますが、眠くなると困る方には使いづらいかもしれません。

編集部編集部

抗コリン薬と抗ヒスタミン薬は、具体的にどのような成分でしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

抗コリン薬としては、スコポラミンというものが使われています。抗ヒスタミン薬は、クロルフェニラミンマレイン酸フェニラミンジフェンヒドラミンジフェニドールなどが代表的です。パッケージの裏に必ず記載されているので、購入する際に確認してみてください。

編集部編集部

酔い止め薬は「予防」か「症状を抑える」かで、完全に選ぶ薬が変わるのですか?

岡本 妃香里さん岡本さん

酔い止め薬の多くは、予防に効果的な抗コリン薬と酔った後でも効く抗ヒスタミン薬の両方が配合されています。むしろ、どちらか一方しか配合されていないもののほうが少ないでしょう。まれにどちらか一方しか配合されていない酔い止め薬もあるので、注意してください。

酔い止め薬の使い分け

酔い止め薬の使い分け

編集部編集部

薬局やドラッグストアに行くと、多くの酔い止め薬が並んでいますよね。どのように使い分けたらよいのでしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

いくつも種類があるので迷ってしまいますよね。酔い止め薬を選ぶときは、「①何歳の方が使うのか」「②どのような剤形か」「③予防と治療どちらに効果があるのか」、そして「④補助成分としてどのような成分が入っているか」の4つのポイントを確認することが大切です。

編集部編集部

子ども用の酔い止め薬もあるのですね。

岡本 妃香里さん岡本さん

パッケージに対象年齢が記載されているので、確認してから購入するようにしてください。商品によっては15歳以上からしか使えないものもあるので、とくに小さな子どもに使う場合はしっかりと年齢を確認してください。

編集部編集部

剤形はどのように選んだらよいのでしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

剤形には錠剤、液体、カプセル、ドロップなどがあります。錠剤やカプセルを飲み込むのが苦手な方はそのまま飲める液体タイプや、飴のように舐めて服用するドロップタイプを選ぶとよいでしょう。液体やドロップのタイプは、飲み物がなくてもすぐに服用できることから、万が一のときのためにお守りとして持っておくのにもおすすめです。

編集部編集部

予防と治療のどちらに効果があるかについては、先ほどの抗コリン薬や抗ヒスタミン薬をチェックすればOKですね。

岡本 妃香里さん岡本さん

乗り物酔いの予防をしたい方は抗コリン薬(スコポラミン)酔った後の症状を抑えたい方は抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、マレイン酸フェニラミン、ジフェンヒドラミンやジフェニドール、メイクリジン)が含まれているものを選びましょう。まれにどちらか一方しか配合されていない酔い止めもあるので、注意してください。

編集部編集部

補助成分にはどのようなものがあるのでしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

胃粘膜の神経を麻痺させて吐き気を緩和するアミノ安息香酸エチル、中枢を興奮させることで乗り物酔いの症状を抑えるカフェインジプロフィリン、吐き気に効果があるとされるピリドキシンなどの成分があります。吐き気が強く出やすい方は、アミノ安息香酸エチルやピリドキシンが入っているものを選ぶとよいでしょう。カフェインやジプロフィリンは眠気を軽減する効果もあります。ただし、トイレが近くなることがあるので注意してください。

乗り物酔いを予防する方法

乗り物酔いを予防する方法

編集部編集部

薬を使わないで乗り物酔いを予防する方法はありますか?

岡本 妃香里さん岡本さん

まず、前日はしっかりと睡眠を取るようにしてください。それから、空腹で乗り物に乗らないことも大切です。飴やチョコなど簡単なものでよいので、胃に少し食べ物を入れておきましょう。逆に満腹の状態だと酔いやすくなるので、食事を摂るとしても軽いものがおすすめです。

編集部編集部

酔い止め薬の代わりに飴を舐めても効果があると聞いたのですが、本当ですか?

岡本 妃香里さん岡本さん

ある研究では、酔い止め薬の代わりにプラセボ(薬効成分が入ってない偽薬)を投与したところ、乗り物酔いの症状を軽減できたことが確認されました。そのため、子どもに「酔い止めの薬だよ」と、ただの飴を渡しても効果が期待できると考えられます。

編集部編集部

「酔うかもしれない」という思い込みが乗り物酔いを招くこともあると思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

岡本 妃香里さん岡本さん

思い込みが乗り物酔いを招くことは十分にありうることです。逆に、「自分は酔わない。大丈夫。」と暗示をかけることで酔いの症状を緩和できたというデータがあります。「飴を舐めたから大丈夫」「この前のお出かけは酔わなかったから今日も大丈夫」など、自己暗示も乗り物酔い対策に効果的です。

編集部まとめ

酔い止め薬は、まず予防したいのか症状を治療したいのかで選ぶ薬が変わります。予防したい方は抗コリン薬、出てしまった症状を抑えたい方は抗ヒスタミン薬が効果的です。そのほか、配合成分や剤形などによって使いやすい酔い止め薬が変わるので合うものを選びましょう。

この記事の監修薬剤師