【体験談】「まさか26歳で甲状腺がんに…」 AYA世代の闘病記
がんは壮年、高齢者におきやすいというイメージがあるかもしれません。しかし最近はAYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)のがんも増えています。しかし一方でAYA世代が参考になるような情報が少ないという問題もあります。20代で甲状腺がんを乗り越えたMikuさんに、これまで闘病体験を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。
体験者プロフィール:
Mikuさん
神戸市在住1994年生まれ/診断時の職業は会社員。一人暮らし。2020年12月に橋本病と甲状腺がんが分かり、2021年1月に精密検査の結果、甲状腺乳頭がんと診断。2月に手術で全摘出。現在は毎朝、内服薬服用の必要はあるものの、手術前と変わらない生活ができており、休日はハイキングやヨガなどアクティブに過ごしている。
記事監修医師:
副島 裕太郎(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
甲状腺肥大では済まなかった
編集部
病気に気づいたきっかけとなる症状・出来事を教えてください。
Mikuさん
高校・大学生の時から健診で甲状腺肥大を指摘され、内科を受診していました。当時は特に問題なく、もともと甲状腺が大きいのでしょうとのことで、気にしていませんでした。2020年、職場の健康診断でも甲状腺肥大と診断され、その頃にはいつも以上に首のあたりが固いと感じていたのもあり、念のため専門医を受診することにしました。
編集部
最初に受診した病院での説明を教えてください。
Mikuさん
血液検査で橋本病、触診とエコーで悪性のしこりの疑いがあると説明されました。その後、総合病院を紹介され、同じく血液検査とエコーを受けました。さらに、しこりに針を刺す細胞診で判断します、と説明をうけました。
編集部
病気が判明した時、どのような心境でしたか?
Mikuさん
まず、最初に受診した専門医の先生がとても落ち着いていて、穏やかで「万一がんの場合でも、進行が遅いことがほとんどなので安心してください」との一言で、焦らず落ち着いて話を聞くことができました。
編集部
良い先生に出会うことができたのですね。
Mikuさん
おかげで心の準備はできていたため、「やっぱりか」という感じで受け止められました。それでも、今までずっと運動もして人並みに体には気をつかってきたので、まさか26歳でがんになるとは思ってもいませんでした。私以上に家族が心配していました。手術前の検査も県外からわざわざ来て付き添ってくれました。
編集部
医師から、どのように治療を進めると説明されましたか?
Mikuさん
「しこりの大きさから、甲状腺全摘出になります。手術は全身麻酔で2.5時間くらいの予定です」と説明がありました。入院中は特に投薬はありませんでした。現在はチラーヂンを服用しています。
同じAYA世代からの体験談が欲しかった
編集部
入院中はどのような気持ちでしたか?
Mikuさん
初めての入院で、医療の現場を見させてもらったのですが、みなさんのプロ意識に感動しました。コロナ禍で面会は一切禁止で、誰にも会うことなく一週間過ごしましたが、その間自分の心と体と向き合い、ゆっくりと過ごすことができました。
編集部
治療による副作用はありましたか?
Mikuさん
術後、副甲状腺を摘出した関係で血中カルシウムが低下し、手足のしびれ、顔のひきつりがありました。これらは薬で回復しましたが、普段薬をあまり飲まず、オーガニックにこだわっていたので、最初は抵抗がありましたね。
編集部
甲状腺がんの情報収集は、入院前などにしていましたか?
Mikuさん
甲状腺がんはいくつも種類があるので、自分が甲状腺乳頭がんと分かるまでは、どのタイプなのか不安で調べていました。種類によっては予後が悪いものもあるため、怖かったですね。実際に同じ病院に入院した方とブログやTwitterを見てイメトレしていました(笑)。
編集部
病気で困ったことはありますか? どのような情報が欲しいと思いましたか?
Mikuさん
私と同じ世代の方からの情報がなかったので、少し心細かったです。AYA世代からの情報が欲しいと思いました。
編集部
医療関係者からの説明は十分でしたか?
Mikuさん
完璧でした。とても話しやすい雰囲気でした。コロナで大変な中にもかかわらず、よく対応してくれて本当に感謝しています。
回復していく自分を実感
編集部
手術後、どのような変化がありましたか?
Mikuさん
術後8か月間ほど、首の傷にテーピングをしていました。首なので目立つため、仕事柄たくさんの人から「どうしたの?」と聞かれました。聞かれる度に隠さずありのままを伝えていました。おかげで同じ病気を経験した人、病気は違っても乗り越えた人、いろいろな方と深いお話ができるようになりました。
編集部
術後の回復で気づいたことがあるそうですね。
Mikuさん
生活では、術後、一日一日回復していく自分の体に感動しました。食べ物が食べられるようになったり、傷が落ちついて首が動かせるようになったり。3か月後に趣味のハイキングができたときは、「自分の体ってすごい! もっと大切にしなきゃ」と再確認しました。
編集部
治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?
Mikuさん
家族、友達からのメッセージと信頼できるお医者さん看護師さんの存在は大きかったですね。また、昔何かの本で読んだ言葉で「すべての出来事には意味がある」という言葉が支えとなりました。
編集部
もし昔の自分に声をかけるとしたら、どんな助言をしますか?
Mikuさん
面倒くさがらずに病院に行くこと、そしてセカンドオピニオンも検討すること、ですね。
編集部
現在の体調、生活、仕事の様子を教えてください。
Mikuさん
薬の内服は毎日必要ですが、術前と変わらず健康に過ごすことができています。ホルモンバランスが整ったおかげか、生理不順も治り、肌の調子も良くなりました。もうすぐ術後1年で、罹患時の気持ちを忘れそうになるときもありますが、健康な体に感謝を忘れず過ごしたいですね。
編集部
あなたの病気を知らない方へ、一言お願いします。
Mikuさん
「がん」そして「首に傷」と聞くと怖いイメージがあるかもしれません。しかし甲状腺がんは比較的進行が遅く、予後も比較的良好といわれています。もし、なってしまっても前向きな気持ちで治療を受けてほしいです。
編集部まとめ
今回は20代で甲状腺がんの治療を受けたMikuさんにお話をお聞きしました。幸い予後が良好ながんで、現在は術前と変わらず健康的な生活を送ることができているとのことでした。治療中は近い年代の方の体験談が少なく、不安に感じられたそうです。本企画ではAYA世代の方々の体験談についても積極的に取りあげていきたいと思います。