【闘病】「何で私ががんになるの!?」ただの咳から一転、恐怖の『卵巣がん』ステージ4

今回話を聞いたのは、「卵巣がん」と診断され、手術と抗がん剤治療の末、今は経過観察を続けている松本さんです。彼女は、もともと虚血性心疾患(心臓の筋肉に血液が十分に行き渡らず働きが低下する状態)や不整脈などの持病を抱えており、経過観察中に卵巣がんと診断を受けました。卵巣がんにはどのような症状が起こり得るのか、またどのような治療があるのか、そして治療を受ける上で何が大事なのか――。松本さんが自身の闘病記を語ります。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年11月取材。

体験者プロフィール:
松本美和さん
咳から始まったまさかの闘病生活

編集部
まずは、病気が判明した経緯について教えてもらえますか?
松本さん
もともと2015年から、虚血性心疾患と不整脈で定期的に循環器内科に通っていました。2022年4月ごろから咳がひどくて、食欲も出ず、息切れで歩くのも困難になり、「何かの肺炎かもしれない」と思い、改めて循環器内科を受診することにしたんです。すると足に血栓が見つかり、詳しい検査のために採血とCTを行ったところ、卵巣がんであることが判明しました。
編集部
病気が判明した時の心境は、どのようなものだったのでしょうか?
松本さん
「何で私ががんになるの!?」と頭と心が真っ白になりました。その後、卵巣がんについてたくさんの情報をインターネットで調べ、自分なりにいろいろな知識を学びました。
編集部
治療に関して、初めにどのような説明がされたのでしょうか?
松本さん
「まずは循環器内科で心臓と血栓の治療を1週間行います。次に大きな手術に備え、婦人科でいろいろな検査をしましょう」と説明されました。「手術した後に抗がん剤と分子標的薬(がん細胞の増殖に関わる特定の目印を狙い撃ちにし、正常な細胞へのダメージをできるだけ抑えるよう工夫された抗がん剤)の維持療法を行う」というのが大まかな流れでした。
編集部
実際に、どのような治療が行われたか、詳しく教えてもらえますか?
松本さん
卵巣がんが判明した2週間後の2022年4月25日、手術(卵巣および子宮の摘出、大網切除、後腹膜リンパ節郭清)を行いました。病理検査(病変の一部を顕微鏡で調べる検査)の結果、明細胞がん(卵巣がんの組織型の一つ)のステージ4Aと診断され、胸水、腹水にがん細胞があり、リンパ節61個中2個にがんが転移していることが分かりました。医師からは抗がん剤と分子標的薬を提案され、2022年5月に抗がん剤のTC療法(パクリタキセル、カルボプラチン)を行い、一度退院となりました。退院後は5月末より通院による抗がん剤併用療法、パクリタキセル、カルボプラチンの2種類による抗がん剤の点滴に加えて、ベバシズマブという分子標的薬の点滴もスタートし、3週間隔で8月までに合計6回の抗がん剤治療が終了しました。さらに、9月からはベバシズマブ単剤療法を開始し、約1年後の2023年8月に終了となりました。現在は、3カ月に1回の採血と、半年に1回の造影CTにて再発兆候がないかどうか経過観察を続けています。
手術後の傷跡。2022年4月30日撮影
家族やがん仲間のおかげで昔よりも元気に過ごせている

編集部
闘病中の心の支えになっているものはありますか?
松本さん
家族です。抗がん剤治療中は遠方にいる主人が付き添ってくれました。また、認知症の母も私の代わりに買い物へ行ってくれたり、食事を運んでもらったりして……。2人にはずいぶん助けられました。体がつらい時期に家族が身の回りのことを手伝ってくれて、本当にありがたかったですね。また、家で飼っている猫にも癒やされました。
編集部
病名が判明してから、生活にどのような変化がありましたか?
松本さん
以前より活動的になりました。がん仲間とランチしながら情報交換をしたり、講演会や講習会に参加したり、ピアサポーター(同じ病気を経験した人がその経験を生かしてほかの患者さんを支援すること)養成研修も受けたりする機会が増え、おしゃれも楽しむようになりました。特に力を入れていることは、闘病体験を生かした活動とがん仲間との交流です。忙しくも充実した日々を過ごしています。
編集部
現在の体調はいかがでしょうか?
松本さん
がんになる前よりも体調は良好です。がんにならなければ巡り会えなかったかけがえのない仲間と皆で励まし合いながら、情報交換しています。がん仲間のおかげで「一人じゃないんだ! 全員で乗り切っていこう」という気持ちになりました。
編集部
もし病気になる前の自分に声を掛けられるなら、どんな言葉を掛けますか?
松本さん
「早期発見は大事だよ」「何事も早め早めに診てもらいましょうね」と伝えたいですね。
編集部
医療従事者に期待すること、望むことはありますか?
松本さん
がんはほかの病気とは違い、主治医と患者が二人三脚で病気と闘い、治療というハードルを乗り越えていくものだと実感しています。日々を元気に過ごせているのも主治医のおかげです。この場を借りて「ありがとうございました!」と伝えたいですね。
編集部
卵巣がんの経験を通じ、松本さんが一番伝えたいことは何でしょう?
松本さん
早期発見の大切さと諦めない心です。私自身、20代のころから子宮筋腫などの既往があったにもかかわらず、「私ががんになるわけがない」という自信から検診を怠り、気付いた時にはステージ4の卵巣がんになってしまいました。診断結果に大きなショックを受け、一時は抗がん剤治療を受けることも、生きることすらも諦めかけていました。しかし、主治医からの「抗がん剤をやらないのはもったいないよ」という温かい言葉に背中を押され、治療に向き合う決心をしました。もしあの時治療を行っていなければ、今この世にはいないと思います。医学は日進月歩です。半年、1年後には新しい抗がん剤や分子標的薬が出てくることも珍しくありません。そこからさらに時が過ぎれば、寛解(症状が消失した状態)や完治も夢ではないかもしれない……。主治医と自分を信じて頑張っていきたいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
松本さん
私自身、今は体調が良くても体に異変があると、「再発か? 転移か?」と考えておびえてしまいます。この記事を読んだ皆さんには、早期発見・早期治療をするためにも、定期的な検診を心掛けてほしいですね。また、病院や医師を信頼して、その病気における標準治療(科学的根拠に基づいた現時点で標準的な治療)を選ぶのが一番だと思います。
編集後記
卵巣がんは40代ごろから増加し、50~60代で発症率がさらに高まります。普段体調に気を配っていても、気付かぬうちに進行しているのががんの怖さです。年1回の人間ドックや検診を全身チェックのタイミングとし、早期発見に努めましょう。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
鈴木 幸雄(岐阜大学医学部附属病院 産婦人科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

