がんの検査で重要な骨シンチグラフィ検査ってなに? どんなことが分かるの?
「骨シンチグラフィ検査」とは聞きなれない検査名ですよね? 一体どんな検査なのでしょうか。がんが骨に転移しているかを確認する重要な検査の1つということなので、「診療放射線技師」の隅田さんに詳しく伺ってみました。
監修放射線技師:
隅田 吉政(放射線技師)
骨シンチグラフィ検査とは
編集部
骨シンチグラフィ検査とは、どんな検査ですか?
隅田さん
一言でいうと、骨吸収や骨形成など骨の代謝状況を調べる検査になります。まずは骨に集まる性質のある薬に放射線が出るようにしるしをつけて、静脈から投与します。そして体内から出る放射線を専用の特殊なカメラで撮影すると、全身の骨の様子が観察できます。この薬は骨の代謝や反応が盛んなところに集まるため、状態が変化している場所が画像で確認できるのです。
編集部
骨シンチグラフィ検査で何の疾患が分かるのでしょうか?
隅田さん
乳がん、前立腺がん、肺がんなど、様々ながんの骨への転移が分かります。ほかにも原発性の骨腫瘍、急性骨髄炎の診断・範囲の確認、骨折などの検査にも用いられています。
編集部
X線検査(レントゲン撮影)とは何が違うのでしょうか?
隅田さん
X線検査は骨の形を見るのに適しています。一方、骨シンチグラフィ検査は全身の骨代謝の状況を調べることができ、骨の形に変化がない骨折や病変までも捉えることができます。したがって、X線検査よりも早期に骨の異常を見つけることが可能です。特にX線検査では診断が難しい疲労骨折や微小骨折などに有用とされています。
骨シンチグラフィ検査の流れ
編集部
検査の流れについて教えて下さい。
隅田さん
最初に検査に必要な放射性医薬品を静脈注射します。国内で広く用いられているのは、99mTc-MDPや99mTc-HMDPという放射性薬剤です。注射後は骨に薬が十分に集まるまで、2~3時間ほど待ちます。また、薬は尿とともに排泄されるため、膀胱に尿が残っていると正確な写真撮影ができないので、直前にトイレを済ませてから検査を行います。その後、全身の撮影を行いますが、大抵は午前に薬を注射して、午後に撮影する流れが多いようです。
編集部
検査を受ける時に注意することはありますか?
隅田さん
検査当日の朝食や昼食は通常通りに食べていただいて結構ですが、検査で投与する薬は尿とともに排泄されるため、いつもより多めに水分を摂ってください。また、妊娠中やその可能性がある方、授乳中の方は医師に申し出ていただく必要があります。
編集部
検査にかかる時間はどれくらいでしょうか?
隅田さん
検査の内容にもよりますが、通常は30分ほどかかります。そのうち20分ほど動かないようにする必要があるため、狭いところが苦手な方や安静にじっとしていることが難しい方は、事前に申告しておくことをお勧めします。
骨シンチグラフィ検査に関する疑問
編集部
放射性薬品の副作用はありますか?
隅田さん
副作用の発生率は平成27年の報告によると、29万件あたり5件とごくわずかです。この検査で用いる薬の量は1.5~2ccで、CT検査で用いられる造影剤の50分の1程度です。この量で副作用が現れることはほとんどありませんし、万が一起こったとしても迅速に処置が行われますので安心して検査を受けていただけます。
編集部
被ばく量はどれくらいあるのでしょうか?
隅田さん
この検査で使用される放射性薬剤からの被ばくは、約2mSvでごく微量です。これは胃のバリウム検査で浴びる放射線量と同程度とされています。また、放射性物質は尿とともに排泄されますし、時間と共に消失していく事から、被ばくによる体への影響は心配する必要はないでしょう。さらに私たちは普通に生活しているだけで、自然界から年間約2.4mSv被ばくするので、この検査による被ばくがどれだけ微量なものなのかお分かりいただけると思います。
編集部
費用はどれくらいかかりますか?
隅田さん
施設によりますが、3割負担で1万8000円ほどです。ただし、保険適用の医療費については負担を軽くするための制度がありますので、確認してみると経済的負担を減らせるかもしれません。
編集部まとめ
骨シンチグラフィ検査は、レントゲン撮影でも分からないような小さな骨折でも発見でき、がんの骨への転移を確認できる有用な検査ということが分かりました。また、使用される薬が放射性薬剤ということで、被ばくや副作用が心配になりますが、大きな影響を与えるものではないということで安心して検査を受けても問題ないとのことでした。