糖尿病予防は毎日の食事から! 血糖値を上げにくくする食事を管理栄養士が解説
インスリンが十分に働かなくなり、高血糖状態が慢性的に続く「糖尿病」。予防というと多くの方が食事を意識しますが、具体的にどのような食事が良いかイメージしにくいと思います。そこで糖尿病予防に効果的な食材やおすすめするレシピなどについて、糖尿病療養指導士の資格を有する管理栄養士の北久保さんに解説いただきました。
監修管理栄養士:
北久保 佳織(管理栄養士)
目次 -INDEX-
糖尿病予防に効果的な食材
編集部
糖尿病予防というと最初に食生活が思い浮かびますが、なぜ食事が重要なのでしょう?
北久保さん
生活習慣の影響が大きい2型糖尿病は食生活が要です。今は、いつでもどこでも食べたいものが手に入る時代なので、「いつ、何を、どのくらい食べるか」が大事です。食生活を見直すことで2型糖尿病は予防できます。
編集部
具体的にどのような食材が良いのでしょうか?
北久保さん
野菜と魚を意識して摂りましょう。また、食べる順番についても意識するとより効果的です。食べる順番ダイエットはご存じでしょうか。野菜を先に食べることで食後血糖値の上昇が緩やかになり、食べ過ぎ防止になります。メインディッシュに肉か魚を選ぶとき、肉に偏らず魚も選ぶことで、含まれる脂質の量と質が良くなります。糖尿病予防と直接関係はありませんが、野菜も魚も自給率の高い食材です。地域で生産された食材を意識して食べると食事の満足感も高まると思います。
編集部
反対に控えた方が良い食材についても教えてください。
北久保さん
糖尿病だから食べてはいけない、というものはありませんが、お菓子や清涼飲料水は注意すべきです。炭水化物と脂質以外の殆どの栄養素に欠けているので、いくら食べても満たされず過食になりやすくなってしまいます。お菓子やアルコール飲料等の嗜好品との付き合い方が糖尿病予防には大事です。
編集部
お菓子やアルコール飲料はどうしても量が多くなってしまいます……。
北久保さん
嗜好品はあくまでもお楽しみとして、頼り過ぎないようにしましょう。肥満があり、体重を減らしたいけれど、毎日にようにお菓子を買って食べないと落ち着かないとか、缶コーヒーやペットボトルのジュースを飲む習慣があるという人は、お菓子やジュースを1日100~200kcal以下にすることを目標にしましょう。最近はノンアルコール飲料やローカーボのお菓子にも美味しいものがあります。
管理栄養士おすすめの食事メニューを紹介
編集部
実際に北久保さんがおすすめするメニューがあれば、教えてください。
北久保さん
私は鶏むね肉の梅しそ焼き、ローファットのエビチリ、鮭のホイル焼きをおすすめしています。
編集部
なぜ上記のメニューがおすすめなのですか?
北久保さん
鶏肉むね肉、エビ、鮭等、脂質が少なめの食材で美味しくできるメニューは糖尿病予防の強い味方です。鶏むね肉は火を通すと硬くなりやすいですが、梅肉を使うと軟らかく美味しくなります。エビチリは、たくさんの油を使うとカロリーが高いのですが、少しの油でじっくり炒めてエリンギやタケノコと合わせるとヘルシーでボリュームのある1品となります。
編集部
鮭のホイル焼きのおすすめポイントも教えてください。
北久保さん
鮭は塩鮭を買う人が多いと思いますが、生鮭を調理するのがおすすめです。玉ねぎや人参など、家にある野菜と一緒にホイルで包めば野菜と魚を一緒に摂ることができます。作りやすいこともおすすめポイントですね。
レシピ紹介:鶏むね肉の梅しそ焼き
1人分 156kcal
炭水化物3.2g たんぱく質28.1g 脂質4.3g 食塩0.6g
【材料】鶏むね肉:120g
梅肉:6g
青しそ:葉3枚
オリーブ油(サラダ油でも良い):適量
【作り方】
①.鶏むね肉は縦に切り分ける。真ん中に切り目を入れて薄くスライスする。
②.スライスしたむね肉に梅肉を塗り、端から巻く。
③.青しそ葉で巻いて爪楊枝で留める。
④.フライパンにオリーブ油を入れて温め、鶏むね肉の青しそ葉を上にして置く。
⑤.フタをして中火で2分、焦げないように火力下げて3分焼く。フタをしたまま2分ほど置いてでき上がり。
レシピ紹介:ローファットのエビチリ
1人分 158kcal
炭水化物12.3g たんぱく質21.7g 脂質3.9g 食塩2.4g
【材料】エビ:100g
長ねぎ:30g
エリンギ:20g
タケノコ:20g
ケチャップ:大さじ4
豆板醬:小さじ1
鶏ガラスープの素:小さじ1
サラダ油:適量
【作り方】
①.ケチャップと豆板醤、鶏ガラスープの素は合わせておく。
②.フライパンに油を入れて温め、エビを弱火でじっくり炒める。
③.長ねぎを入れて炒めて、エリンギ、タケノコを入れて炒める。
④.①を入れて炒め、火を消して味をなじませる。
レシピ紹介:鮭のホイル焼き
1人分 150kcal
炭水化物5.0g たんぱく質21.4g 脂質5.7g 食塩1.0g
【材料】鮭:1切れ
味噌:5g
バター:2g
野菜(キャベツ、人参、玉ねぎ):合わせて50g
アルミホイル
【作り方】
①.味噌とバターは電子レンジ(500W 20~30秒)で温め、混ぜておく。
②.アルミホイルを2枚重ねて、鮭を置き、①を塗った上に野菜を置く。
③.アルミホイルの下1/3を折り、上1/3を重ねて、両方の端を巻く。
④.フライパンにのせて、中火で10分焼く。
※フライパンは空焚きの状態になるので、使い古しのフライパンか鉄製のフライパンが良い
食事する際のポイント
編集部
食事量は減らした方が良いのでしょうか?
北久保さん
最初から減らしすぎないことが大切です。「最初は我慢できても、途中で我慢できなくてたくさん食べてしまった」という経験はありませんか。食べ過ぎている、と思う方は、まず噛みごたえのある食材を意識して選び、よく噛んで食べましょう。キャベツやキュウリのサラダを最初に食べるのも良いですね。
編集部
食事する時間についても、気をつけた方が良いのですか?
北久保さん
夕食が遅いという方は、朝食と昼食の内容を充実させて夕食を軽くしましょう。夕食にたくさん食べてしまうという場合、多くの方は朝食もしくは昼食が少なすぎる、おにぎりやパンのみ等、糖質に偏った食事になっていることがあります。食事時間が不規則という方は、食事の内容を工夫することで糖尿病予防は可能です。
編集部
食事の際に気をつけることはありますか?
北久保さん
主菜は良質なたんぱく質を、1日に5色(赤・白・緑・黄・茶)の野菜ときのこで彩り良く、よく噛んで食べましょう。
編集部
5色の野菜について具体的に教えてください。
北久保さん
トマトやにんじん等、赤色の野菜はリコピンやβ-カロテンを含みます。これらは生体内で必要に応じてビタミンAとなり、粘膜や皮膚の保護にはたらきます。大根やもやし、キャベツ等、白色の野菜はカリウムが豊富で、ナトリウムを体外に排出するのを助けるはたらきがあります。ほうれん草や小松菜、ブロッコリー等、緑色の野菜はβ-カロテン、葉酸を含み、葉酸はビタミンB12とともに赤血球を作るのに必要な栄養素です。
編集部
残りの黄色・茶色の野菜についてはいかがでしょう?
北久保さん
さつまいもやじゃがいも、かぼちゃ等、黄色の野菜はビタミンCを含み、コラーゲン合成や鉄の吸収に関与し、抗酸化作用もあります。ごぼう、椎茸や舞茸、エリンギ等、茶色の野菜・きのこに含まれる食物繊維は、食後血糖値の上昇を緩やかにして、便通を改善するはたらきもある、糖尿病予防にとってマストな栄養素です。
編集部
よく噛んだほうが良い理由についてもお願いします。
北久保さん
昔から「早食いは太る」と言われており、食行動と肥満の研究報告はたくさんありますが、自分自身の経験からも「早食いは太る」と思います。よく噛んで食べることで胃腸のはたらきを助け、肥満の改善だけではなく、味覚の発達、言葉や脳の発達にも良く、唾液によるむし歯の予防や、がんの予防にも良いと言われています。忙しい時でも食事はゆっくりよく噛んで食べることを心掛けたいですね。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
北久保さん
食事を我慢するのはナンセンスです。ダイエットは1日おきにしてみる、とか最初から頑張りすぎないことが大切です。また、途中で止めずに続けていくことが大事です。
編集部まとめ
“食事”と一言でいっても、レシピや食材だけでなく食べ方や食事時間など、様々な要素が糖尿病予防に効果的ということが分かりました。しかし、最後に北久保さんが仰っていた「最初から頑張りすぎないことが大切」という言葉にもあるように、糖尿病予防を意識しすぎることも正しいとは言えないのかもしれません。無理のない範囲で自分にできることから始めて、糖尿病にならない食生活を習慣化していきましょう。