がんの温熱療法「ハイパーサーミア」とは? どこで受けられるの?
がんの温熱療法として効果が期待されている「ハイパーサーミア」。健康保険も適用され、副作用もほとんどないそうです。その一方、「ハイパーサーミアはどこで受けられるのか」「治療の流れはどうなっているのか」などの疑問も出てきます。そこで今回は、ハイパーサーミアの全体像について「相武台脳神経外科」の加藤先生に教えていただきました。
監修医師:
加藤 貴弘(相武台脳神経外科)
ハイパーサーミアを受けるにあたって知っておきたい情報
編集部
ハイパーサーミアを受けたいと考えているのですが、右も左もわかりません。どうしたらいいのでしょうか?
加藤先生
前提としてハイパーサーミアは、どの医療機関でもおこなっているわけではありません。そのため、ハイパーサーミアをおこなっているかどうか、医療機関のウェブサイトを事前に確認するといいでしょう。また、日本ハイパーサーミア学会のウェブサイトに、認定施設の一覧が掲載されているので、そちらで近くの医療機関を調べるのも手だと思います。
編集部
どんな種類のがんでも対象になるのですか?
加藤先生
脳、眼球、血液疾患を除いて、ほぼ全てのがんが対象になります。基本的には初期から末期まで、進行の度合いに関係なく受けていただくことができます。
編集部
初発のがんではなく、転移がんなどにも有効ですか?
加藤先生
はい。転移がんや再発がんも対象です。ハイパーサーミアには、がん細胞を縮小したり、増殖を抑えたりする効果があると考えられています。また、痛みの緩和や食欲増進、体力の回復、睡眠の改善などの効果も期待できます。
編集部
様々な効果を期待できるのですね。
加藤先生
そうですね。そのなかでも多くの患者さんに喜ばれているのが、抗がん剤による強い副作用が軽減されるということです。また、ハイパーサーミアを併用することで抗がん剤の副作用が軽減されるだけでなく、使用量を減らすこともできるかもしれません。さらに、抗がん剤だけでなく、放射線治療の効果を高めることも期待されています。
編集部
ハイパーサーミアでがんを完治することはできるのですか?
加藤先生
今のところ、ハイパーサーミアだけでがんが完治するということはありません。抗がん剤治療や放射線治療などの標準医療とハイパーサーミアを組み合わせるのが一般的です。
ハイパーサーミアの流れ
編集部
ハイパーサーミアを受けるときの流れについて教えてください。
加藤先生
わかりました。ここからは当院のケースでご説明しますね。まずはお問合わせいただき、診察の予約をお願いします。その際、患者さんの年齢、がんの部位、ステージ、簡単な経過、現在おこなっている治療などを事前にお聞きすることがあります。
編集部
治療の前に診察が必要なのですね。
加藤先生
はい。診察で問診をして、病気の経過や体調を確認します。その際、CTやMRI、採血の検査結果など、経過についてわかるデータがあれば、お持ちいただけるとスムーズに進めることができるので助かります。
編集部
主治医の先生には、ハイパーサーミアを始めることを伝えた方がいいですか?
加藤先生
できれば、お話しすることをおすすめします。私の意見ですが、あくまでもがん治療は「手術」「抗がん剤」「放射線治療」が軸であるべきです。そして、主治医の先生と協力してがん治療に臨みたいと考えています。そのため、ハイパーサーミアを始める前に、まずは主治医の先生に相談することを推奨しています。主治医の先生から、これまでの検査結果や経緯などの情報提供していただけることもありますし、それがあれば円滑に治療を進めることができます。
編集部
ハイパーサーミアの治療当日、どのような流れで進むのですか?
加藤先生
治療を開始する当日にもう一度診察を受けていただき、ハイパーサーミアが適応可能と判断できたら治療へ進みます。治療時間はだいたい40分から1時間で、音楽を聴いてリラックスしながら受けることができます。また、看護師やスタッフが同室しているので、何か困ったことがあったり異変を感じたりしたら、すぐにお知らせください。
編集部
治療は何回、おこなわれるのですか?
加藤先生
当院の場合、保険適用になるのは2カ月の間に8回までです。さらに回数を追加したい場合は、自由診療となります。ただし、医療機関によって1クールの期間や回数が異なるので、事前に費用や期間などを確認しておきましょう。
ハイパーサーミアを受ける際の注意点
編集部
ハイパーサーミアは何歳から受けられるのでしょうか?
加藤先生
とくに年齢制限は設けていません。実際に当院では、中学生の患者さんもハイパーサーミアを受けていますよ。
編集部
ハイパーサーミアが受けられない人はいますか?
加藤先生
約1時間、姿勢を保持していただくので、全身状態が不安定な人には基本的にご遠慮いただいています。また、「ペースメーカーや植込み型除細動器、人工内耳などを装着している、または埋め込んでいる人」「加温域内に胆管ステント、消化管ステント、血管ステントなどの金属片を留置している人」「金属粉を含む刺青などをしている人」などは受けることができません。加えて、「妊娠中・出産直後の女性」も受けられません。
編集部
どれくらいの頻度で治療をおこなうのですか?
加藤先生
当院の場合は、1週間に一度治療を受けていただきます。熱に対する効き目をよくするために、少なくとも3日以上は間隔を空けていただいています。
編集部
副作用や治療による痛みはありますか?
加藤先生
むしろ、副作用が少ない点がハイパーサーミアの特徴です。ただし、稀に熱傷や脂肪硬結、脱水などがみられることがあります。また、治療中に痛みや熱さなどを感じる場合は、スタッフにお声がけください。脱水症状が心配であれば、点滴を受けていただきながらハイパーサーミアを受けていただくこともできます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
加藤先生
ハイパーサーミアに関心がある人は、まず医療機関へ問合せて、詳しい説明を受けることをおすすめします。当院でも非常に多くの患者さんがハイパーサーミアを受けており、「体調がよくなる」「効いている感じがする」「体の芯まで温まる感じがする」と、何かしらの効果を実感されています。ハイパーサーミアにご興味がある人は、ぜひ一度、導入している医療機関にお問合わせください。
編集部まとめ
ハイパーサーミアは効果が期待できる治療法ですが、それだけでがんを克服できるというわけではないとのことでした。抗がん剤や放射線治療などのほかの治療法と組み合わせることで効果を期待できます。また、抗がん剤などの副作用を軽減することもできます。興味のある人はぜひ、ハイパーサーミアをおこなっている医療機関を探してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒252-0324 神奈川県相模原市 南区相武台1丁目23−9 |
アクセス | 小田急線「相武台前駅」 徒歩4分 |
診療科目 | 脳神経外科 |