コレステロール値が高い卵は、1日何個までなら食べても大丈夫?
調理方法も豊富で、手軽に食べやすい卵。でも食べ過ぎると体に良くないというイメージもあるのではないでしょうか。また、具体的にどれくらいの量なら食べても大丈夫なのでしょうか。今回は卵のコレステロール値について「管理栄養士」の長井さんに話を伺いました。
監修:
長井 彩子(管理栄養士)
2009年、管理栄養士国家試験事業スタート。2015年、(一社)管理栄養士地位向上協会を設立。2019年、日本栄養士会の認定を受け、認定栄養ケア・ステーション ファンスタディを設立。公衆栄養活動などを推進し、現在に至る。
卵に含まれるコレステロール値
編集部
卵1個に含まれるコレステロールの量はどれくらいなのでしょうか?
長井さん
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
編集部
ほかの食材と比べて、卵はコレステロールの量が多いのでしょうか?
長井さん
卵と同じたんぱく源で、1食あたりのコレステロールの量を見てみましょう。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、脂身付きの豚バラ肉1食(100g)あたりのコレステロール値は70mg、塩サケ1切(80g)あたりのコレステロール値は51mgとなっています。この数値から卵のコレステロール値が、ほかの食材と比べいかに多いかがよく分かりますね。
編集部
コレステロールは、1日にどれくらいとっても大丈夫なのでしょうか?
長井さん
コレステロールの摂取量の基準値は、現在定められていません。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、生活習慣病予防のための目標量として1日男性750mg、女性600mgを上限としていた食事からのコレステロールの目標量を、設定するのに十分な科学的根拠が得られなかったためという理由で撤廃しています。ただし、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質異常症の重症化予防を目的として、コレステロールを200mg/日未満に留めることが望ましいとされています。
体内で生産されるコレステロール
編集部
食事からのコレステロールの摂取量を控えると、コレステロール値は抑えられるのでしょうか?
長井さん
いいえ、そんなことはありません。実は、体内でもコレステロールは生産されているのです。
編集部
体内で生産されるコレステロールの量はどれくらいなのでしょうか?
長井さん
体内で生産されるコレステロールの量は、食事から摂取するコレステロールの3~7倍です。また、コレステロールの量は、体内で常に一定に保たれるように調節されており、食事からのコレステロールの摂取量が多い場合には、体内での生産量は少なくなり、反対に食事からのコレステロールの摂取量が少ない場合には、体内での生産量が多くなるように調節されているのです。
編集部
コレステロールはなぜ体内でも生産されるのでしょうか?
長井さん
コレステロールは細胞膜の主要な構成成分であり、細胞やホルモン、ビタミンの原料になり、体にとって必要な栄養素であるためです。
卵の摂取で気をつけるべきポイント
編集部
1日何個までなら食べても問題ないのでしょうか?
長井さん
一概に何個までなら大丈夫とは言えません。健康な成人の場合は、卵1個あたりのコレステロール量185gなら問題はありません。しかし、フレイル対策として、高齢者はたんぱく質の摂取量が重要になってきます。コレステロールが高いからと言って、卵の摂取を制限してしまうとたんぱく質不足になってしまう可能性があります。したがって、バランスのよい食生活に配慮することが重要となります。
編集部
コレステロール以外にも気を付けることはありますか?
長井さん
卵はコレステロール以外にも飽和脂肪酸を多く含みます。飽和脂肪酸を摂りすぎると、肥満や脂質異常症、動脈硬化による高血圧や循環器疾患を誘発する原因になるため注意が必要です。
編集部
卵の摂取量で、特に気を付けた方がいいのはどんな人でしょうか?
長井さん
脂質異常症の人は、血液中で脂質の濃度に異常が起きている状態なので、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控えなければいけません。したがって、卵の摂取量には特に気を付けるべきといえるでしょう。
編集部
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
長井さん
卵はコレステロールや飽和脂肪酸を多く含みますが、良質のたんぱく質やビタミン類を多く含んでおり、非常に優れた完全栄養食品でもあります。1日の摂取量については、病気の有無や年齢などによって個人差があるので、管理栄養士など適切な知識を持つ人に相談しながら、「自分にとって適切な量」を見つけて欲しいと思います。
編集部まとめ
コレステロールの摂取量の基準値は現在定められておらず、卵は1日に何個までなら食べて大丈夫という上限はないということでした。また、体内でもコレステロールは生産され、コレステロールの量は体内で常に一定に保たれるように調節されているということも分かりました。さらに、卵はコレステロールだけではなく、良質のたんぱく質やビタミン類を多く含む優秀な食材なので、ほかの食材とのバランスを意識しながら卵料理を楽しんでみてください。