【闘病】「全身性エリテマトーデス」 薬の副作用を耐えられたワケは“子どものため”
3人の子育てと仕事、家事に追われる生活を送っていた矢先、指定難病の全身性エリテマトーデス(SLE)と突然診断された丸山亜矢さん。現在も辛い症状と、治療薬であるステロイドの副作用と闘っています。病気になって初めて気がついた、ストレスマネジメントの大切さと、「人に頼って生きてもいい」という考えに行き着いたという闘病体験について語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
丸山 亜矢
1990年生まれ、兵庫県在住。夫と3人の子どもの5人家族。子どもを育てながら、フルタイムで仕事を始めたが、ストレスと疲れが蓄積した生活を送っていた。そんな中、2019年に難病である全身性エリテマトーデス(SLE)と診断される。現在もステロイド薬による副作用で辛い日々が続くが、両親に家事などを手伝ってもらいながら、週1日で仕事を再開している。
記事監修医師:
楯 直晃(リアラクリニック 院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
突然襲いかかった全身性エリテマトーデス
編集部
全身性エリテマトーデス(SLE)とはどんな病気ですか?
丸山さん
免疫機能の異常な働きによって、自分の身体を攻撃してしまう膠原病です。寛解と悪化を繰り返してしまう慢性的な病気になります。主な症状として、倦怠感、発熱、日光過敏症、皮膚症状、心血管症状、腎臓機能障害、うつに代表される精神症状など、全身にさまざまな症状を引き起こします。
編集部
どのように発症しましたか?
丸山さん
2019年に突然手にこわばりが出て、そこからしばらく経ったある日の朝には何も物を掴めないような状態でした。その後、一日中続く強い眠気に襲われるようになり、診断を受ける2週間ほど前から、顔や足のむくみが目立ちはじめました。同時に発熱が1週間ほど続き、歩くこともままならなくなって救急外来を受診しました。
編集部
どのような検査をしましたか?
丸山さん
血液検査、筋電図検査、CT、MRIを受けました。検査の結果、膠原病が疑われるということで入院することになり、さらなる検査を受けて、SLEと診断されました。私は三女を出産時に、血栓性血小板減少性紫斑病という難病を発症しています。このため血液内科を定期的に受診していたので、比較的早く診断がついたのだと思います。
編集部
医師から、どのように治療を進めていくと説明されましたか?
丸山さん
血液検査ではクレアチンキナーゼ(CK)という、心臓の筋肉が傷ついた時に上昇する値がすごく高かったようです。なので「入院してステロイド薬で治療し、CK値の下がりをみます」と言われました。入院が必要とのことで、1ヶ月半ほど入院生活をおくりました。また、退院後はステロイド薬と免疫抑制剤による治療が続くこと、SLEは一生ステロイドを飲み続けるかもしれない、という説明も受けました。
編集部
病気が判明した時の心境を教えてください。
丸山さん
過去に血栓性血小板減少性紫斑病を発症していたので「また(病気)!? こんなことあるの?」と、驚きが大きかったです。入院することで子どもたちに寂しい思いをさせてしまうし、家族にも迷惑をかけてしまうし、すごく落ち込みましたね。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
丸山さん
とにかく倦怠感が強くて、簡単な家事さえもままなりませんでした。動くと心臓がバクバク、息も切れ、体もあちこち痛かったです。ご飯を作ることができず、レトルトや惣菜に頼る日々でした。
ステロイド薬の副作用に悩まされる日々
編集部
治療で辛かったことはどんなことですか?
丸山さん
ステロイド薬の副作用にはさまざまなものがあり、それに悩まされました。顔が膨れ上がるムーンフェイスになったことや、満腹中枢がおかしくなって体重が10kg以上増えたこともありました。精神的にも落ち込みやすく、情緒不安定になり、家族に迷惑をかけてしまっていた時期もあります。睡眠障害も出るので、睡眠薬無しでは眠れない時期もありました。あとはSLEの症状で、髪の毛が抜けスカスカに薄くなり……。とにかく倦怠感が強く、毎日朝起きた瞬間からとてもしんどかったです。そんな状況でもなかなかステロイドが減らせず、増減を繰り返していたのも辛かったです。
編集部
現在の体調や生活の様子について教えてください。
丸山さん
日によって体調に波がありますが、現在は歩くとすぐに足が疲れて、「痛だるく」なります。小さなカバンを持っているだけでも、腕が辛くなります。スーパーでの買い物がきついので、ここ数年はネットスーパーを活用するようになりました。去年から体調の悪い日々が続いていたので、両親と同居して、家事や子育てを協力してもらいながら暮らしています。仕事は週1日程度、SLEの日光過敏症があり日光に当たれないため、比較的身体が楽な夜の時間帯に働きに出ています。体力を使わない周りの目も気にせずにマイペースにできる仕事なので、今の自分には合っているかなと思います。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
丸山さん
SNSで出会ったたくさんの仲間です。同じSLEの方々や、違う難病や病気の方とメッセージのやりとりを通して情報交換をしたり、励まして元気付けてもらったりと日々支えてもらっています。あとは子どもたちですね。子どもたちのために、動ける身体でありたい。もう入院したくないという気持ちが、嫌な副作用のある薬も「頑張って飲もう」という気にさせてくれます。
病気になった今、言いたいこと
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
丸山さん
「自分にもっと優しく。一人で抱え込んだり、頑張りすぎないように」と言いたいです。病気になる前は生活費を稼ぐことに必死だったから、「お金はなくてもなんとかなる、ストレスを溜めすぎると健康を失ってしまうよ」とも言葉をかけたいです。
編集部
全身性エリテマトーデスを意識していない人に一言お願いします。
丸山さん
SLEは誰にでも起こり得る病気です。発症するのは女性が9割で、働き盛りの20~40代に多いそうです。ストレスも発症の大きな要因で、私も発症した当時はストレスの塊でした。身体からのSOSに気付き、休むときは休む。ストレスケアをすることを忘れないで欲しいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
丸山さん
SLEは本人にしか分からない辛さがたくさんあり、検査結果がそこまで悪くなくても、実際は生活にかなり支障をきたしていることもあります。「採血の結果は悪くないから大丈夫ですよ」と、本人の辛い症状に目を向けてもらえないのが悲しいです。いろいろな不安を抱きながら、何時間も待って診察してもらえた医師に、理解してもらえないことは辛いものです。医療従事者の方に、つらい気持ちを汲んでもらえるだけでも、かなり救われます。患者の気持ちに寄り添ってくれるお医者さんが増えると嬉しいな、と思います。
編集部
読者に向けてのメッセージをお願いします。
丸山さん
SLEの患者は、一見元気そうに見えても辛さや生きづらさを抱えています。決して怠け病ではなく、毎日鉛を担いでいるようなだるさを感じながら生活しています。怠けてると思われたくないために、「しんどい」とは言えないですし、体調が悪くても頑張りすぎてしまいます。しかし、無理をしてしまったあとは寝込むこともあります。職場や周りにSLEの方がいれば気遣ってあげてください。また、ヘルプマークの存在を知ってほしいです。病気のせいで身体が辛い方がヘルプマークをつけていたら、手を差し伸べてあげてください。電車やバスでは席を譲ってあげてください。
編集部
ほかに伝えたいことがあればお願いします。
丸山さん
私は難病になり、人に頼ることを知りました。一人では生活することも、子どもたちを育てることもできません。助けが必要な時は、「助けてください」と言っていいのです。そして、日々の疲れとストレスが大きな病気につながります。自分を大切に、一人で抱え込まずに誰かに頼ってください。身体の健康は、心も健康であってこそ。ストレスマネジメントがとても大切だと思います。
編集部まとめ
家庭のために日々頑張っているお母さんたちは、自らを犠牲にしがちです。丸山さんの闘病体験には、ストレスマネジメントの大切さと、人に頼って生きてもいい、というメッセージが込められていました。ストレスは万病のもと。しっかり休んで身体も心も健康に保ちましょう。