介護ロボットってどんな種類があるの? 介護ロボットの現状を介護福祉士に聞く
近年、介護業界では人手不足が大きな課題となっています。このままでは、高齢者人口がピークに達する2025年には、介護を受けられない人たちで溢れてしまいかねません。そんな中、政府が力を入れているのが、介護業界のIT化と「介護ロボット」の導入です。今回は介護ロボットの現状について、「介護福祉士」の渡口さんに話を伺いました。
監修介護福祉士:
渡口 将生(介護福祉士)
介護ロボットの種類と安全性
編集部
介護ロボットはどんな種類のものがあるのでしょうか?
渡口さん
介護ロボットは目的別に「移乗介護」、「移動支援」、「排泄支援」、「見守り支援」、「入浴支援」、「介護業務支援」に分けられます。比較的普及しているのは「見守り支援」のもので、センサーで体温や動きを感知し要介護者の行動を離れた場所からでも管理できるというものです。このタイプの介護ロボットは、夜間の人員削減に役立っています。
編集部
介護ロボットの安全性は大丈夫なのでしょうか?
渡口さん
はい、安全性には十分配慮して設計されています。しかし、使い方次第では危険なこともあるので、介護ロボットの正しい使用方法の理解と実習は必要です。また、要介護者の身体状況に合っているかの適正を確認する必要もあります。
編集部
介護ロボットはどれくらいの現場で導入されているのでしょうか?
渡口さん
「見守りロボット」は難しい操作があまり必要なく、パソコンとの連動だけで、一日を通して要介護者の見守りができるため普及が進んでいます。全施設での導入状況(普及率)は3割程度となっています。
介護ロボットのメリットとデメリット
編集部
介護ロボットには、どのようなメリットがありますか?
渡口さん
まず、介護者の身体的・精神的な負担軽減が最大のメリットです。介護の動作は繰り返すことで身体を痛めてしまうことが多く、腰痛により離職する介護職員も少なくありません。介護側の負担を軽減する介護ロボットは介護職員の離職率改善にもつながると考えられます。また、介護職員だけでなく、要介護者やその家族にも「見守りロボット」で見守られている感覚は安心感につながります。
編集部
介護ロボットを導入することでのデメリットはあるのでしょうか?
渡口さん
機械の操作が必要になるので苦手意識を持つ人も多く、操作の手順を覚えるのに練習が必要になることがあげられます。また、機械が便利になるにつれ、介護職員のスキルの低下がみられる可能性もあります。
編集部
介護ロボットの普及が進むと、介護職員が必要なくなる時代がくるのでしょうか?
渡口さん
そんなことはありません。介護ロボットと聞くと2足歩行のものをイメージされることが多いですが、現在開発され普及しているものはあくまで人が操作を行う機械といった印象です。また、細かい作業はロボットではまだまだ難しく、人による介護が必要な場面も多く存在しますので、そういった目的別の使い分けが必要です。
介護ロボットの現状
編集部
介護ロボットを使用した感想を教えてください。
渡口さん
身体的な負担の軽減は確実に感じます。スーツ型支援ロボットを使用すると自分が介助しているとは思えないような感覚になります。また、移動支援型ロボットは、介助者はボタンを押すだけでリフトアップは機械が全て行ってくれるので、身体的・精神的な負担軽減につながると思われます。
編集部
介護ロボットは現実に使えるものなのでしょうか?
渡口さん
介護ロボットの多くは大きめのサイズでかなりの重量があり、運ぶのが大変だったり、保管場所の確保が難しかったりするため、部屋の広さによっては取り扱いに困る場面も想定できます。また、スーツ型ロボットは保管場所の確保はしやすいのですが、着脱するのが手間となる場面が多く、今後の課題として改善の必要性を感じます。
編集部
介護ロボットってどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
渡口さん
導入には、高額な費用がかかります。移動支援型ロボットは1台100万円前後になり、補助金がないと導入のハードルはかなり高いものとなります。
編集部まとめ
介護ロボットは介護者の負担軽減や作業効率を高め、人手不足を補える可能性はありますが、その反面、大きさや費用などの課題が多く、全てをロボットに任せることのできるものではないというのが現状のようです。今後、人手不足の介護業界を救う救世主となるのか、開発に期待がかかります。