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白内障治療でおすすめの多焦点眼内レンズ 「テクニスシナジー」とは

 更新日:2023/03/27
白内障治療でおすすめの多焦点眼内レンズ 「テクニスシナジー」とは

白内障の手術で使用される眼内レンズにはたくさんの種類があります。眼内レンズには大きく「単焦点型」と「多焦点型」とがあり、それぞれ見える範囲などが異なります。老眼矯正用で複数の視点を持つ多焦点型レンズには、近くから遠くまでを連続して見える特徴を持つ「連続焦点型」レンズというものがあります。今回は最新の連続焦点型レンズ「テクニスシナジー」について、うえだ眼科クリニックの上田至亮先生に話を聞きました。

上田至亮医師

監修医師
上田 至亮(うえだ眼科クリニック 院長)

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防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院眼科医員、自衛隊中央病院眼科医長、荻窪病院眼科部長などを勤めた後の2018年、東京都杉並区内に「うえだ眼科クリニック」を開院。「患者さんを自分の家族だと思う」スタンスの元、日々の診療にあたっている。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医、日本医師会認定産業医、厚労省認定臨床研修指導医、身体障害者認定医。

眼内レンズの種類

眼内レンズの種類

編集部編集部

白内障手術で使用する眼内レンズには、どんな種類があるのですか?

上田至亮医師上田先生

眼内レンズには、公的保険の適用となる焦点が一つの「単焦点眼内レンズ」と、老眼矯正用に使用され複数の焦点を持つ「多焦点眼内レンズ」があります。

編集部編集部

では、単焦点レンズにはどんな種類があるのですか?

上田至亮医師上田先生

単焦点レンズは、焦点が一つであるため基本的には一種類です。しかし、レンズの度数を設定することで、手元を見えるようにするのか、中間距離を見えるようにするのか、遠くを見えるようにするのかを設定することができます。いずれの場合にも、挿入したレンズに合わせて、適宜眼鏡を使用する必要があります。

編集部編集部

では、多焦点にはどんな種類があるのでしょうか?

上田至亮医師上田先生

多焦点レンズには選定療養(保健診療と併用でレンズ代金のみ自費)で使用できる2焦点レンズ焦点深度拡張型(EDOF)レンズ3焦点レンズ連続焦点型レンズがあり、ほかにも完全な自費診療となる5焦点レンズなどがあります。

編集部編集部

それぞれの特徴を教えてください。

上田至亮医師上田先生

2焦点レンズは、その名の通り2つの焦点をもつレンズで、遠方と近方の両方が見えます。近方の焦点設定として50cm、40cm、30cmなどを選択可能です。焦点深度拡張型レンズは、焦点深度が広く設計されているため、遠方から60cm程度まで見えるレンズです。しかし、手元の小さい文字などは見えにくく、状況に応じて眼鏡が必要な場合があります。

編集部編集部

では、3焦点レンズや連続焦点型レンズは?

上田至亮医師上田先生

3焦点レンズは、遠方(5m)・中方(60cm)・近方(40cm)の3カ所に焦点を持つタイプのレンズです。これにより、老眼鏡の使用頻度を減らすことができます。連続焦点型レンズは、2焦点レンズと深度拡張型レンズとを合わせたタイプのレンズです。遠方から近方までを連続して見えるように作られています。また、5焦点レンズは自費のレンズで、より自然に見えることが特徴です。

連続焦点型の「テクニスシナジー」

連続焦点型の「テクニスシナジー」

編集部編集部

近くから遠くまで裸眼で見えるようにしたい場合には、どんなレンズを選ぶと良いですか?

上田至亮医師上田先生

裸眼で近くから遠くまでを見えるようにしたいという場合には、連続焦点型レンズや3焦点レンズ、5焦点レンズを選ぶと良いでしょう。これらのレンズを使用することで、ある程度見えやすくなる効果が期待できます。連続焦点型レンズでは、最新のものに「テクニスシナジー」というレンズがあります。

編集部編集部

テクニスシナジーとはどんなレンズですか?

上田至亮医師上田先生

テクニスシナジーは、ジョンソンエンドジョンソンから発売された連続焦点型の多焦点眼内レンズです。手元約30cmから遠方までを見ることができ、裸眼で0.8以上の視力が出るスペックを持っています。テクニスシナジーは、これまでの2焦点レンズなどに比べ、暗所でも良好なコントラスト感度を保つことができます。そのため、ある程度は薄暗い場所でも文字が読みやすいでしょう。ただし、単焦点レンズと比べるとコントラスト感度が低いと感じる面もあります。

テクニスシナジーのメリット・デメリット

テクニスシナジーのメリット・デメリット

編集部編集部

テクニスシナジーのメリットは何でしょうか?

上田至亮医師上田先生

遠方から手元まで中間距離の落ち込みが少なく見えることに加え、従来の多焦点レンズよりもコントラスト感度の低下が少ないことでしょう。また、3焦点レンズよりも若干近方に強いという特性を持つため、手元の作業が多い方には利便性が高いといえるでしょう。さらに、乱視の矯正にも対応しています。

編集部編集部

デメリットもあるのですか?

上田至亮医師上田先生

どの多焦点レンズにもいえることですが、広い明視域を持つがゆえに、「ハロー・グレア・スターバースト」を完全に予防することはできません。そのため、夜の運転が多いタクシーやバスのドライバーの方などには、注意するように指導しています。また、色のコントラスト感度低下も指摘されているため、色を使う仕事をする方、アーティストや写真家などにも、色のコントラスト低下があるということをお伝えしています。しかし、日常生活レベルでは支障がない程度でしょう。

編集部編集部

ハロー・グレア・スターバーストとは何でしょうか?

上田至亮医師上田先生

ハロー・グレア・スターバーストは、白内障の手術後に生じることがある現象です。夜間の光の見え方に不具合が生じます。光がにじんで見えたり、異常に眩しく感じたりするもので、時間の経過とともに軽減するものの、夜間の運転時などには注意が必要です。これは特に多焦点型レンズを挿入した場合により強く生じることが多いとされていますが、症状の強さには個人差があるようです。

編集部編集部

金額も気になるところです。

上田至亮医師上田先生

テクニスシナジーは、ほかのレンズと比較して高額になります。現在、多焦点レンズは選定療養対象となっており、厚生労働省の認可を受けている施設では、保険診療の手術代金に加えて自費代金として多焦点レンズの代金を支払うことで、手術を受けることが可能です。ただし、それでも通常の保険診療のレンズと比べて高額になることが多いため、金額や視機能への希望を鑑みて、主治医と相談すると良いでしょう。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

上田至亮医師上田先生

連続焦点型レンズを挿入することで、眼鏡を使用する頻度を減らすことが期待でき、裸眼で良好な視機能を得られることが見込めます。これにより、利便性の向上やQOL(生活の質)の向上につながることでしょう。実際に手術を受けた患者さんでも、見えやすさや利便性により笑顔が増えたという方もたくさんおられます。老眼鏡の使用頻度を少しでも減らしたいという場合には、主治医とよく相談し、レンズの特性などを理解した上でテクニスシナジーなどの眼内レンズの挿入を検討されると良いでしょう。

編集部まとめ

近くから遠くまで見えやすくする連続焦点型レンズ「テクニスシナジー」は、従来のものと比較してコントラスト感度が良好で、乱視矯正にも対応できます。しかし、費用が高額であることや、一部の職業の方には注意が必要な面もあるため、メリット・デメリットを考慮し、主治医とよく相談のうえ検討されてみてはいかがでしょうか。

医院情報

うえだ眼科クリニック

うえだ眼科クリニック
所在地 〒167-0022 東京都杉並区下井草3-41-1 パロ下井草2F
アクセス 西武新宿線「下井草駅」徒歩1分
診療科目 眼科

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