白内障手術を受けた直後は、車の運転ができないのはどうして? 免許更新が近い場合はどうすればいい?

公開日:2021/11/25

濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズで置き換える「白内障手術」。はたして、術後の視力はいつ頃から安定してくるのでしょうか。この問題は、運転そのものに限らず、運転免許の更新にも関わってきそうです。そこで、白内障手術の予後について、「みずたに眼科」の水谷先生を取材しました。

水谷武史

監修医師
水谷 武史(みずたに眼科 院長)

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名古屋市立大学医学部卒業、名古屋市立大学大学院医学研究科修了。大学病院や民間病院で臨床を積んだ後の2018年、愛知県名古屋市に「みずたに眼科」開院。「一人ひとりに向き合う診療」をコンセプトとしている。医学博士。日本眼科学会認定専門医。日本眼科手術学会、日本網膜硝子体学会、日本小児眼科学会の各会員。

見えることとは別に存在するモラルの問題

見えることとは別に存在するモラルの問題

編集部編集部

白内障手術は、日帰りが可能なんですよね?

水谷武史水谷先生

可能です。ただし、別日程の事前検査や手術日の予約が必要です。ですから、緊急事態などを除き、予約なしに眼科を訪れてその日のうちに手術が終わるというわけではありません。また、事前検査や既往歴などから、手術そのものを見送らせていただく場合があります。

編集部編集部

手術後はすぐに帰れず、少し休むのはなぜですか?

水谷武史水谷先生

手術という“強いプレッシャー”を受けた後ですから、血圧が上がったりフラフラしたりする可能性があるからです。しかも、手術した方の目に眼帯をしているので、その状態の見え方に慣れる必要があります。そのため、30分ほどは院内で様子を見ます。もちろん、眼帯をつけたままの運転は危険ですから、車での来院をお控えください。

編集部編集部

ズバリ、車の運転は術後の何日目から可能ですか?

水谷武史水谷先生

「見え方に慣れるまで1週間ほどかかる」とご説明していますが、手術翌日には運転に問題ない視力が得られていることが多い傾向にあります。術後視力が良好であれば、推奨はしないものの、翌日からでも運転できるとは思います。そのため、「実際に運転を開始するのは、患者さん自身が新しい見え方に慣れて、安全面で自信を得てから」と説明しています。ただし、手術前に使っていた眼鏡の度数が合わなくなることが考えられます。そうなると、「運転は眼鏡の新調が終わって十分な視力が確認できてから」となります。

編集部編集部

待ってください。手術をしたら裸眼で運転できるのではないのですか?

水谷武史水谷先生

いいえ。全員が裸眼で運転できるわけではありません。そして、術後の裸眼での見え方は、遠方と近方どちらに合わせるかを術前に相談します。眼内レンズを遠方に合わせれば裸眼での運転が可能ですが、その場合、読み書きには老眼鏡が必要になります。反対に、近方に合わせたとしたら読み書きは裸眼で快適ですが、運転には眼鏡が必要となります。

編集部編集部

お風呂とかって入ってもいいのでしょうか?

水谷武史水谷先生

術後2日間は首から下のみにして、なるべく目に水が入らないように気を付けていただき、経過が良好であれば3日目以降は洗顔、洗髪も含め通常の日常生活に戻っていただいていいと説明しています。あとは、ウォータスポーツですが、目に入るのがプールの水か濁った海水かでも異なると思いますが、術後1か月くらいは控えてもらえると安心です。

編集部編集部

仕事面でも影響が出そうですね。

水谷武史水谷先生

仕事については、職場が清潔なオフィスなのかホコリっぽい倉庫なのかでも違ってきますが、内容によっては術当日からでも働ける場合もあります。こうしたライフスタイルについてのお悩みも、担当医とご相談されるといいと思います。

免許更新の通知がきた時点で眼科医と相談

免許更新の通知がきた時点で眼科医と相談

編集部編集部

白内障で免許の更新ができないなんてケースもありますか?

水谷武史水谷先生

その可能性は考えられます。視力低下の原因が白内障であれば手術で治療可能ですが、更新期間ギリギリで視力検査に引っかかってしまうと、後がないですよね。なお、「やむを得ない理由」が認められると更新を6カ月まで後倒しできるものの、想定しているのは「海外滞在や入院」といったケースで、最悪、免許を失効するかもしれません。心配であれば、日程に余裕をもって眼科を受診して、視力が問題ないか確認することをおすすめします。

編集部編集部

更新の1カ月前になって手術を予約するにしても、取れるとは限りませんよね?

水谷武史水谷先生

そうですね。なので、まずは受診していただき、視力検査などで状態を確認しましょう。このとき、「運転免許の更新を控えている旨」をおっしゃっていただければ、検査結果に応じて眼鏡などの処方をアドバイスさせていただくこともできると思います。手術が必要な場合は、可能な範囲で更新に間に合うよう対応させていただきます。

編集部編集部

手術の予約が間に合ったら、もう安心していいですか?

水谷武史水谷先生

運転免許に限っていうなら、割合としては低いですが、新しい見え方に慣れてくるまで時間がかかる場合もあります。また、白内障以外の原因などで、術後免許の更新に必要な視力が出ないことも考えられます。可能であれば、余裕をもって、計画的に眼科を受診するといいですね。あるいは、免許更新時期にこだわらずに、半年前などに余裕をもって手術を受けてしまうというのもいいと思います。

編集部編集部

とはいえ、免許の更新って通知が届いて、やっと思い出せます。

水谷武史水谷先生

そのような場合は、更新通知が届いた段階で、できるだけ早く医師にご相談ください。検査の結果、手術や眼鏡の処方などが一切、不要ということもあり得るでしょう。他方で、運転免許の更新というゴールを設定した「余裕のある手術スケジュール」が組めるかもしれません。もし、間に合いそうにない状況であっても、できることを一緒に考えましょう。

意外な盲点となり得る夜間の運転

意外な盲点となり得る夜間の運転

編集部編集部

白内障用のレンズによっては、光のチラツキなどが出ると聞きます。

水谷武史水谷先生

程度の差はあれど、そのような症状はあると思います。とくに、遠くも近くも見える「多焦点眼内レンズ」で顕著とされています。目に入ってきた光を「遠く用と近く用に分けて屈折させる」複雑な構造のため、自然に起こるチラツキなどが強調されると考えられています。昨今のレンズ性能は改良されてきていますが、それでも100%の防止ができるものではなく、感じ方も個人差があります。

編集部編集部

そうなると、夜の運転で対向車のライトなどが気にかかります。

水谷武史水谷先生

最初は違和感を覚えるかもしれませんが、半年もすれば慣れてくることが多いようです。ただし、まぶしさの感じ方は個人差があり、タクシーやトラックの運転手といった「夜の乗車が多い人」は、慎重に考えたいですよね。あくまで1つの選択肢ですが、多焦点眼内レンズにこだわらなければ、比較的光のチラツキが出にくい「単焦点眼内レンズ」と、見え方を補う「眼鏡」を組み合わせるのも1つの方法です。ただし、どんな眼内レンズがいいかは、それまでの見え方や年齢、ライフスタイル、仕事、趣味、運転の頻度などを考慮する必要があります。

編集部編集部

総じて、他人を巻き込む仕事の場合、十分な配慮が必要だと?

水谷武史水谷先生

そうかもしれません。仕事でなくても、夜間に運転される人も眼内レンズを選択する上で、「安全運転」は1つの基準になると思います。加えて、「単焦点眼内レンズ」の方がシンプルな構造をしているだけに、繊細な色彩感覚を伴う趣味・職業の人には適しているといえるかもしれません。その一方で、眼鏡の依存度を減らしてくれる「多焦点眼内レンズ」の利点や快適さは魅力的で、今後ますます普及していくと思われます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

水谷武史水谷先生

多焦点眼内レンズで夜間の運転ができないのかというと、そこまでの話ではありません。実際、眼鏡に依存しない生活はストレスが少なく快適だと思います。他方で、眼鏡装用に慣れている人にとっては、単焦点眼内レンズの方が良好な視力を得られる場合も考えられます。総じて、誰にでも当てはまるような「これが正しい」という正解はないので、医師とじっくり話し合ってあなたのベストを考えましょう。

編集部まとめ

理論上、視力が回復していれば運転はできます。ただし、そこに「安全を守る」というモラルが関わってきます。万が一の事故を考えると、慣れるまで余裕をもった方がいいように思えます。運転免許の保持を認められている以上、その運用は自己責任で決めるべきでしょう。

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みずたに眼科

みずたに眼科
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診療科目 眼科