耳鼻科のCT検査ではどんな病気が分かるの? レントゲンよりCT検査を受けた方がいい?
CT検査というと、内臓の検査というイメージがありますが、じつは耳鼻科でもCT検査をおこなうことがあることをご存知でしょうか。はたして、耳鼻科のCT検査ではどのような病気を見つけることができるのでしょうか。また、レントゲン検査とCT検査の違いについても知りたいところです。今回は、「山本耳鼻咽喉科」の山本先生に解説していただきました。
監修医師:
山本 一博(山本耳鼻咽喉科 院長)
北里大学医学部卒業。その後、北里大学病院、横須賀市立市民病院、国立病院機構相模原病院などで勤務医として経験を積む。2008年、東京都町田市に「山本耳鼻咽喉科」を開院。北里大学病院、町田市民病院など近隣の医療機関と連携をはかりながら、小さい子どもからお年寄りまで、安心して受診できる環境づくりを心がけている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医。日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、耳鼻咽喉科臨床学会の各会員。
耳鼻科のCT検査とは?
編集部
耳鼻科でもCT検査を受けられると聞きました。
山本先生
そうですね。すべての耳鼻科が対応しているわけではありませんが、CT検査をおこなうクリニックもあるのは事実です。
編集部
なぜ、耳鼻科でCT検査が必要なのですか?
山本先生
鼻と耳の疾患は骨や軟骨が原因で起こることが多く、その状態を確認するにはCT検査が非常に役立つからです。鼻や耳は、骨や軟骨など複数のパーツから形成される空洞の構造になっています。そのため、骨や軟骨の状態を立体化し、より鮮明に映し出すことができるCT検査が有用になるのです。
編集部
一般的なレントゲン検査とCT検査は、どう違うのですか?
山本先生
レントゲン検査は、一方向からX線を当てて撮影するため、画像は2次元になります。一方でCT検査は、体の周囲からX線を当てて撮影するため、3次元の画像に仕上がります。そのため、CT検査の方が患部の状態を立体的に把握できるというメリットがあります。
CT検査の被ばく問題について
編集部
CT検査というと、被ばくの問題が気になります。安全なのでしょうか?
山本先生
耳鼻科で用いるCT検査機器は、通常のCTと異なり、撮影範囲が狭くなっています。そのため、被ばく線量は一般的なCT検査よりも低いため、安心して受けていただくことができます。
編集部
検査時間はどれくらいかかるのですか?
山本先生
撮影自体は1~2分程度で終わります。撮影後、すぐに検査結果を確認することができるので、迅速に治療方針を立てて治療を開始することができるのも、CT検査のメリットと言えるでしょう。
編集部
CT検査によって、どんな病気がわかるのですか?
山本先生
もっとも多く用いられるシーンとして、「副鼻腔炎」の診断があります。副鼻腔炎は、副鼻腔の粘膜に炎症が起こることにより、鼻の粘膜が腫れたり、ドロドロした鼻水が出てきたりする疾患です。
編集部
なぜ、副鼻腔炎の診察でCT検査をおこなうのですか?
山本先生
副鼻腔は4つの部位に分かれています。通常のレントゲンでは一部の状態はわかるものの、すべての部位に炎症が起きているかを確認するのは困難です。その点、CT検査は副鼻腔全体を立体的に見ることができるため、詳細に副鼻腔炎の程度や状態を把握することができるのです。
ほかにも、こんな病気の診断に有効
編集部
そのほかに、どのような疾患でCT検査が活躍しますか?
山本先生
例えば、鼻の骨を折ってしまったときにもCT検査が役立ちます。また、中耳炎や伝音性難聴の場合にもCT検査をおこなうことがあります。中耳とは鼓膜のすぐ内側にあるスペースで、そこで炎症が起きると中耳炎になります。この中耳炎が悪化すると、伝音性難聴といって、音が聞こえにくくなることがあります。中耳は外から診察することができないので、CT検査が役立つというわけです。
編集部
様々な病気の診断に役立つのですね。
山本先生
色々な病気の診断に用いられますが、なかでも圧倒的に多いのは副鼻腔炎の診断です。実際、当院でも「風邪で鼻水が止まらないのですが、もしかして副鼻腔炎ですか?」と来院される患者さんが多いですね。鼻水を調べたり鼻の中を確認したりするだけでは、副鼻腔炎か風邪かをはっきり診断することは医師でも困難です。
編集部
疑いはあっても、確定することはできないのですね。
山本先生
そうです。実際のところ、副鼻腔炎は風邪のウイルスや細菌、アレルギーなどが原因となって発症することが多いのです。副鼻腔の粘膜に炎症が起こり、その炎症によって粘膜が腫れたり、鼻水が止まらなくなったりします。その結果、鼻腔から分泌物や異物を排泄することができなくなり、鼻水や膿が溜まってしまうのです。CT検査をおこなうと確定診断をつけることができますから、迅速に治療へ進むことができます。
編集部
副鼻腔炎の治療は、どのようにおこなわれるのですか?
山本先生
医療機関によって異なりますが、当院の場合は、まずCT検査をおこなって副鼻腔炎であることを確認したら、薬を3~6カ月服用していただきます。その後、再度CT検査をおこなって根治したかどうかを確認します。
編集部
CT検査をおこなうと、その後の治療がスムーズなのですね。
山本先生
はい。従来はCT撮影が必要な患者さんに紹介状をお渡しして、近隣の総合病院でCT検査を受けてもらっていました。しかし、耳鼻科でCT検査をおこなうことができれば、患者さんにそのような負担をかけずに済みますし、迅速に診断・治療をすることが可能になります。もし、副鼻腔炎などで悩んでいるのであれば、CT検査をおこなっている耳鼻科を受診することを検討してみてはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山本先生
近年はインターネットなどで健康に関する情報がたくさん流通しており、「副鼻腔炎だと思うのですが……」とご自分で予想して、受診する人も増えてきました。しかし、副鼻腔炎かどうかはっきりと診断するには、鼻の中をみただけではわかりません。CT検査などの画像診断を受けるのが一番です。鼻水などの主症状を改善するだけならCT検査をおこなわずに薬を服用するのも1つの選択肢ですが、しっかりと診断して治療したいなら、CT検査を受けるのがベターです。「もしかしたら、副鼻腔炎かも?」とお悩みの場合は、ぜひ、CT検査に対応している耳鼻咽喉科に相談することをおすすめします。
編集部まとめ
レントゲン検査と異なり、立体的に患部を映し出すことができる点がCT検査の特徴とのことでした。CT検査をおこなっている耳鼻咽喉科はそれほど多くありませんが、病気によってはCT検査を受けた方が正確に診断できることもあります。そのあたりを含めて、詳しくは担当医師に相談してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒194-0013 東京都町田市原町田5-5-5 1階 |
アクセス | JR・小田急線「町田駅」 徒歩7分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 |