「スローフード」の正しい意味を理解しよう! 日々の食事に関心を持つ
「スローフード」という言葉を時々耳にします。ゆっくりと食事をすることだと考える方も多いと思いますが、それだけではないとのことです。では実際、スローフードとは何を意味する言葉なのか。スローフードの意味や目的、メリットなどについて、「管理栄養士」の岩田さんにお話を伺いました。
監修:
岩田 夏実(管理栄養士)
病院勤務や特定保健指導、離乳食教室、ママ会主催などを経験。今まで出会ってきた方は、育児や仕事が優先で忙しい方ばかり。フリーランス管理栄養士として、ママや忙しい毎日を過ごす方が“生涯健康で笑顔になってほしい”という想いで活動をしている。
「スローフード」を正しく理解する
編集部
スローフードとはなんですか?
岩田さん
スローフードとは、地域に根付いた農産物や食文化を“ゆっくり楽しむ”生活スタイルを守るために始まった運動のことです。現在、160カ国以上に広まっており、「おいしい、きれい、ただしい(good clean fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンにした、国際的な活動となっています。ただゆっくりと食事をするという意味だけではありません。
編集部
どうして、スローフードという考えが広がったのでしょうか?
岩田さん
スローフードという考えは、ローマ中心部にファストフードを代表するマクドナルドが出店することへの反対運動をきっかけに始まりました。ファストフードは、早くて安いため手軽に食欲だけを満たせます。そのため、忙しい毎日を過ごす方にはとても合理的ですね。しかし、生産者の想いを知り丁寧に作られた食材を使って食事することは、消費者が健康に過ごすために大切であり、地球を守ることにも繋がります。だからこそ、ファストフードの対となるスローフードという考えが広がりました。
編集部
日本では、スローフードがどれくらい浸透しているのですか?
岩田さん
2016年にスローフード日本を設立し、スローフード国際本部から正式な承認を受けて活動をしています。日本国内では17の活動団体があり、地域の生産者や料理人、環境活動家から食べることが大好きな人まで、多彩なメンバーが会員として交流をしながら、各地で発信や事業をおこなっています。
スローフード協会の取り組み
編集部
スローフード日本の目的はなんでしょうか?
岩田さん
スローフード日本は、【地球と共にある「おいしい」を守り・育み・次世代に繋ぐ】をミッションに活動をしています。いつも食べている「おいしい」食材を、一つひとつ未来の子どもたちに繋いでいくことはとても大切なことですよね。そのために、地球環境に配慮した農法・漁法の小規模生産者の支援や生産・流通・消費までの食糧を供給するための流れ、国際ネットワークとの連携など食を取り巻く様々な課題に取り組まれています。
編集部
具体的な活動についても教えてください。
岩田さん
活動のひとつに「味の箱船」という世界規模のプロジェクトがあるそうです。各地域の伝統的かつこのままでは消えてしまうかもしれない希少な食材を守る活動をしています。世界中で5000を超える動物や果物、野菜の品種と加工食品、日本でも全国各地の64もの食材が登録されています。登録されている食材は珍しいものが圧倒的に多く、ぜひ食べてみたい食材ばかりです。
編集部
スローフード協会に加入した方がいいのですか?
岩田さん
加入することによって、世界164カ国のメンバーと交流ができ、「食の未来の担い手」として活動がしていけるそうです。しかし、私もスローフード協会に加入はしていません。加入はしていませんが、スローフードを取り入れることはできますし、とても素晴らしいことだと感じています。そのため、私は日常的にスローフードを取り入れています。
できることからスローフードを取り入れる
編集部
スローフードを取り入れることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
岩田さん
スローフードを取り入れることによって、子どもたちの健康を守ることに繋がると確信しています。例えば、消費者が生産者の食材へのこだわりなどの想いを知ることによって、安全性が確かなものになりますよね。また、伝統的な地域の農産物や食文化を知ることで、日々の食事から健康を意識することができます。そして、地域の食材を食べることは、地球にもやさしいですね。
編集部
反対に、デメリットもあれば教えていただきたいです。
岩田さん
デメリットは、忙しい毎日の中に取り入れることが大変ということです。ファストフードなどに慣れている私たちは、食生活を変えるのは大変です。しかし、スローフードで味を楽しめたり余裕のある食事をしたりすることは、それ以上に価値があるものです。少しずつ関心を持ち、できることから取り入れていきたいですね。
編集部
スローフードを簡単に取り入れる方法はありますか?
岩田さん
簡単に取り入れる方法は、地元の食材を使用することです。また、食のイベントなどに参加するのも良いかと思います。例えば、私は地元の味噌屋さんで手作り味噌を作りに行ったことをきっかけに、毎年友人たちと味噌を作っています。味噌作りは、一人だと大変な作業ですが、友人や子どもたちと炊いた大豆の味見や大豆と米麹の香りをかぎながら楽しくおこなっています。友人たちが「また作りたい」と言ってくれるので、毎年継続して作ることができています。そして何より、農家さんの想いが詰まった食材を使用する手作り味噌は、最高においしいものです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岩田さん
スローフードは、今問題となっている地球環境や忙しい毎日を過ごす私たちが健康でいるために、とても大切な考え方です。地域の生産者たちの想いを知り、日本人にあった伝統的な食材や料理を知ることは、未来の子どもたちの健康を守ることにも繋がります。ぜひ、普段の食に関心を持ち、一人ひとりが毎日の食事を価値あるものにしていただけると嬉しく思います。
編集部まとめ
スローフードは、地球の環境問題や忙しい毎日を過ごす現代人に必要な考え方だということがわかりました。未来の子どもたちのためにもスローフードを取り入れたいですね。普段の食事を振り返り、日常的に地域の食材の購入、週末や年に1回でも地域の食のイベントなどに参加してみてはいかがでしょうか。