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点滴をする目的ってなに? どんなケースで使用するの?

 更新日:2023/03/27

点滴(輸液)」にどのようなイメージをおもちでしょうか。ちょっとした風邪や熱では、飲み薬などをもらって家で安静にすることが多いですが、さらに具合が悪く入院をして治療が必要な場合に点滴をする印象があるかと思います。または、外来で点滴をすると体調がよくなる、特効薬のように感じる人もいるかもしれません。はたして点滴は、本来どのような目的でどのような場面で使われているのか、「看護師」の白石さんにお聞きしました。

白石さん

監修看護師
白石 弓夏(看護師)

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小児科病棟で4年間、整形外科、泌尿器科・糖尿病内科などの混合病棟、個人病院などで看護師としてトータル10年以上従事。病院以外の働き方として、保育園やツアーナース、老人福祉施設などで派遣経験あり。現在は整形外科病院、小児科クリニックで非常勤をしながら、看護師の経験を活かしてライター活動中。

点滴の目的は主に4つ、点滴が必要になる状態とは?

薬品の水滴で波紋が発生した水面

編集部編集部

そもそも、点滴をする目的はなんですか?

白石さん白石さん

点滴の目的は、大きく4つあります。主に「①身体の水分、電解質の補充」、「②栄養補給」、「③毒物の排泄や副作用の軽減」、「④薬物を投与する手段」として使用されています。

編集部編集部

それぞれ具体的に、どのような状態で点滴が必要になるのでしょうか? 「①身体の水分、電解質の補充」からご解説お願いします。

白石さん白石さん

水分や電解質の補充でイメージしやすいのは、嘔吐や下痢、発熱時などでしょうか。人間の水分量は成人男性で体重の約60%、子どもでは70~80%と言われています。身体の水分が失われることによる脱水症状を改善するために、点滴をして水分や電解質を補います。患者さんがこまめに口から水分が摂れていれば問題ありませんが、具合が悪い際、なにも口にできなかったり、水分を摂ることで嘔吐や下痢を引き起こしたりするので点滴を使用します。

編集部編集部

電解質の補充はどういうときに必要なのですか?

白石さん白石さん

例えば、入院して手術をする際、全身麻酔下で胃の中を空にするため、食事や水分を一時的に制限しています。しかし、そのままでは身体が脱水状態に陥ってしまうので、点滴をして水分や電解質のコントロールをおこなっています。ここでの点滴は、水分のみを補充しているのではなく、電解質といわれるナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの筋肉細胞や神経細胞の働きに関わる成分が含まれた点滴を投与します。入院中、24時間持続的におこなう点滴はこのような目的があります。

栄養補給や毒物の排出、投薬など、さまざまな役割がある

点滴を受ける女性の手を握る医療関係者

編集部編集部

「②点滴での栄養補給」は、どういった場面でおこなうのでしょうか?

白石さん白石さん

胃や大腸などの消化管の病気や手術、がん治療の副作用などによって食事が摂れなくなってしまった場合、口から栄養を摂る代わりに、点滴からエネルギー源となる糖質や脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンなどの補充をおこないます。ちなみに、こうした栄養輸液は、大手の食品企業などが手掛けているものもあります。

編集部編集部

「③毒物の排泄や副作用の軽減」を目的とした点滴とは、どういうことなのでしょうか?

白石さん白石さん

毒物を飲み込んでしまった場合や、大量に薬を内服する急性中毒の治療法として、緊急で点滴をして排泄を促す方法があります。それと同時に、排尿を促進させる利尿薬を投与することもあります。

編集部編集部

最後の「④薬物を投与する手段」としての点滴とは?

白石さん白石さん

利尿薬もそうですが、ゆっくりと薬を投与するときの点滴です。また、緊急時にほかの薬剤を投与する目的で、あらかじめ点滴の針を入れる血管を確保することがあります。4つの目的で紹介したように、どのような点滴をどのように使うかは医師の診察・判断で看護師がその指示を受けて、実際に投与する流れとなっています。

飲み薬より点滴の方が早く効く!? 点滴が適応される状態とは

机上にあるタブレット型の飲み薬

編集部編集部

点滴を入れると身体が楽になったような感覚があって飲み薬よりも効き目があるイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

白石さん白石さん

飲み薬と点滴では、薬の吸収率や効果の現れ方に違いはありますが、必ずしも「飲み薬は効かない、点滴は効く」というわけではありません。病状によって医師が診察・検査をして、患者さんの状態に合わせて薬剤の選択をします。

編集部編集部

飲み薬との違いはなんでしょうか?

白石さん白石さん

摂取方法はもちろん異なりますが、点滴は血管から直接投与されるので、速やかに全身に回ることが大きな特徴です。たしかに、脱水症状などの場合には、身体が楽になるような実感はあるでしょう。しかし、基本的に点滴は口から摂取できない状態、または緊急で水分や栄養の補充など、血管の確保が必要な状態で適応となります。点滴を特効薬のように捉えている患者さんもいますが、実際のところ、そうではないのです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

白石さん白石さん

どんな病気であっても、点滴をすれば治るというわけではありません。しかし、点滴から飲み薬に変わる場合には、病状が安定している、改善してきている1つの目安にもなります。基本的には、食事や睡眠、運動、休養など規則正しい生活を心がけた上で、点滴は治療のサポートをするというイメージをおもちください。

編集部まとめ

点滴には様々な目的があり、病状や患者さんの状態などに合わせて選択されているとのこと。特効薬として点滴に頼るのは間違いで、まずは自分自身でできる生活改善をしつつ、医師と相談して治療に臨みましょう。

嘔吐、腹痛と下痢に関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

この記事の監修看護師