【大腸カメラ】 検査前の食事制限、注意事項、所要時間などについて専門医が解説
大腸カメラ(大腸内視鏡)は、大腸がんなどの病気を見つけるのにとても役立つ検査です。一体、検査を受けるにあたって、どのような注意点があるのでしょうか? これから大腸カメラによる検査を受ける方のために、お茶の水駿河台クリニック内視鏡センター院長の山田篤生先生に詳しく教えてもらいました。
監修医師:
山田 篤生(お茶の水駿河台クリニック 院長)
山口大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院勤務を経て2021年より現職。大学病院で得た最新の知識と技術を生かして、苦痛が少なく安全で正確な内視鏡検査を提供し、患者の不安を解消できるよう心がけて検査を行っている。日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医。
大腸カメラ(大腸内視鏡)では何がわかる?
編集部
大腸カメラ(大腸内視鏡)とは、どんな検査ですか?
山田先生
大腸カメラ(大腸内視鏡。以下、大腸カメラで統一)とは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部をくまなく調べる検査のこと。高性能のカメラがついた細いスコープを挿入してがんやポリープ、炎症などを見つけます。
編集部
この検査は、どんな時に行われるのですか?
山田先生
主に、大腸の内部に腫瘍がある、または、炎症があると疑われる場合に行われます。たとえば、はっきりとした自覚症状はなくても、便潜血検査で陽性反応が出た場合には、大腸カメラの検査を受けることが推奨されます。そのほか、「血便が出た」「便秘が続く」「下痢が続く」という自覚症状がある場合にも行われます。
編集部
それによってどんな病気を見つけられるのですか?
山田先生
大腸カメラを行うことの目的としてもっとも重要なものに、「大腸がんの早期発見」があります。大腸がんは、がんによる日本人の死亡数のうち、現在男性で第3位、女性で第1位です。そうしたがんを早期発見するにも、大腸カメラによる検査は効果を発揮します。
編集部
ほかにはどのような病気が見つけられるのですか?
山田先生
たとえば大腸ポリープを見つけるのにも有効です。大腸のポリープはたとえ小さいものであっても、その後、大きくなれば大腸がんに進行するリスクがあります。そのため最近では、小さなポリープでも積極的に切除するケースが増えています。ほかにも虚血性大腸炎や大腸憩室症、潰瘍性大腸炎などの疾患を見つけることもできます。
編集部
さまざまな病気が見つけられそうで、ありがたい存在ですね。
山田先生
なかには放置すると深刻な状況になりうるものもあるため、迅速に適切な治療を受けるためにも、大腸カメラによる検査は有効と言えます。
大腸カメラの長所と短所は?
編集部
大腸カメラによる検査の長所を教えてください。
山田先生
なによりも、病変を直接観察することができるということです。高性能の小型カメラを大腸の内部へ挿入するため、医師は大きな画面で大腸の内部をリアルタイムに確認することができますし、場合によっては画像を拡大し、もっと細かく診察することもできます。また病変を見つけた場合には、その場で組織を採取して、病理検査に出すこともできます。
編集部
なるほど、リアルタイムに目で見ながら観察できるのは最大のメリットですね。
山田先生
そのほか、ポリープを見つけた場合にはその場で切除することもできます。大腸の検査には、大腸カメラ以外にも、バリウムを用いる注腸造影検査やCTによる検査などもありますが、それらの場合は観察と治療を同時に行うことができません。
編集部
反対に、大腸カメラの短所はありますか?
山田先生
大腸カメラを受けたことがある方で、「辛かった」と回答された方にその理由を聞いてみると、大半が「事前に下剤を飲まなければならないこと」と回答します。鮮明に画像を診断するには、腸に内容物があっては困るので、検査の前には腸管洗浄剤(下剤)を服用してもらわなければなりません。約2リットル飲んでいただくことになるので、それが辛いという人が多いですね。
編集部
ほかに、短所はありますか?
山田先生
検査中に痛みや違和感が出ることもあります。近年ではカメラの精度がかなり向上し、スコープ挿入時の負担はずいぶん軽減されています。しかし、患者さんによっては、痛みを感じることもあるかもしれません。
編集部
なるほど。大腸カメラは痛みや違和感を伴うことがあるのですね。
山田先生
痛みの原因となりやすいのは、手術歴です。腹部に手術歴があると組織が癒着してしまうことがあり、カメラがスムーズに入りにくくなってしまうのです。また、腸の長さや形は人によって大きく違うので、人によっては苦痛を感じることがあるかもしれません。また、CT検査などに比べて「恥ずかしい」と感じる方が多いのも、大腸カメラの短所といえるかもしれません。
検査を受けるにあたって注意すべきことは?
編集部
大腸カメラの検査時は、鎮静薬を使うのですか?
山田先生
痛みを感じたくない、不安が強いという場合には、静脈内鎮静法(点滴麻酔)を使用することもできます。ただし医療施設によって異なりますので、検査を考えている場合には事前に、医師に相談すると良いでしょう。
編集部
検査はどのような流れで行われるのですか?
山田先生
まずは、検査前夜に下剤をコップ1杯の水に溶かして飲みます。それから、検査当日の朝にも腸管洗浄剤を約2リットル飲み、腸の中をきれいにしてもらいます。トイレを6~10回くらい済ませ、排せつ物が透明な液体だけになったらいよいよ検査がスタートです。
編集部
腸管洗浄剤を飲み始めて、大体何時間くらい経ったら検査ができるのですか?
山田先生
目安として、腸管洗浄剤を飲んで4時間後くらいには検査が可能になります。来院し、検査着に着替えて検査台に横になります。また、消化管のぜん動を抑える鎮痙薬を使います。そして、希望者には鎮静剤の注射をします。
編集部
その後、いよいよカメラが挿入されるのですね。
山田先生
大腸はアコーディオンのようにひだ状になっているので、カメラをそのひだに合わせ、上手に挿入していきます。一番奥の終末回腸・盲腸まで到達したら、観察と撮影をしながらカメラをゆっくり引き抜いていきます。検査が終わったら診察室に来ていただき、撮影した写真をみながら検査結果を説明します。
編集部
大体どれくらいの時間がかかるのですか?
山田先生
前処置の時間を除き、検査自体は10~15分程度で終わります。ただし、ポリープを切除する場合は処置時間がかかります。
編集部
検査を受けるにあたって注意点はありますか?
山田先生
鎮静剤を使う場合、検査後に車やバイクの運転はできないので、公共の交通機関などを利用して来院してください。また、検査前日は20時までに夕食を済ませていただきます。当日も朝から食事をすることはできません。なお、腸の中をきれいにして観察しやすくするために、検査の2日くらい前から消化に時間がかかるもの(たとえば海藻類や、繊維の多い野菜など)は控えておいた方が良いでしょう。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
山田先生
「大腸カメラは辛い」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、近年ではカメラの性能も非常に進化しているため、「思ったほど辛くなかった」と言う方もたくさんいます。確かに2リットル余りの下剤を飲むのは大変かもしれませんが、大腸がんなど、重篤な病気を早期発見するには、大変有効な検査です。便潜血検査で陽性反応が出た方はもちろん、血便など排便に異常がある人は、早めに消化器内科を受診して、大腸カメラを受けることをお勧めします。
編集部まとめ
特に女性は「恥ずかしい」と感じがちな大腸カメラ。しかし、大腸がんを見逃すことのリスクを考えれば、大腸カメラの検査を早期に受けておくことは、大いに価値があることです。不安が強い人は点滴麻酔を使うこともできますから、医師に相談してみると良いでしょう。
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診療科目 | 放射線科、一般内科、消化器科 |