【糖尿病の症状】糖尿病は足がなくなる可能性がある? 恐怖の真実を専門医に聞いてみた
副編集長の佐藤あやが、20~30代女性の気になる医療情報を専門医に聞く対談企画。糖尿病内科専門医・渥美義大先生に糖尿病の恐ろしい合併症について徹底解説してもらいました。
監修医師:
渥美 義大(クリニックフォアグループ)
神戸大学医学部を卒業後、日本で初めて糖尿病教育入院を開始した東京都済生会中央病院で研修。その後糖尿病のみならず、総合診療、医学教育に関心があり同院にてチーフレジデント、糖尿病内科スタッフとして勤務。現在は、現役世代の糖尿病など慢性疾患管理の向上のため、質の高く、アクセスの良いかかりつけ医の実現を目指している。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会認定医。
佐藤あや(「Medical DOC」副編集長)
モデル。最新医療に関心が高く、2021年8月から「Medical DOC」副編集長に。YouTubeチャンネル『教えてドクター・Medical DOC』でMCとして活動。一児の母としての目線にも注目。
怖すぎる! 糖尿病の合併症“シメジ”と“エノキ”について
佐藤あや
糖尿病が怖い病気といわれる理由について教えてください。
渥美先生
糖尿病という病気自体は、命に関わるような症状はありません。長く患っていき、合併症を起こすことが、糖尿病は怖い病気と言われる所以ですね。
佐藤あや
糖尿病をきっかけに様々な病気に発展するということですか? 具体的にどのような病気がありますか?
渥美先生
合併症で有名な症状は6つあります。3つのくくりがシメジといいまして、
シ……糖尿病神経障害
メ……糖尿病網膜症
ジ……糖尿病腎症
この3つがシメジと言われています。
佐藤あや
それぞれどのような病気になりますか?
渥美先生
シメジのシが糖尿病神経障害で、糖尿病を患ってから3~5年ぐらいで手や足の指先が痺れたり、感覚が分からなくなったりすることがあります。血糖値が高い状態が続き、ダメージを受けることで症状が出てきます。症状が進むと痛みを感じなくなるので、怪我をしたり化膿して腫れ上がったりしても気づかず、最悪な場合は、足や手、指を切断しなくてはいけない状況になるので非常に怖い病気ですね。
佐藤あや
1つ目からとても怖いですね……。
渥美先生
シメジのメは糖尿病網膜症と言います。目の奥には細い血管が多くあるのですが、高血糖の状態が続きダメージを受けてしまうと、目の血管から出血が起こり網膜剥離を発症します。
場合によっては失明に至り、日本でも糖尿病網膜症は失明の原因3位になっている非常に怖い病気です。
佐藤あや
3つ目の糖尿病腎症についても教えてください。
渥美先生
糖尿病腎症は腎臓の病気ですね。腎臓も血管が多く、血流が豊富な臓器で高血糖の状態が続きダメージを受けると、徐々に腎臓の機能が悪くなります。腎臓は汚いものを排出し尿を作っているのですが、排出機能が悪くなると尿が出なくなってしまいます。糖尿病腎症になると、「血液透析」を週に3回、3~4時間ほど受けて過ごす生活を強いられてしまいます。血液透析を受けなくてはいけない理由として、糖尿病は今一番多いので侮れない病ですね。
佐藤あや
血管が通っている部分が危ないということだと思いますが、ほとんど通っていますよね……。
渥美先生
はい。ですので、全身に影響が出ます。また、エノキといい、シメジに比べると脳や心臓など身体の太い血管がダメージを受けた場合に起こる病気もあります。
佐藤あや
エノキの3つについても教えてください。
渥美先生
エ……壊疽(えそ)
ノ……脳梗塞
キ……虚血性心疾患
の3つです。
壊疽は血液が通らなくなり皮膚や皮下組織などが死滅してしまう病気で、脳梗塞は脳の血管がつまってしまい脳の細胞が死んでしまう病気です。虚血性心疾患は心臓の血管が塞がることで胸が痛くなってしまうなど、心臓に大きなダメージが出る非常に怖い病気となっています。
足の切断になるには、どのくらい期間がかかる?
佐藤あや
足の切断が怖いのですが、急に切断しなくてはいけない状態になるものなのでしょうか?
渥美先生
糖尿病になってから3~5年ぐらいで、糖尿病神経障害は発症するといわれますが、足を切断することは多くはありません。血管が脆くなって、菌の感染に弱くなったり、怪我を治す力が弱くなったりしている状態が長い患者さんに多いですね。例えば、糖尿病神経症の方が足を怪我し、処置を誤ってしまいますと、切断しなくてはいけない状態になることもあるので、糖尿病の方は傷の処置を注意深く行う必要があります。
佐藤あや
糖尿病と自分がわかっている人も怪我に注意しながら生活するということですか?
渥美先生
足の怪我や小さい怪我でも注意していただきたいと思います。
佐藤あや
処置を正確に行えば問題ないということですか?
渥美先生
傷が小さいうちに対処すれば問題ないことが多いですね。
佐藤あや
ほかにも症状はありますか?
渥美先生
神経障害の症状ですと、便秘が悪くなったり、男性の場合は勃起障害を引き起こしたりすることがあります。また、立ち眩みをひどく起こしてしまうこともありますね。あとは、顔の筋肉がうまく動かないこともあるので、本当に幅広い症状が出ます。
佐藤あや
いろいろな症状がありますね……。糖尿病の合併症は長く患っていると発症するとのことでしたが、どのくらいの年月で発症するのでしょうか?
渥美先生
糖尿病を発症してから、シメジの順番で起こります。糖尿病神経障害がだいたい3~5年、糖尿病網膜症が7年、糖尿病腎症が10年ぐらいで起こるとされています。合併症を発症する年数は人それぞれで、だいたい時間をかけて進行していきます。
佐藤あや
結構、期間が空くのですね。
渥美先生
しかし、糖尿病は自覚症状がないので、診断を受けた段階で重症な方もおりますので個人差はあります。
糖尿病予備群と妊娠糖尿病について
佐藤あや
糖尿病予備群というものについても教えてください。
渥美先生
血糖値ヘモグロビンA1Cの値が糖尿病の患者さんほど高くはないのですが、正常値とは言えないような、糖尿病に一歩手前な状態のことを言います。
佐藤あや
具体的に予備群といわれる方に多い特徴を教えてください。
渥美先生
体格がいい方や、不摂生をされている方などが多いですね。意外に注意したほうがいいのは、妊娠した女性ですね。妊娠中に「妊娠糖尿病」になってしまった方はそのまま糖尿病になりやすくなっています。出産後も血液検査を続けてほしいのですが、通院できないことも多く、糖尿病に進展してしまう場合があります。
佐藤あや
妊娠糖尿病は出産したら一度治ったような感覚があると思いますが、その後も注意が必要ということですか?
渥美先生
ほとんどの方は治りますが、中には数年後・数十年後に発症する方もいらっしゃいます。家事や育児で忙しくなると、健康診断にも行けませんから、その間に進行して、重症になってから見つかる方もいますので気をつけていただきたいポイントです。お勤めしている方は、会社の健康診断は欠かさず受けていただきたいですね。
佐藤あや
先生のお話でなぜ糖尿病が怖い病気といわれているのか理解できました。ありがとうございます!