【闘病】食事制限を受けながら「食」を振る舞う仕事に就いた女性《クローン病》
体験者プロフィール:
ユズネさん(仮称)
1999年生まれ、兵庫県在住。2016年にクローン病と診断される。難病と付き合いながら、現在はパティシエールとして充実した日々を過ごしている。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
気づけば下痢が1年以上続いていた
編集部
最初に不調や違和感を意識したのはいつですか?
ユズネさん
中学3年生のとき、高校受験のストレス、緊張で、よく整腸剤を飲むようになりました。受験が間近になった頃にはもう毎日のように飲んでいましたが、自分も親も、受験が終わったら飲まなくなると漠然と思っていました。でも、無事に志望校に受かっても整腸剤が手放せず、最初は慣れない高校生活のストレスかと思っていましたが、気がつけば1年以上下痢が続いていることに疑問を抱き病院に行きました。
編集部
受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
ユズネさん
最初は家の近くの小児科に行って薬を貰っていましたが、一向に改善しないので大学病院に行くと、精密検査が必要だと言われました。春休みに合わせて2週間ほど検査入院をし、クローン病だと診断されました。
編集部
クローン病はどのような病気なのでしょうか?
ユズネさん
腸に炎症や潰瘍(かいよう)が起こる、原因不明の病気だと言われました。私の場合はひどい下痢だけでしたが、その他にも血便や発熱など様々な症状があるようです。命を落としてしまうことはないようですが、完治もしない病気で、難病指定されているとのことでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
ユズネさん
完治はせず、症状が落ち着いている寛解期と症状が激しく出てしまう再燃期を繰り返す病気なので、薬で症状を落ち着かせて、寛解期が続く状態を目指していくと言われました。食事に気をつけながら薬を飲み、自己注射する方法を考えてくれました。
お腹を下していただけなのに…難病指定?
編集部
そのときの心境について教えてください。
ユズネさん
初めて聞く病名で実感がなかったです。お腹を下していただけという感覚しかなかったので、難病指定されていると言われてもピンと来なかったし、それほどショックを受けた感覚もありませんでした。ただ、今思えば、その頃は慣れない高校生活に必死でした。授業に出て、部活もしながら自宅でも毎日勉強しており、同時に家庭内でも色々あって、思い出そうとしても実はあまり記憶がないくらい生活そのものがキツかったように思います。
編集部
実際の治療はどのように進められましたか?
ユズネさん
数種類の飲み薬の他に自己注射と食事療法も進めるとのことでした。自己注射がとても怖かったです。また、今の薬で効果があったとしても、だんだん効きづらくなる、とも言われ、それも怖かったです。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください
ユズネさん
生活面では、食べられないものが多くなって、外食に困りました。また、病気になったことでさまざまな困難を感じることも多く、精神的に強くなりました。あと、クローン病と診断されたことが私の中でターニングポイントとなり、高校卒業後は進学はしませんでした。小さい頃からお菓子作りが好きだったので、今はパティシエールとして働いています。食に関する仕事なので、食事制限の多い私には無理かと思ったこともありましたが、今はとても前向きに仕事ができています。
診断されて6年、まだ寛解期になっていない
編集部
クローン病で困難を感じることとはありますか?
ユズネさん
倦怠感がひどくて、長時間の立ち仕事がかなりしんどいときがありました。上司に休憩を取りたいと申し出ると、どうしんどいのかと何度も聞かれて辛かったです。病名は事前に申告してありましたし、「どうしんどいのか?」と聞かれても説明のしようがなく、「立っているのがしんどい」と説明するしかありませんでした。その時の上司の表情や言葉は、今でも忘れることができません。
編集部
病気を理解してもらえないのは辛いですね。
ユズネさん
そうですね。でも、ほとんどの人は病気の話をすると、想像していた以上に気にかけてくれました。外食をするときなども、私の食事制限を考慮してくれる人が多くてうれしかったです。
編集部
今までを振り返ってみて、何か思うことはありますか?
ユズネさん
最初の方は下痢の症状しかなく、病気かもしれないという自覚がありませんでした。今考えるとかなり長い期間お腹を下していたので、もう少し早めに受診できたかなと思います。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
ユズネさん
診断されてから6年目になりますが、一度も寛解期になっていません。薬も徐々に効きにくくなり、自己注射で使っているヒュミラは3年ほど前に倍量になりました。また、その1年後にはイムランという薬も増えました。でも、仕事もしつつ休みの日は出かけますし、充実した日々を送っています。お腹を下す、微熱、倦怠感のどれか、もしくは複数の症状は常にありますが、うまく付き合いながら生活しています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
ユズネさん
クローン病の私が、飲食業界で働くことは不可能だと思っていました。しかし、環境のおかげや努力で仕事も楽しく毎日充実しています。身体を休めるとき、遊ぶとき、仕事をするときのバランスを考えながら、持病を持っている方でも、毎日楽しいと思える人生を過ごせたらいいなと思います。
編集部まとめ
食事制限もある中、小さい頃から好きだったお菓子作りを仕事にしたユズネさん。6年間一度も寛解期にはなっておらず症状は常にある、としながらも「環境や努力で仕事も楽しく毎日充実しています」とのことでした。一方で、以前の自分自身を振り返って、「かなり長い期間お腹を下していたので、もう少し早めに受診できたかな」ともおっしゃっており、自分の体調を客観的に見ることの難しさも感じました。ユズネさん、ありがとうございました。