学生や若者が性の悩みなどを医療の専門家に相談できる、ユースクリニックとは
スウェーデンでは一般的なユースクリニック。10代や20代の若い人たちが、性に関する悩みなどを気軽に相談できる施設です。日本でも少しずつ増えていますが、まだ認知度はそれほど高くありません。一体、ユースクリニックとはどんな施設なのでしょうか? ショコラウィメンズクリニックの木崎院長に、「ユースクリニックとは何?」「どんなことを相談できる?」などじっくり教えてもらいました。
監修医師:
木崎 尚子(ショコラウィメンズクリニック 院長)
東京女子医科大学卒業。川崎市立井田病院・川崎病院で初期研修。東京女子医科大病院産婦人科、国際親善総合病院産婦人科、湘南藤沢徳洲会病院産婦人科、茅ヶ崎徳洲会病院産婦人科などを経て、2021年10月、横浜市都筑区にショコラウィメンズクリニックを開院。古くから薬能があるとされ、また、人を癒やしたりリラックスしたりする効果があるとされるチョコレートのように、ほっとできる空間を提供したいとの思いから、「ショコラウィメンズクリニック」と命名。
スウェーデンで生まれた若者の“駆け込み寺”
編集部
ユースクリニックって何ですか?
木崎先生
スウェーデンで生まれた、若者のための相談窓口です。いわば駆け込み寺みたいな感じで、性に関する相談から日常的な悩みまで、なんでも幅広く受けています。
編集部
どうしてユースクリニックが誕生したのですか?
木崎先生
10代や20代は、体や心に悩みを抱えやすい時期です。心が不安定になることもあるでしょう。しかし「身近に相談できる人がいない」「親や友達には相談できない」といって、一人で悩みを抱えている人も多いはずです。そういう人が気軽に訪れ、専門的なアドバイスをもらえるように設置されたのが、ユースクリニックでした。
編集部
スウェーデンでは、ユースクリニックは普及しているのですか?
木崎先生
同国内に250か所以上のユースクリニックが設置されており、若い人たちの悩みをいつでも受け付けています。基本的に相談料は無料。施設には、いつでも助産師、看護師、臨床心理士、産婦人科医などさまざまな専門家が待機しており、悩みをじっくり聞いてくれます。
編集部
具体的に、どんな悩みを聞いてくれるのですか?
木崎先生
セックスや性感染症、妊娠、生理など、性に関することだけでなく、学校や家庭での悩み、さらにはアルコールとの付き合い方やストレスの対処法など、幅広く扱っています。場合によっては、避妊具を提供することもあります。
日本でも広がるユースクリニック
編集部
日本にもユースクリニックはあるのですか?
木崎先生
スウェーデンには国営のユースクリニックがありますが、日本にはまだそうした施設はありません。その代わり、最近では独自にユースクリニックを設ける施設が増えています。クリニックだけでなく、薬局のなかにユースクリニックを設けているところもあります。
編集部
どんな科目のクリニックが、ユースクリニックを設けているのですか?
木崎先生
性に関する悩みを受けることが多いので、婦人科のクリニックがユースクリニックを開設しているのが一般的です。
編集部
ユースクリニックで相談したい場合、どうすればいいですか?
木崎先生
まずは、自分の地域でユースクリニックを開設している施設を見つけましょう。インターネットやSNSで検索すると便利です。見つかったら問い合わせて、予約が必要か確認しましょう。大抵、予約制となっていて、1回の相談につき30分など時間枠が設けられているところもあります。
編集部
相談は個別に行われるのですか?
木崎先生
基本的に個別相談です。ただし、施設によっては定期的に「オープンユースクリニック」を開催し、グループで相談を受けていることもあります。
編集部
相談は無料ですか? 有料ですか?
木崎先生
スウェーデンは国営なので無料ですが、日本の場合は1回の相談が無料またはワンコイン程度というように、比較的負担の少ない金額が設定されています。
編集部
ユースクリニックへ行くとき、必要なものはありますか?
木崎先生
ユースクリニックは治療や検査を行うところではなく、あくまでも相談するところ。そのため、保険証などは持参しなくても大丈夫です。
編集部
治療ではないので、特に保険証は不要なのですね。
木崎先生
ただし、施設によっては本人確認のために、身分証代わりとして保険証を提示してもらうこともあります。また、当院のユースクリニックの場合、高校生以上の希望者には自費のピルを処方することも可能です。ピル処方の際は学生料金を定めていますので、確認のために学生証の提出が必要となります。
正しい性教育を普及するために
編集部
ユースクリニックを活用することのメリットはなんですか?
木崎先生
安心して、専門家に相談できることです。若い人の場合、産婦人科で相談したいと思っても、内診が不安だったり、保険証が手元になかったりして、受診をためらう人も多いでしょう。そうした場合でもユースクリニックなら安心して相談することができますし、いきなり内診することもありません。相談内容によっては、産婦人科の受診を勧めることもありますが、相談するだけで解決する問題もあるはずです。若い人たちには、ぜひユースクリニックを積極的に活用してほしいですね。
編集部
若い人にとって、婦人科というと敷居が高いイメージがありそうです。
木崎先生
たしかに婦人科というと「敷居が高い」「足を踏み入れるのに勇気がいる」と思う人も多いでしょう。しかしユースクリニックを開設している医師は、誰もが「婦人科の敷居を低くして、気軽に相談できる存在でありたい」と思っています。そのため、無料あるいはワンコイン程度の金額で、気軽になんでも相談できるユースクリニックを開設しているのです。
編集部
相談するのは診察室ですか?
木崎先生
施設によって異なりますが、当院の場合はカフェのようなカウンセリングルームを設け、緊張せず話ができるような空間づくりを大事にしています。
編集部
そういう室内だと緊張せず、リラックスして話せそうです。
木崎先生
当院に来た子たちに話を聞いてみると、想像以上に、性に関する正しい知識を持っていないことが多いのです。それでも性教育の認定講師の資格を持っている看護師や助産師が説明してあげると、きちんと納得し、理解してくれる。気づきを得ることで解消される悩みもあります。ときにはカップルや友達同士で訪れる人もいますから、困ったことがあったら、ぜひ気軽に相談に来てほしいですね。
編集部
ユースクリニックでの相談は、プライバシーが守られるのですか?
木崎先生
どんな相談ごとも、親や友達にバレることはないので安心してください。
編集部
何回でも利用することができるのですか?
木崎先生
施設にもよりますが、何回でも相談することが可能です。ただし、年齢制限を設けている施設もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。ちなみに、当院のユースクリニックは大学生までを対象にしています。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
木崎先生
もともと私がユースクリニックを設置したのは、これまで長く診察をしてきたなかで「10代や20代の頃から苦しんでいた」という女性に多く出会ったから。「もっと早いうちに治療を始めれば、こんなに苦しまなくても済んだのに」と思うこともあります。特に、婦人科疾患は年々若年化しています。どんな小さなことでも悩みがあれば、ぜひ、気軽に相談へいらしてください。もちろん病気のことだけでなく、性に関することや生活全般の悩みも大丈夫。「こんなことを相談してもいいのかな」などと迷わず、カフェでおしゃべりする感覚で、ぜひ足を運んでみてください。
編集部まとめ
SNSやインターネットでも情報は入手できますが、デマが多いのも事実。デマに振り回され、かえって解決が難しくなってしまうこともあります。その点、専門家が正しい知識に基づいたアドバイスをくれるユースクリニックなら安心。困ったことがあったら、どんなことでもユースクリニックに相談をしてみましょう。
医院情報
所在地 | 〒224-0062 神奈川県横浜市都筑区葛が谷10-16-2F |
アクセス | 横浜市営地下鉄グリーンライン「都筑ふれあいの丘駅」の改札を出て目の前 |
診療科目 | 婦人科、産科、予防医療、美容診療、外来手術、ユースクリニック |