ワキガの治し方は種類が豊富、それぞれの治療法や選び方について解説
ワキガで悩んでいる人にとっては朗報かもしれません。ワキガには様々な治療法が確立されており、自分にあった治療をおこなうことで改善することができます。今回は、ワキガ治療の選び方について「市川ひふ科形成外科クリニック」の佐々木先生に教えていただきました。
監修医師:
佐々木 英悟(市川ひふ科形成外科クリニック 院長)
昭和大学医学部卒業。その後、昭和大学形成外科学教室入局、昭和大学大学院医学研究科入学。2016年、千葉県市川市に「市川ひふ科形成外科クリニック」を開院。美容に特化した形成外科診療の経験を活かして、整容面を考慮した皮膚科形成外科の保険診療や、より満足度の高い美容診療をおこなっている。医学博士。日本形成外科学会専門医。
ワキガが起こる原因は?
編集部
まず、ワキガについて教えてください。
佐々木先生
一般的にワキガとは、脇から不快な匂いが出ている状態のことを指します。匂いの原因は脇から分泌される汗が酸化するためです。そのため、運動後や暑い時期などの汗をかきやすい時期にワキガで悩む人が増えます。
編集部
全身から汗は分泌されていますが、なぜ脇の汗だけが酸化してしまうのですか?
佐々木先生
そもそも、人間が汗を分泌するルートは、「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2つです。エクリン汗腺から出る汗はほとんどが水なので、あまり匂いはありません。
編集部
では、ワキガはアポクリン汗腺から出る汗が原因ということですか?
佐々木先生
そういうことです。アポクリン汗腺から出る汗そのものに特別な匂いはありませんが、この汗には脂質やタンパク質、糖質、アンモニアなどの成分が含まれています。これらが皮膚の常在菌によって酸化されることで、独特な匂いを発するのです。
編集部
それでは、アポクリン汗腺から出る汗は、脇に限らず匂うということですか?
佐々木先生
そうなのですが、人間の体でアポクリン汗腺がある部分は限られています。脇のほかには、外陰部や乳首の周り、耳の穴などにも存在します。しかし、たくさんアポクリン汗腺が存在する部位は脇なので、ワキガを気にする人が多いのです。
ワキガの治療法は?
編集部
ワキガは治療できるのですか? 「ワキガは遺伝なので治らない」と聞いたことがあります。
佐々木先生
たしかに、ワキガは遺伝的要素も関係しています。とくにワキガの人が親族にいると、高い可能性でワキガになることが判明しています。とはいえ、ワキガは治らないわけではなく、現在では様々な治療法が確立されています。
編集部
どのように、ワキガの治療をするのですか?
佐々木先生
様々なタイプの治療法がありますが、大きく4つに分けられます。1つ目は、塗り薬を使用して汗そのものの分泌を抑制したり、皮膚の常在菌を殺菌したりする方法です。2つ目は、薬剤を注入することで汗を出づらくする方法。そして3つ目は、手術で汗腺そのものを切除して汗をかかなくする方法です。最後の4つ目は、マイクロ波を脇に照射して汗腺を破壊してしまう方法となります。
編集部
治療法が多くて、どれを選べばいいのか迷います……。
佐々木先生
4つの治療法にはそれぞれ特徴がありますから、ご自身が「ワキガをどれくらい気にしているのか」、「完全にワキガをなくしたいのか」、「匂いが気になるときだけ対処できればいいのか」などの状況に応じて、選択するのがいいと思います。
編集部
そこまで匂いが気にならない軽度のワキガの場合は、どのような治療法が考えられますか?
佐々木先生
軽度であれば、塗り薬で発汗を抑える医療用制汗剤が気軽におこなえていいかもしれません。また、ボトックスを患部に注入して汗腺の機能を一時的に止め、汗腺で汗を発生させないようにする方法も用いられています。
編集部
ボトックスというと、シワの改善に用いるイメージがありました。ワキガの治療にも使われるのですね。
佐々木先生
はい。脇の下にボトックスを注射することで、汗を分泌するための神経がブロックされ、汗が出にくくなります。なお、本来は多汗症の治療に用いられるものですが、ワキガ治療にも効果があるとされています。
編集部
ボトックス治療の効果は、どれくらい持続するのですか?
佐々木先生
だいたい3~6カ月と言われており、手術やマイクロ波の治療と比べるとやや短い印象があります。理由としては、神経には再生機能があるため、特定の神経をブロックしてもまた別のルートで神経が伝達され、汗の分泌が再びはじまってしまうからです。そのため、多汗を伴う軽度のワキガ治療にはボトックスが適していますが、根本的にワキガを治したいという場合は手術やマイクロ波の治療をおすすめします。
ワキガの完全な治し方はある?
編集部
手術によるワキガ治療とは、どのようなものですか?
佐々木先生
現在は、クアドラカッターという機器を使用してアポクリン汗腺を取り除く「皮下組織削除法」という治療法が一般的です。一度、切除すればアポクリン汗腺は再生しないため、長期間にわたって効果が持続します。その一方でデメリットとして、手術後数日間は弾力包帯などで患部を圧迫しなければならないことや切開後に傷跡が少し残ってしまうことなどが挙げられます。
編集部
マイクロ波の治療についても教えてください。
佐々木先生
マイクロ波を患部に当てて、アポクリン汗腺を半永久的に破壊します。当院では、「ミラドライ」という機器で患部にマイクロ波を照射して、アポクリン汗腺を破壊する治療をおこなっています。マイクロ波は傷を残さずにワキガ治療ができることに加えて、ダウンタイムもほとんどないので生活にも影響が出ない治療です。
編集部
ダウンタイムが少ないのは魅力的ですね。
佐々木先生
そうですね。ほかにも、汗腺だけに反応するので安全性が高いということやワキガだけでなく多汗症にも効果を期待できるというのもミラドライのメリットです。
編集部
いずれにしても、様々な治療選択肢があるため、ワキガは治療によって解決できそうですね。
佐々木先生
はい。とくに女性はなかなか他人に相談できず、ワキガの悩みを抱え込んでしまうケースが多いようです。しかし、医療機関で適切なワキガ治療をおこなえば、一度の治療で半永久的に悩みから解放されるということを知っていただきたいです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
佐々木先生
昔と比較すると、ワキガ治療の選択肢は格段に増えています。また、ダウンタイムをほとんど気にすることなく、気軽に受けられる治療もあります。ワキガは生死に関わる病気ではありませんが、匂いが気になると日常生活で不安になったり、イライラしたりすることもあるでしょう。そうしたストレスによって生活の質が落ちることも十分にあり得ます。ぜひ、ワキガで悩んでいる人は、お気軽にご相談ください。
編集部まとめ
制汗剤などで匂いを抑える行為は、そのときだけ効果を発揮する対症療法です。根本的にワキガを治したいと思ったら、クリニックでの治療がおすすめです。治療法も色々あるとのことだったので、自分の状況に合った選択もできるはずです。ワキガが悩みのタネであれば、まずはカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒272-0034 千葉県市川市市川1-3-18 SRビル市川 2F |
アクセス | JR総武線「市川駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科、美容外科 |