冬でもおこる「かくれ脱水」の疑問を理学療法士に聞く
「脱水症」と聞くと暑い夏をイメージしますが、実は冬でもおこる「かくれ脱水」があることをご存知でしょうか。冬の脱水症は、夏に比べて予防意識が低いこともあり、注意が必要です。そこで、冬の「かくれ脱水」の症状や原因について、予防策とあわせて「理学療法士」の中野渡さんに伺いました。
監修:
中野渡慎也(理学療法士)
札幌医療リハビリ専門学校を卒業後、2015年4月より理学療法士として介護老人保健施設で勤務。2019年にはWEBライターとしても活動をスタート。日常の健康や医療に関する疑問を「分かりやすさ」にフォーカスし、理学療法士WEBライターとして活動中。
冬こそ注意したい「かくれ脱水」
編集部
冬でも脱水症が起こるというのは、本当でしょうか?
中野渡さん
一般的に脱水症は、夏に起こりやすいとされていますが、冬でも起こる可能性はあります。また、冬の脱水症は気が付きにくいため、「かくれ脱水」とも言われています。
編集部
どうして寒い冬でも脱水症が起こるのでしょうか?
中野渡さん
冬は空気が乾燥している上に、夏に比べて水分摂取量が減少する傾向にあるためです。また、冬は暖房をかけながら厚着で過ごすことが多いため、気が付かないうちに汗をかき脱水症状を起こしやすい環境でもあるのです。
編集部
かくれ脱水は、どのような症状が出るのでしょうか?
中野渡さん
主な症状には頭痛やめまい、発熱、吐き気、倦怠感、足がつる、食欲不振などがあり、基本的には夏の脱水症と同じです。そして、最悪の場合は、死に至るケースもあるので冬の脱水症も甘くみてはいけません。
かくれ脱水を見抜く7つのサイン
編集部
冬のかくれ脱水を見抜く、身体からのサインはありますか?
中野渡さん
喉の渇きや足のむくみ、尿の色が濃い、普段よりも体温が高い、皮膚にハリが無い、体重が減っているなどが脱水症の初期症状になります。また、普段よりも意識が朦朧として頭が働かないなどの症状も身体からのサインになります。
編集部
高齢者の場合も同じでしょうか?
中野渡さん
基本的には同じですが、高齢者は若年者よりも温度感覚が鈍くなっているため、自覚症状がない場合も多いようです。そのため、まわりの家族が水分摂取量や体調などを把握し管理する必要があります。
編集部
「脱水症かな?」と、感じたらどうしたらいいのでしょうか?
中野渡さん
まずは水分を摂取しましょう。水分補給におすすめなのは、麦茶やスポーツドリンクです。ジュースやコーヒーなどは、必要な栄養素が摂取できず、カフェインに含まれる利尿作用でかえって水分を排出してしまうため注意が必要です。また、薬局などで販売されている経口補水液も、体に吸収されやすい浸透圧なのでおすすめです。
水分補給と加湿で冬のかくれ脱水を防ぐ
編集部
冬のかくれ脱水を防ぐ方法はありますか?
中野渡さん
基本的には夏と同様に、こまめな水分や塩分の補給が大切です。1日1.5リットルは最低限摂取する必要があります。また、水分は冷たすぎると体内への吸収率が低いため、常温で飲むことをおすすめします。さらに、冬は部屋が乾燥しやすく皮膚や粘膜から自然と水分が失われるので、加湿器などを活用し乾燥を防ぐことも大切です。
編集部
高齢者の水分補給で、注意すべき点があれば教えてください。
中野渡さん
高齢者は、若年者よりも喉の渇きを感じにくく、水分摂取量が少なくなりがちです。その場合、ゼリーや水分を多く含む果物などをこまめに摂るのがおすすめです。その際、糖分の摂りすぎには注意してください。また、口頭だけで促すよりも、コップに入れて起床時や食事の時、寝る前などに提供すると効率的に摂取できます。
編集部
脱水症予防におすすめの食べ物はありますか?
中野渡さん
脱水症予防には、水分以外にも塩分やカリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などの栄養素を摂ることが大切です。特に汗をかくことで多く失われるカリウムを多く含む食材である、バナナやほうれん草、トマト、かぼちゃ、納豆などを積極的に摂るといいでしょう。また、脱水予防用の塩分タブレットなども販売されているので、あわせて摂取することで気軽に塩分補給できます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
中野渡さん
夏に比べて、冬の脱水症は軽視されがちです。しかし、症状は夏の脱水症と同様で最悪の場合、死に至るケースもあります。そのため、冬も夏と同様に注意が必要です。また、小さなお子さんや高齢の家族がいる場合は、まわりの家族が症状を確認し、水分摂取量や体調の変化をこまめに確認するようにしてください。
編集部まとめ
冬のかくれ脱水は水分摂取量の減少や塩分などの栄養素が失われることで起こり、暖房の使用や厚着をしているため乾燥で脱水を起こしやすい状況にあることから、夏と同様に注意が必要です。こまめな水分補給と汗で失われやすい塩分やカリウムなどの栄養素を積極的に補給することで、冬のかくれ脱水も予防しましょう。