円形脱毛症の治療を皮膚科医が解説 「原因は?」「自然治癒でもいいのか?」
男女問わず、突如あらわれる円形脱毛症。頭の目立つ部分にできてしまうと、人の目も気になりますし、ストレスになりますよね。なぜ、円形脱毛症ができるのでしょうか。できてしまった場合、どのように対処すれば良いのか。あさかリードタウン皮フ科の小川智広先生に教えていただきました。
監修医師:
小川 智広(あさかリードタウン皮フ科院長)
2011年、東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属青戸病院(現・東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)、自治医科大学附属病院皮膚科などを経て、2020年12月あさかリードタウン皮フ科開設。これまで慈恵医大のいぼ外来、レーザー外来、光線治療専門外来、自治医大の脱毛症外来、腫瘍外来など数多くの専門外来に従事。それらの経験を生かし、手術・処置・レーザー治療も含め、クリニックで提供可能な医療に尽力。年齢問わず気軽に受診できる地域の「かかりつけ医」として親しまれている。
円形脱毛症のさまざまな種類
編集部
円形脱毛症とはなんですか?
小川先生
文字通り、頭髪の一部が円形や楕円形に脱毛する症状のことを、円形脱毛症といいます。1カ所だけにできることもあれば、複数箇所で同時にできることもあり、なかには頭全体に脱毛が及ぶこともあります。
編集部
必ずしも丸く脱毛するわけではなく、脱毛の形状は、人によって違うのですね。
小川先生
そうです。また、脱毛箇所の数も人によって異なります。細かく説明すると、円形脱毛症にはいろいろな種類があります。まず、円形の脱毛が1カ所のものを「単発型」、2カ所以上あると「多発型」となります。特に多く見られるのは「単発型」ですが、これが進行すると「多発型」になるといわれています。
編集部
そのほかにも、円形脱毛症には種類があるのですか?
小川先生
あります。たとえば、脱毛が頭全体に及んでいる「全頭型円形脱毛症」、脱毛が眉毛やまつげなど全身に広がる「汎発型円形脱毛症」、額の上や耳の周りなど頭の生え際が帯状に脱毛する「蛇行型円形脱毛症」があります。
編集部
本当にいろいろな種類があるのですね。
小川先生
脱毛のタイプだけでなく、脱毛の面積で重度を区分することもあります。一般に、脱毛の範囲が頭皮の25%以上になると、重症に分類されます。
円形脱毛症になる原因は、解明されていないことが多い
編集部
そもそもなぜ、円形脱毛症になるのですか?
小川先生
じつは、まだはっきり解明されていないのです。さまざまな説が提唱されていますが、現在、もっとも有力なのが「自己免疫疾患」です。もともと人間には自己免疫の機能が備わっていて、外部からウイルスや菌などの有害な物質が侵入するとそれを攻撃してくれるのですが、その免疫機能に異常が発生し、自分の体の一部分であるにもかかわらず、異物とみなして攻撃してしまうことがあります。円形脱毛症も、この自己免疫疾患が原因ではないかと考えられています。
編集部
「円形脱毛症は、自己免疫疾患が原因」説をもう少し教えてください。
小川先生
異物を攻撃する免疫細胞のひとつに、Tリンパ球というものがあります。これがなんらかの原因で毛根を異物と勘違いし、攻撃してしまうため、円形脱毛症になるのではないかと考えられています。
編集部
なぜ、毛根を異物と勘違いしてしまうのですか?
小川先生
まだ解明されたわけではありませんが、精神的なストレスや、疲労・感染症などによる肉体的ストレス、体質的な素因が原因となって、免疫機能が誤作動してしまうのではないかと考えられています。
編集部
円形脱毛症を繰り返す人もいると聞きます。遺伝や体質と関係しているのですか?
小川先生
これもまだはっきりわかっていませんが、アトピー素因を持つ人は円形脱毛症になりやすいことがわかっています。また遺伝も関係していると考えられています。そのほかにも円形脱毛症になりやすい体質の人は、治療を行ってもまた再発しやすいということも判明しています。
編集部
円形脱毛症ができたら、そのまま放置しておいても大丈夫なのでしょうか? 自然治癒するのでしょうか?
小川先生
円形脱毛症が1カ所だけできる単発型の人は、自然治癒が見込みやすいとされています。しかし、すべての円形脱毛症が自然治癒するわけではなく、なかには治療が難しいものもあります。また、治療を始めるのが遅いと完治までに時間がかかることが多いので、円形脱毛症に気づいたら、早めに皮フ科を受診することをお勧めします。
円形脱毛症の治療や使用する薬
編集部
病院ではどのような治療を行うのですか?
小川先生
年齢や脱毛の範囲によって変わりますが、初期の頃は、飲み薬や塗り薬が中心です。
編集部
どのような薬を使うのですか?
小川先生
よく使われるのはステロイドの塗り薬で、免疫細胞の攻撃を抑える働きがあります。また、頭皮の血流をよくするために、非ステロイドの塗り薬も使います。それから、免疫機能を調整するために、飲み薬を使うこともあります。
編集部
ほかにはどのような治療がありますか?
小川先生
ステロイドを注射することもあります。特に、単発型でなかなか治癒しないという場合には、局所的にステロイドを注射します。また、非常に重症化している場合には、ステロイドを点滴することもあります。
編集部
さまざまな治療法があるのですね。
小川先生
それから、「局所免疫療法」といって、人工的にかぶれを起こし、免疫細胞を毛根から炎症に移動させて、免疫機能を正常に戻す治療も行われます。この治療は、かぶれを起こさせることにより発毛を促すもの。比較的広範囲に脱毛している患者さんに対して行われます。
編集部
広範囲に脱毛している人には、ほかにどのような治療が行われるのですか?
小川先生
エキシマライトや、ナローバンドUVBという光線を患部に当てる治療もあります。これは脱毛した部分に光を当てて、免疫機能の異常を起こしているTリンパ球を抑える治療です。局所免疫療法と光線療法は、脱毛の範囲が広い人や、ある程度経過が長くて治りにくい人、脱毛の個数が多い人などに用いられ、どちらかを選択することが多いですね。
編集部
だいたいどれくらいで治療効果が現れるのですか?
小川先生
円形脱毛症の治療は、じっくり取り組む必要があります。大体の場合、治療期間は半年から1年が必要です。通常は3カ月〜半年経過を見て、その時の状況を見ながら必要があれば治療法を見直すことになります。
編集部
一度治ったら、再発しないのですか?
小川先生
いいえ、再発の可能性は高いので、できるだけ早期に発見し、早めに治療を始めることが大切です。
編集部
円形脱毛症にならないように、日常生活で気をつけることはありますか?
小川先生
遺伝や体質も関係しているので一概には言えませんが、強いていうなら、ストレスをためないことやバランスのいい食事、十分な睡眠などを心がけるようにしましょう。それから、風邪をひくなど、体にストレスを与えることも円形脱毛症の原因になるので、気をつけましょう。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
小川先生
円形脱毛症の治療を行うにあたり、まず、「病院へ行く」ということ自体、ハードルが高いと感じる患者さんも少なくありません。しかし、早期に受診すれば治療も軽いもので済みますから、迷わず受診していただきたいですね。また、長く治療をしているけれどよくならないという人は、治療の強度を上げることが必要かもしれません。ただし、局所免疫療法や光線療法を行っているクリニックは限られているので、セカンドオピニオンを求める時には、そのクリニックがどのような治療を行っているのか、確認してから出かけることをお勧めします。
編集部まとめ
突然、円形脱毛症ができてしまったら、誰もが焦るはず。しかし、「恥ずかしい」などの理由で病院へ行くのをためらっていると、どんどん重症化してしまうことも。軽い治療で済ませたいなら、早期発見、早期治療が肝心。その際には、円形脱毛症のタイプによって治療法が異なるので、正しく見立ててくれる医師を選びましょう。
医院情報
所在地 | 〒351-0005 埼玉県朝霞市根岸台3-20-1 カインズ朝霞店2階 |
アクセス | 朝霞駅東口から<朝02><朝50><志木23>乗車、「宮台」バス停下車し徒歩 |
診療科目 | 一般皮フ科、小児皮フ科、美容皮フ科、アレルギー科 |