【闘病】高次脳機能障害ともやもや病に強い想いで向き合う(2/2ページ)

「理解」まではいかなくても、障がいを「認識」してほしい

編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
阿部さん
どんなにストレスがあっても、タバコだけは絶対にやめろといいます。受傷後のストレスはその比ではありません。そして、辛くみじめな思いを驚くほどするけど、それを乗り越えて、むしろ活かす道を考えるように促します。家庭環境や病気が比ではないほど大変な目に合うけど、逃げること、人を頼ることを覚えれば乗り越えられるから、それを受け入れるように助言します。
編集部
あなたの障がいを意識していない人に一言お願いします。
阿部さん
高次脳機能障害は、誰にでもある脳の認知機能の低下が、ある日を境に一気に起こります。表面的な一部だけを聞いて「わかる」、「私だってよくあるよ」といった安易な共感は、人によって感情を逆撫でするかもしれないので気をつけてください。誰にでも想像できるほど、生半可なことではないと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
阿部さん
リハビリ関係者だけではなく、医療事務の方、医師や看護師も含めた全ての関係者に対して、動けて話せるように見えても、実は助けを求めている高次脳機能障害者がいることを知ってほしいです。健常者に見えるからこそ、助けてほしくても、うまく伝えられない人が実は大勢います。
編集部
もやもや病に関して伝えたい思いはありますか?
阿部さん
もやもや病は、確率は高くないようですが、遺伝する可能性もある病気です。親や兄弟姉妹だけでなく、もっと遠い遺伝の可能性もあるため、避けられないリスクでもあります。私は研究対象の少し特殊な例ですが、しっかりと対策して付き合えば、大事を避けることもできたはずです。遺伝のリスクだけを切り取って、辛い想いをする人がいなくなるように祈ります。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
阿部さん
高次脳機能障害は、事故や脳卒中により、老若男女すべての人に起こり得る障がいです。見た目からは全くわからなくても、少なくとも本人が隠していない障がいに関しては、「理解」まではいかなくても、「認識」と「配慮」していただければうれしいです。自分や自分の大切な人がこの障がいを負った時に、助けになると思います。そんなゆとりのある社会になることを願います。
編集部まとめ
病気に対して強い想いをもって向き合う阿部さん。実態が見えにくいからこそ、病気を認識する大切さを語ってくださいました。闘病する人にとって必要なのは、安易な共感ではなく、理解はできなくても認識しようとする姿勢。見えない病気に対して一人ひとりが認識することで、優しく、ゆとりのある社会になるのではないのでしょうか。

