「子どもにスマホやゲームをやらせすぎると斜視のリスクあり」改めて考えたい保護者としての責任
昨今、目にまつわる病気のなかでも注目されている「スマホ内斜視」。とくに中高生までの世代は、スマホやポータブルゲームをする時間が長い傾向にあります。実際のところ、スマホやゲームは目にどのような悪影響を及ぼしているのでしょうか。「新馬場眼科」の芳賀先生に、この疑問をぶつけてみました。
監修医師:
芳賀 剛(新馬場眼科 院長)
山梨医科大学(現・山梨大学)医学部卒業。その後、山梨大学医学部附属病院勤務医、加納岩総合病院眼科医長、おおたけ眼科古淵医院院長を務める。2016年東京都品川区に「新馬場眼科」を開院。大学病院時代より、一般眼科診療以外に弱視や斜視の診察治療にも注力する。子どもからお年寄まで、地域の人たちがいつでも安心して受診できる眼科を目指している。
スマホやポータブルゲームのやり過ぎで斜視に?
編集部
「スマホやゲームのやり過ぎで斜視になることがある」と聞きました。この話は本当ですか?
芳賀先生
結論からすると、事実です。最近の研究により、「スマホやゲームを長時間使用すると、近視が進むだけでなく、斜視になる可能性があること」が明らかになりました。ここでいうゲームは、据え置き型のゲーム機ではなく、持ち運びができる携帯型ゲーム機のことを指します。なお、「スマホ内斜視」とも言われていますが正式名称ではなく、「急性内斜視」が正しい疾患名です。
編集部
子どもから大人まで、誰もがスマホ内斜視になる可能性はあるのでしょうか?
芳賀先生
最近だと、スマホやゲームをよく使用している小学生くらいから中高生の若者世代に、スマホ内斜視の増加傾向がみられます。しかし、大人だからといって斜視にならないわけではなく、3D映画やVR視聴で頭部に装着するディスプレイなどの使い過ぎにより、斜視になることもあると考えられています。ただし、多くの場合は一時的なものなので、スマホやゲームを中止すれば、自然と治るケースがほとんどです。
編集部
スマホ内斜視のリスクが高まる目安みたいなものってありますか?
芳賀先生
「目とデバイスの距離が30cm未満で、なおかつ4カ月以上にわたって1日4時間以上使用で斜視が発症する」との報告もあります。本を読んだりパソコンを使ったりする時よりも、スマホやゲームをする方が目と画面の距離が近いのではないでしょうか。それが、スマホ内斜視を引き起こす大きな原因となっています。その状態で画面を何時間も見続けると、スマホ内斜視を引き起こしてしまいます。ただし、人によって目の状態は異なるので、先述の報告より利用時間が少ないとしても、注意を怠らないようにしましょう。
「斜視」の原因と仕組み
編集部
スマホやゲームで斜視になることはわかりました。あらためて、斜視についての説明をお願いします。
芳賀先生
片目だけが内側や外側に外れてしまった状態が斜視です。様々な原因がありますが、目の筋肉や神経などの外傷による異常が一般的です。通常、目は筋肉や神経の働きによって動くのですが、傷つくことで異常が起き、目の位置がズレて両目で正しくものを見ることができなくなります。また、両眼視の異常や遠視、遺伝的な問題、糖尿病や脳梗塞が原因となって斜視が起こることもあります。ただし、原因不明なケースも多数存在します。
編集部
両眼視の異常とは?
芳賀先生
両眼視とは、両目で対象を1つの物体として捉える働きのことです。通常、両眼視は生後2カ月頃から発達しはじめ、5歳頃までに完成するとされています。しかし、この期間に機能が発達しなかったり、生まれつき両眼視ができなかったりすると、斜視になってしまいます。
編集部
たしかに、斜視は子どもに多い印象があります。
芳賀先生
そうですね。そのなかで、子どもの斜視に最も多いのが「間欠性外斜視」です。常時、斜視になっているわけではなく、目線がまっすぐに向いている状態とズレている状態が交互に起こります。この間欠性外斜視を改善するには、眼鏡の装用や手術する必要があります。
編集部
子どもの頃だと斜視になるリスクが高いのですね。
芳賀先生
そうですね。スマホ内斜視の話に戻すと、子どもの時期はとくに視覚の感受性が高い時期です。小さなことでも影響を受けやすくなっているので、保護者は時間制限を設けてスマホやゲームで遊ばせるといった工夫が必要かもしれませんね。
編集部
最近では電車や店内などで、大人しくさせるためにスマホやゲームを乳幼児に与える親が増えている気がします。
芳賀先生
子どもの目にとって悪影響なので、控えた方がいいでしょう。まだ目の機能が完成していないうちに長く使わせてしまうと、斜視になる可能性が高まってしまいます。
スマホ内斜視にならないためには?
編集部
スマホ内斜視の対策として、どのようなことが挙げられますか?
芳賀先生
先述したとおり、まずはスマホやゲームの使用時間を制限することですね。「連続して使用する時間は30分以内、最大でも1時間以内」に制限しましょう。それから、画面と目の距離は、必ず30cm以上遠ざけるようにしましょう。
編集部
「目が疲れた時は遠くを見ると目が休まる」と言いますが、スマホ内斜視でも効果がありますか?
芳賀先生
あると思います。目の疲れを感じたらスマホやゲームの使用を中断して、10分くらい遠くを眺めたり目を閉じたりして、休息を与えるようにしてください。
編集部
眼科に受診するサインはありますか?
芳賀先生
普段の生活で視線を移した際、「物が二重に見える」と感じたら要注意です。また、普段から視線が合わなかったり、鏡を見て目が内側に寄ってきたりしたら、一度、眼科に診てもらってください。
編集部
眼科では、何をしてくれるのでしょうか?
芳賀先生
まずは、その人の症状によってアドバイスをさせていただきます。場合によっては、スマホやゲームの使用を控えてもらうかもしれません。それから、症状が軽度であれば、眼鏡でダブりを矯正します。しかし、それでも治らない場合は、手術で目の筋肉の位置を変えることも検討します。そうならないためにも、日常習慣の改善から始めてみてはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
芳賀先生
なかには、スマホやゲームを片時も離せないという人もいるでしょう。しかし、長時間の使用は目にダメージを与えています。対策としては、あらかじめ使う時間を決めておくことですね。幼い子どもがいるなら、なおさらルール化して徹底するのが、親の役目だと思います。また、目の異常を感じたら、早めに眼科を受診してください。とくに、子どもは異常を自覚しづらいので、保護者が異変を察してあげることが大切です。早期発見できれば、治療も軽微なもので済みます。
編集部まとめ
スマホやゲームによって斜視は、引き起こされるとのことでした。芳賀先生曰く、斜視を発症したまま放置してしまったため、元に戻らず手術に至る例も増えているそうです。異常を感じたら、早めに診察を受けることをおすすめします。また、毎日スマホやゲームを何時間くらい使用しているかを記録して、現状を把握することから始めてみるのもいいかもしれませんね。
医院情報
所在地 | 〒140-0001 東京都品川区北品川2-23-2 RESIDENCE SHINAGAWA 2F |
アクセス | 京急本線「新馬場駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 眼科 |