大病院には無い強み!? 町の診療所で受ける「CT検査」
健康診断のレントゲン検査で引っかかった際などに、受診が必要になるCT検査。大病院では結果が出るまでに数日から1週間ほどかかりますが、町の診療所では「即日結果が出る」ところもあります。なぜ診療所は結果が出るのが早いのか? 大病院と町の診療所のCT検査は何が違うのか? 「日本医学放射線学会」の診断専門医で、伊藤医院の院長である伊藤省吾先生に話を聞きました。
監修医師:
伊藤 省吾(医療法人社団・伊藤医院 院長)
順天堂大学医学部卒業。1968年から50年以上の歴史をもつ、医療法人社団・伊藤医院の3代目院長を務める。専門分野は内科・放射線科。公益社団法人・日本医学放射線学会診断専門医などの資格をもち、マルチスライスCT検査や認知症スクリーニング検査などの各種検査、筋肉注射による花粉症治療などに通じている。大森医師会所属。
CT検査とはそもそも
編集部
まず、CT検査とは何でしょうか?
伊藤先生
CT検査はレントゲン検査が発展したものです。レントゲン検査は一方向からレントゲンを当てますが、これだと骨に隠れている部分などが見えないことがあります。一方、CT検査は「360度全方向」から撮影します。これで「重なって見えない」部分が少なくなり、細部まで細かく調べることが可能になります。
編集部
360度で撮影することで「見やすく」なるわけですね?
伊藤先生
はい。異常を「発見しやすい」ことに加え、「質の判断」もしやすくなります。「良性か悪性か」などの判断ですね。
編集部
CT検査の費用はどれくらいでしょうか?
伊藤先生
ほとんどの方は、おおよそ「5000円」です(保険診療の3割負担)。しかし、造影剤(画像診断検査をより分かりやすくするために用いる薬剤)を使って撮影を行う場合は「10000円」になります(同条件)。
編集部
造影剤が必要になるケースの割合はどの程度でしょう。
伊藤先生
病院ごとに異なりますが、当院では1割に満たない程度です。
検査結果が出るまでの「スピードの違い」のワケ
編集部
CT検査の結果はいつ頃出るのでしょうか?
伊藤先生
病院によってさまざまですが、当院では撮影から20分後には検査結果を伝えています。
編集部
大病院だと数日から1週間はかかりますが、なぜこれだけ短縮できるのですか?
伊藤先生
大病院は部署が細かく分かれているため、下記のようなステップが必要になります。
①自分の症状の診療科で診察を受ける(内科など)
②CT検査は別部署なので、そちらの予約を取る
③CT検査を行い、放射線科医が読影をして結果を出す
④結果を元に、診療科の担当医師が説明を行う
町の診療所で、一人の医師が「診察・撮影・解析・説明」を全部できる場合、このステップが大幅に短縮されるため、検査時間も短くなるのです。
編集部
大病院だと、即日検査結果をいただくのは難しいでしょうか?
伊藤先生
重い症状など急ぎの場合には、大病院でも即日検査結果を出せます。しかし、間にさまざまな部署が介在している分、20分などのスピード感で結果を出すことは、通常は難しいかもしれません。
編集部
費用は大病院と町の診療所で異なるのでしょうか?
伊藤先生
基本が保険診療のため、違いはほとんどありません。強いて言うなら、1回で全て終わる診療所であれば、繰り返しの診察料がかからない点で、やや負担が減るぐらいでしょうか。
編集部
検査の所要時間はどのくらいかかりますか?
伊藤先生
短いと5分もかからず、長くても10分くらいです。これは撮影自体の時間で、解析に別途20分ほどかかります。合計で25~30分程度というイメージです。
編集部
診察の内容には、違いがあるのでしょうか?
伊藤先生
町の診療所で一人の医師が全てを担当する場合、「一人対一人」という安心感があります。診察・撮影・解析・説明を一人の医師が担当するので、患者さんの体の状態を正確に把握できています。この点は、分業化している大病院にはないものかもしれません。大病院が優れているのは「ほとんどの検査に対応できる」点です。やはり、町の診療所のCTではできない検査もあります。
編集部
町の診療所のCT検査でできない検査とは?
伊藤先生
これは病院の検査機器によって違いがあります。たとえば、当院では冠動脈(心臓)のCTには対応していませんので、心臓のCTが必要と判断した場合は、大病院などを紹介しています。
より的確な診断ができる「診断専門医」
編集部
放射線科の先生は、検査機器を使える技術を備えているものですか?
伊藤先生
医師によって異なります。基本的に、医師としての技術や知識と、検査機器を使いこなす技術は別のものです。肩書でいうと「放射線科医」と「放射線技師」は違うのです。大病院では、機器の操作は技師さんが行ってくれます。そのため放射線科の先生でも、機器の使い方がわからないことは珍しくありません。
編集部
検査から説明まで一人で行うには、医師に「放射線技師」がもつ知識や技術が必要なんですね?
伊藤先生
その通りです。私も大病院にいた駆け出しの頃は、まだ技師的な知識や技術を持っていませんでしたが、放射線技師さんたちから教えていただきました。
編集部
町の診療所の先生がそのような技術をもっているかどうかは、どう判断すればいいのでしょうか?
伊藤先生
医師が「日本医学放射線学会」の「診断専門医」の資格を持っているかどうかは、信頼できる判断基準だと思います。この学会は公益社団法人で、CTなどの放射線検査に関して、国内で最も信頼できる団体の一つです。日本医学放射線学会の場合、まず試験によって「専門医」の認定があります。専門医に認定された人がその後、研修や試験によって「診断専門医」「治療専門医」のいずれかの資格を取得することができるのです。「診断専門医」を取得している医師ほど、より的確な診断を行える可能性が高いと言えます。
編集部
資格の更新は行われているでしょうか?
伊藤先生
この診断専門医の資格は「5年ごとの更新」が必要です。その時点で最新の技術や知識について行けていなければ、更新はできません。このため、新しい技術や知識についても、診断専門医の資格は信頼してもらっていいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
伊藤先生
検査には多くの種類があり、CTはあくまでそのうちの一つです。決して万能な検査ではなく、症状によって適した検査は異なります。「どの検査が適しているか」は当然自己判断ができるものではないため、気になることがあれば、まずは医療機関にご相談いただけたらと思います。
編集部まとめ
私たちが混同しがちな「放射線科医」と「放射線技師」は、必要な能力がまったく異なります。その両者がいる病院、両者の素養を持つ医師がいる病院であれば、最短20分などの短時間で、CTの結果説明を受けられそうです。確かな診断結果をスピーディーに教えてもらいたい場合は、医学放射線学会の「診断専門医」が診察してくれる町の診療所を選ぶという基準を持ってもいいでしょう。
医院情報
所在地 | 〒143-0023 東京都大田区山王1-42-5 |
アクセス | JR京浜東北線「大森」駅北口 徒歩12分 大森駅山王口バス停より乗車、3つ目の「馬込銀座」バス停下車徒歩2分 |
診療科目 | 内科、放射線科、外科、胃腸科 |