検便検査って何を調べているの? 何の病気がわかるの?
検便検査には、「便潜血検査」と「腸内細菌検査」の2種類があります。便潜血検査は主に大腸がんのスクリーニング検査として行われており、年に1回受けることで早期発見につながります。今回は便潜血検査において、検便を採取するときの注意点や結果が陽性だった場合に精密検査を受けることの重要性について、元臨床検査技師で、現在はライターとして活動している吉元さんに解説していただきました。
監修臨床検査技師:
吉元 彩香(臨床検査技師)
熊本保健科学大学衛生技術学科(現・医学検査学科)卒業。大学卒業後、埼玉県の総合病院に就職。主に人間ドックでの検査を担当し、熊本に戻ってからは糖尿病専門病院に勤務。2児の子どもを出産後は、医療の知識を活かしフリーライターとして活動中。医療系記事のほかさまざまな分野でも情報を発信している。
便潜血検査は大腸の病気の早期発見に役立つ
編集部
検便検査は何を調べているのでしょうか?
吉元さん
一般的に人間ドックや健康診断で行われる検便検査は、便潜血検査という便の中に血液が混ざっていないかどうかを調べる検査になります。消化管から大量に出血している場合や肛門付近から出血している場合は、肉眼で便に血液が混じっているとわかりますが、少量の場合は見落とされがちです。便潜血検査では、肉眼で見えない微量の出血でも検出することができます。
編集部
具体的にどんな病気が発見できますか?
吉元さん
便潜血検査で陽性の場合は、大腸ポリープや大腸がんの可能性が疑われます。大腸ポリープとは、大腸内にできるイボのような突起物で、ポリープが大きくなるほど便が通過するときにこすれるため血液が付着します。また、初期の大腸がんは無症状がほとんどですが、自覚症状がないうちから便潜血検査では判定が可能なため、早期発見の指標となっています。
編集部
検査結果が陽性だった場合、どうすればいいのでしょうか?
吉元さん
検査結果が陽性の場合は、さらに詳しく調べるために医療機関を受診してください。精密検査として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が行われます。小さな病変や大腸ポリープであれば検査中に切除することも可能です。その場合、日常生活に大きな影響を与えない日帰り手術が可能なので、早めに受診しましょう。精密検査としては、ほかにも大腸CT検査などを行うこともあります。
編集部
腸内細菌検査とは、どう違うのですか?
吉元さん
腸内細菌検査は、下痢や食中毒の原因となる細菌(サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)が腸管内にいないかどうかを調べる検査になります。便潜血検査が大腸疾患の早期発見に役立つのに対し、腸内細菌検査は食中毒を未然に防ぐため、学校給食従事者や食品製造従事者など、特定の職種の人たちに義務付けられている検査になります。
検便検査の注意するべきポイント
編集部
便の採取や保管方法で気を付けることはありますか?
吉元さん
便は採取したあとの管理方法で検査結果が変わることもあるので、提出当日を含む4日以内に2日分(2回分)を採取し、提出日まではできるだけ冷暗所に保管するようにしてください。本来は、冷蔵庫での保管が理想ですが抵抗がある人も多いでしょう。その場合は、氷や保冷材を入れた紙コップに入れて冷暗所に保管する方法でも問題ありません。
編集部
下痢や生理中の時は採取しない方がいいのでしょうか?
吉元さん
軟便や下痢の場合は、できるだけ便が固まっている部分から採取するようにしてください。ただし、水様便の場合は、採取部分に便が付着せずに検査ができない場合があります。また、生理中の場合は経血が混入して正しい検査結果を得られません。医療機関に相談のうえ、検査日を変更してもらいましょう。
編集部
便を2日分採取するのはなぜでしょうか?
吉元さん
一般的に便潜血方法は2日法という検査方法をとっています。大腸がんの場合、必ずしも毎回、便に血液が混じるわけではないため、日によっては陰性になるケースもあります。少しでも精度をあげ、早期発見につなげるために、便を2日分採取することで発見の確率をあげているのです。
検査結果の重要性について
編集部
検査結果が陽性だったら、必ず大腸がんなのでしょうか?
吉元さん
陽性だからといって、必ずしも大腸がんというわけではありません。大腸ポリープの可能性もありますし、ほかの消化官からの出血や疑陽性というケースも考えられます。とはいえ、検査結果で陽性が出た場合は「大腸がんの可能性」を疑って、必ず精密検査を受けることが大切です。結果的に何もなければ安心できますし、がんであれば早期発見、早期治療につながります。
編集部
血便という可能性はありますか?
吉元さん
血便の場合は、便に血が混ざっているのが肉眼でわかります。痔がある場合は、排便時に血が混ざることがあるため、痔の影響を受けて検査結果が陽性になる可能性もあります。また、下血といって明らかに出血している場合やタール便と呼ばれる黒色の便の場合は、消化管のどこかで出血が起きている状態ですので、症状を申告すると同時にすみやかに病院を受診してください。
編集部
検査結果が陰性だったら安心しても大丈夫でしょうか?
吉元さん
便潜血検査は、主に大腸がんのスクリーニング検査として実施されますが、陰性だからといって大丈夫というわけではありません。近年、日本人の大腸がんリスクは高まっており、特に40歳を超えるとリスクが増加します。「去年大丈夫だったから」と安心せず、年に1回は検査するようにしましょう。
編集部
便潜血検査はどこで受けられますか?
吉元さん
職場の健康診断や人間ドックの検査項目に含まれていることが多いですが、オプションのこともあるため確認してみてください。また、職場などで受ける機会のない方は、自治体が実施している40歳以上を対象にした「大腸がん検診」でも検査を受けることができます。検診費用が公費負担で無料の自治体もあるようですので、しばらく検査を受けていないという方は、各自治体に問い合わせみてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
吉元さん
大腸がんは、40歳を過ぎたあたりから急激に罹患リスクが高まる病気です。また、2019年のがん死亡数のうち、大腸がんが原因で亡くなった人の割合は肺がんに次いで2位となっており、いかに早期発見ができるかが生存率を上げる鍵となっています。便潜血検査は簡単にできる大腸がんのスクリーニング検査です。年1回は検査を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
便潜血検査は主に大腸がんのスクリーニング検査で、早期発見に有用な検査であることがわかりました。検査結果が陽性の場合は、大腸ポリープや大腸がんの可能性が疑われますので、精密検査が必要となります。自身の健康を守るためにも年に1回は検査するようにしましょう。