胃バリウム検査と胃カメラ検査の長所と短所を徹底比較! 何歳から受けるのがベスト?
健康診断などでよく耳にする「胃バリウム検査」と「胃カメラ検査」。自分はどちらを受ければいいのか、何が違うのかと迷う方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、胃バリウム検査と胃カメラ検査のそれぞれの長所と短所について、「臨床検査技師」の吉元さんに詳しく解説していただきました。
監修:
吉元 彩香(臨床検査技師)
熊本保健科学大学衛生技術学科(現・医学検査学科)卒業。大学卒業後、埼玉県の総合病院に就職。主に人間ドックでの検査を担当し、熊本に戻ってからは糖尿病専門病院に勤務。2児の子どもを出産後は、医療の知識を活かしフリーライターとして活動中。医療系記事のほかさまざまな分野でも情報を発信している。
胃バリウム検査の長所と短所
編集部
胃バリウム検査と胃カメラ検査でどのような病気が発見できるのでしょうか?
吉元さん
「胃バリウム検査」と「胃カメラ検査」は、胃がん検診で行われる検査です。がんに限らず胃潰瘍や胃炎、ポリープなど胃の病気のほか、食道や十二指腸の病変の発見も可能です。ただし、精度は胃カメラ検査の方が高く、胃バリウム検査では小さな病変を見つけられないこともあります。
編集部
まずは胃バリウム検査の特徴を教えてください。
吉元さん
胃バリウム検査(上部消化管造影検査)は、バリウムと呼ばれる造影剤を飲んで胃を膨らませ、X線(レントゲン)を連続照射しながら胃の内部を観察する検査です。胃全体にバリウムを行き渡らせるため、検査台の上で体を上下左右に回転させ、さまざまな方向から撮影を行います。バリウムはX線を透過しないため、食道→胃→十二指腸へと通過する様子を確かめることができます。
編集部
胃バリウム検査の長所を教えてください。
吉元さん
バリウムには発泡剤(炭酸)が含まれており、ゲップが出る前に撮影を終える必要があるため撮影時間は短く、5~15分ほどで終わります。また、バリウムを飲むだけなので痛みを伴わない点は長所と言えるでしょう。
編集部
胃バリウム検査に短所はありますか?
吉元さん
検査の前に飲むバリウムの味やドロドロした感じが苦手という人や、胃がムカムカするという人は多いようです。また、X線を使うため妊娠中、または妊娠の可能性がある人、バリウムアレルギー(過敏症)の人は検査できません。
胃カメラ検査の長所と短所
編集部
胃カメラ検査とは、どのような検査ですか?
吉元さん
胃カメラ検査は、別名で上部消化管内視鏡検査と呼ばれ、先端に小型カメラや鉗子口がついた細いチューブを挿入し、食道、胃、十二指腸の内部状態を観察する検査になります。医療機関によって異なりますが、口から挿入する方法(経口)と鼻から挿入する方法(経鼻)があります。
編集部
胃カメラ検査の長所を教えてください。
吉元さん
チューブの先端についたカメラで食道や胃の内部を直接撮影するため、胃バリウム検査に比べてより小さい病変を見つけることが可能です。チューブの先端には鉗子もついており、病変が疑われる場合は細胞の一部を切り取ることもできます。
編集部
胃カメラ検査に短所はありますか?
吉元さん
胃カメラ検査自体は5分前後ですが、麻酔を使用した場合は、麻酔から覚めるまで30分~1時間ほど様子を見る必要があり、診察終了までに時間がかかります。また、麻酔を使用しない場合、慣れていない人はカメラを挿入するときにえずきや吐き気などの嘔吐反応が起きることも多く、苦痛を伴うという人も少なくありません。
何歳から胃がん検診を受けるのがいい?
編集部
胃がん検診は何歳から受けた方がいいのでしょうか?
吉元さん
厚生労働省のガイドラインによると、胃バリウム検査は40歳以上、胃カメラは50歳以上が対象となっており、胃バリウム検査なら年に1回、胃カメラ検査なら2年に1回の検査が推奨されています。がんは40歳を超えると、急激に発症率が高くなります。胃がんの好発年齢は50歳以上ですが、早期発見、早期治療が大切ですので、40歳を超えたら定期的に胃がん検診を受けることをおすすめします。
編集部
40歳未満ならまだ検査しなくて大丈夫でしょうか?
吉元さん
胃がんの中でも、スキルス胃がんは比較的若い20~30代の女性が発症しやすいがんですので、40歳未満だからがん発症のリスクが全くないというわけではありません。また、ピロリ菌は胃がんのリスクを高めることがわかっています。胃カメラ検査を受けてピロリ菌が発見された場合は、除菌治療を受けて将来の胃がんリスクを抑制するなどの対策もとれるため、40歳前に自発的に検査を受けておくといいでしょう。
編集部
胃がん検診はどこで受けられますか?
吉元さん
胃がん検診は、人間ドックや健康診断などで受けることができます。また、胃がん検診の対象である40歳以上の人は、自治体が実施している検診を受けることも可能です。実施時期や費用負担の有無などは自治体によって異なるため、自治体のホームページなどで確認しておくことをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
吉元さん
厚生労働省が示す2020年の人口動態統計によると、胃がんは、男性は肺がんについで2番目、女性は大腸がん、肺がん、すい臓がん、乳がんについで5番目に死亡数が多いという結果になっています。自覚症状がある時点で、かなり進行している可能性が高いのが胃がんです。しかし、早期発見であれば完治する可能性も高いといわれています。早期発見、早期治療のために、40歳を超えたら胃がん検診を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
胃バリウム検査と胃カメラ検査は、両方とも胃がんの早期発見に役立つ検査ですが、より詳しく検査したい場合は胃カメラ検査が適していることがわかりました。40歳以上の方は、胃がんの発症リスクが高まる年代なので、自治体の検診を上手に利用して胃バリウム検査なら年に1回、胃カメラ検査なら2年に1回は検査するといいでしょう。