rTMS療法って、何回も通院しないといけないの?
「うつ病治療のゴール」は、一体どこなのでしょうか。一般に抗うつ薬には「ずっと薬を飲み続ける」というイメージがあります。その一方、磁気の力を利用したrTMS療法には、決まったゴールが望めるのでしょうか。この命題を、「東京横浜TMSクリニック」の大澤先生に伺いました。
※本記事には、一部自由診療の内容が含まれています。
監修医師:
大澤 亮太(医療法人社団こころみ 理事長/東京横浜TMSクリニック 医師)
山梨大学医学部卒業。国際医療福祉大学にて研修後、精神科医療や産業医としての臨床を積む。2017年、神奈川県川崎市に「元住吉こころみクリニック」開院。法人化に伴い「医療法人社団こころみ」理事長就任。現在は「東京横浜TMSクリニック」のほか、川崎市を中心に3院を展開。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医。日本精神神経学会会員。
効果を期待するなら、20~30回の通院が必要
編集部
昨今、うつ病治療に磁気刺激が認められましたよね?
大澤先生
はい。rTMS療法と呼ばれる治療方法がその一例です。磁場そのものによる刺激なのではなく、磁場を介して頭蓋骨を超えて脳内にピンポイントで電気刺激をする治療になります。保険診療でも認められている、エビデンスに基づいた治療方法です。
編集部
1回の単発で受けるものなのでしょうか? それとも、コースが組まれているのですか?
大澤先生
保険適用を前提とすると、「1日40分、週5日、4週から6週間にわたるrTMS療法を実施」で“治療の1クール”としています。しかし、自由診療の場合は、このような制限がありません。医師が「必要」と判断したスケジュールと費用を患者さんにお伝えして、一緒に考えていきます。
編集部
通例なら、1クールで20~30回程度通院すると?
大澤先生
そうですね。治療中の不具合などがみられない限り、初回にご提示したスケジュールはやりきっていきます。およそ10~20回で効果がみられてくる患者さんが多いので、当院では10回ごとを目安に診察して治療効果を伺い、治療継続や変更の判断をしています。効果が認められていたら、30回実施していくことが一般的です。
編集部
なるほど。治療費の支払いは「クール単位」でするのですか?
大澤先生
当院の場合ですが、あらかじめ「決めた回数のチケット」をまとめてお買い求めいただくことで、割引きしています。都度払いも可能ですが、1回ごとの精算だとどうしても治療をフェードアウトしてしまうケースがあるからです。通院をこまめにすることは大変ですが、治療継続していただくことで効果が見えてくる治療法です。
編集部
治療を中断したくなった場合は?
大澤先生
こちらも当院の場合ですが、「途中で治療をやめたい」と申告していただければ、残りのチケット代の7割を払戻しいたします。また、維持療法が必要となる人はご負担が大きくなってしまいますので、当院ではさらに割引価格で提供しています。
スタートからゴールまでの道のり
編集部
rTMS療法を受ける際、初診からの流れについてもお願いします。
大澤先生
はじめに患者さんの症状をヒアリングして、rTMS療法の適応なのかどうかを判断させていただきます。そして、rTMS療法が本当に適切か、ほかの治療選択肢も含めてご説明します。rTMS療法をおこなっていく場合は、心理検査や採血を実施させていただきます。その後、お試しで治療体験をしていただいた上で、これからのスケジュールや費用などをスタッフよりご説明します。
編集部
効き目には個人差があるのですよね?
大澤先生
はい、あります。大雑把にいうと、全体の約7割の患者さんはある程度の改善が得られています。以前のレベルまで良くなっているのを「寛解」といいますが、このうちの約半数になります。効果には個人差がありますが、rTMS療法が効きやすい条件などが少しずつわかってきています。なお、「寛解」は「回復」とは異なり、しばらくは無理せず様子を見ていくことが大切です。
編集部
ということは再発があると? 頓服的な使い方もできるのでしょうか?
大澤先生
たしかに再発はあるものの、rTMS療法は薬物療法よりも再発率は低いといわれています。加えて、薬と併用することで、さらに再発率が低下するとも報告されています。ただし、再発率が低下することはわかっていますが、どのような方法がベストかはわかっていません。再発を防ぐための維持療法が必要かなど、精神科医としての臨床経験に基づく判断が必要となります。
編集部
rTMS療法による「治療のゴール」は、どこに設定しているのでしょうか?
大澤先生
うつ病では、以前と同じレベルでの「寛解」を目指します。再発のしやすさは患者さんによっても異なるので、必要に応じて維持療法をおこなっていきます。他方、強迫性障害にもrTMS療法の適応が認められているのですが、そのゴールは「30%以上の改善効果」とされています。こちらは「Y-BOCS」という強迫性障害の評価尺度を用いて評価します。
rTMS治療を有効にするための工夫
編集部
rTMS療法を受けている間、自宅で気をつけることはありますか?
大澤先生
rTMS療法に直接関係することは、「アルコールを控えること」です。アルコールは脳の働きを抑えてしまうので、rTMS療法の効果が弱まってしまいます。あとは、rTMS療法に限らないことですが、規則正しい生活習慣を守っていただくことです。
編集部
通院を考えると、職場への説明や理解も求められそうですね。
大澤先生
そうですね。最低でも週に2回は通院いただかないと、適切な治療がおこなえません。土日のどちらかと、もう1日平日での通院が必要となってしまいます。最短だと2週間で治療が完結しますので、なかには有給をつかって短期集中治療をされる人もいらっしゃいます。短期間で効果が期待できる治療法ですので、職場の理解が進めば、組織の生産性も高まると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大澤先生
サラリーマンであっても2週間くらいなら、長期休暇と有給を合わせて、なんとか捻出できるかもしれません。あるいは可能なら、1カ月ほど休職して治療を優先されてもいいでしょう。rTMS療法は薬物療法と異なり、短期の取り組みで効果が得られるかもしれないない治療法です。早く良くなることで、患者さんの社会的な損失が少なくなることが、私たちの喜びでもあります。
編集部まとめ
rTMS療法の通院期間は、自由診療だと柔軟に対応できます。1日に2回以上の治療も可能で、最短で2週間で治療完結できるとのことでした。10~20回で治療効果が期待できるため、しばらくはコツコツ治療する必要がありそうです。学校のテスト前や休職期限が近い人など、早く効果を期待したい人には向いている治療法といえるのではないでしょうか。
医院情報
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アクセス | JR「武蔵小杉駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 精神科、心療内科 |