便に血が混じっていた…これってどんな疾患が考えられる?
お尻を拭いたトイレットペーパーが“真っ赤”に染まっていたとしたら、誰でも異常に気付きます。しかし、血液の量がわずかで気付けない場合も当然にしてあるでしょう。我々一般人は、この「微弱なシグナル」を見逃しがちです。血便にはどのような病気が隠れていて、それにどうやって気付けばいいのでしょう。「千住・胃と腸のクリニック」の早坂先生を取材しました。
監修医師:
早坂 健司(千住・胃と腸のクリニック 院長)
防衛医科大学校卒業。2020年、東京都足立区に「千住・胃と腸のクリニック」開院。胃と腸の診療を中心とし、高度医療機関との綿密な連携に努めている。日本消化器内視鏡学会認定専門医・指導医、日本消化器病学会認定専門医、日本内科学会認定医・総合内科専門医。日本胆道学会、日本膵臓学会、日本門脈圧亢進症学会、日本肝臓学会の各会員。
便に血が混ざるのはどんな場合なのか
編集部
便に血が混ざるって、どういうことなのでしょうか?
早坂先生
痔のように肛門から出血しているケースと、大腸から出血しているケースがあります。極端に黒い便は、血の色が時間経過で変化しているのかもしれません。おそらく、大腸・小腸よりも口側にある胃や十二指腸から出血しているのでしょう。なお、小腸から出血することもありますが、非常に稀なケースです。
編集部
やはり、怖いのは消化器官内からの出血ですよね?
早坂先生
そうですね。大腸がんがある場合に腫瘍組織は壊れやすいため、そこからじわじわ出血することがあります。便潜血検査は、こうした微小な出血を検出することができる検査です。また、大きな大腸ポリープの場合にも出血することがあります。
編集部
大腸がんだった場合、どんな症状が出ますか?
早坂先生
腫瘍が大きくなると大腸の内腔が狭くなり、便秘やおなかが張った感じがあると思います。液体は狭くなった腸を通過することができるので、下痢をきたすことももあります。なお、便秘と下痢を繰り返すのが典型的な症状ですが、全く症状が出ないこともあります。
編集部
他方、大腸ポリープの場合は?
早坂先生
大腸ポリープは、ほとんど症状が出ません。10mmを越える大きなポリープなどで出血をきたしたり、さらに大きなポリープが腸にはまり込んで腸重積を起こしたりすることもありますが、頻度は稀です。実際は内視鏡検査を実施してみて偶然発見されることがほとんどです。大腸ポリープはがん化することがありますが、内視鏡で切除することでがんを予防できます。
編集部
大腸がんや消化器内のポリープ以外の出血原因は?
早坂先生
頻回の下痢がある場合は「潰瘍性大腸炎」などの炎症性腸疾患が疑われますし、左下腹部が痛む場合は「虚血性腸炎」の可能性も考えられます。総じて、出血は「なにかが起きているサイン」なので、病名を調べるより一刻も早く病院へいらしてください。その方が正確に原因を知ることができます。
便の色に限らず、体調も目安になる
編集部
血便って、便の色から判断するのですよね?
早坂先生
顕血便といって、出血量が多ければ見てわかります。また、出血量が微量な場合でも、便潜血検査をおこなえば陽性になり得ます。便潜血検査が陽性であった場合には「体調に問題ないからいいや」と放置せず、必ず医療機関を受診してください。
編集部
便潜血検査は、どんな病気で陽性になるのでしょうか?
早坂先生
便潜血検査は消化管内の血液成分を検知するので、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肛門のどこから出血していても陽性になります。便潜血検査の一番の目的は大腸がんを発見することですが、胃がんや胃・十二指腸潰瘍、痔、潰瘍性大腸炎などでも陽性となることがあります。
「がんではない」と知ることも受診動機
編集部
受診に結びついたとき、どのように検査していくのでしょうか?
早坂先生
便潜血検査が陽性であった場合は、内視鏡検査で、出血の原因を探っておきましょう。ポリープであれば、内視鏡を使ってその場で取り去ることができます。ただし、その後の定期的な経過観察で、「ポリープの再発」や「ポリープのがん化」を追っておきたいですね。
編集部
経過観察では、便潜血検査と内視鏡検査のどちらが確実なのですか?
早坂先生
ポリープの数や性質から、どちらを受けた方が好ましいのか判断させてください。なお、便秘や下痢、腹部膨満感などの症状が続く場合は、内視鏡検査を推奨します。また、大腸ポリープのほとんどは、便潜血検査で陽性となりません。医師は、こうした特徴をふまえて患者さんにアドバイスいたします。
編集部
内視鏡検査で、ポリープを含めた異常が見られなかったとしたら?
早坂先生
便潜血検査は痔がある場合や便が固くなることによって肛門が一過性に傷ついた時にも陽性になるため、内視鏡検査では全く問題がないこともあります。しかし、健診でおこなう便潜血検査は受けて、陽性であった場合は内視鏡を受けるようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
早坂先生
大腸がんのリスクは、30代後半から年を取れば取るほど増加していきます。とくにポリープが多発している場合は、がんになる可能性が高いとされています。こうしたがんの進行を予防する手段が、内視鏡による定期的な経過観察です。気持ち的にはかなり抵抗のある検査ですが、診断と治療が同時にできる検査なので、40歳を越えたら一度は検討してみてください。
編集部まとめ
血便には、大腸がんのイメージがありますが、それ以外にも様々な疾患が隠れているとのことでした。そして、何十年も使い続けてきた腸にポリープやがんができることがあるということは、さほど不思議なことではないのかもしれません。消化器にもメインテナンスが必要です。
医院情報
所在地 | 〒120-0034 東京都足立区千住1-11-2 北千住Vビルディング1階 |
アクセス | JR、東京メトロ、つくばエクスプレス「北千住駅」 徒歩7分 |
診療科目 | 胃腸科、消化器内科、内視鏡内科、肛門内科 |