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お薬手帳はなぜ必要なのか?【薬剤師が解説】

 更新日:2023/03/27

「お薬手帳はお持ちですか?」。薬局で聞かれる質問に、「持っていくのを忘れてしまう」「なぜ必要なのか分からない」という声も多いようです。個人情報が記載されているので、持ち歩くことに不安を感じる人もいるでしょう。今回はお薬手帳の必要性について、「薬剤師」の渡辺さんに伺いました。

渡辺 るい

監修
渡辺 るい(薬剤師)

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慶應義塾大学薬学部卒業。埼玉県の調剤薬局で勤務の後に、薬剤師としての経験をベースにしたブログ記事の執筆やWebコンテンツ作成に従事。薬や医療について、一般の方にもわかりやすく解説することをモットーに、現在は医療分野をカバーするWebライターとして活動中。

薬の飲み合わせや副作用歴を薬剤師が確認できる

薬の飲み合わせや副作用歴などの確認ができる

編集部編集部

お薬手帳とは、どのようなものなのでしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

お薬手帳とは、これまでに自分が服用した薬の情報を記録するものです。受診した医療機関の名前、日付、処方された薬の名称や用法用量などを記載します。それらの情報がシール形式でプリントされ、お薬手帳に貼り付けるのが一般的です。

編集部編集部

お薬手帳は何のためにあるものなのでしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

患者のデータは薬局内で管理されていますが、ほかの薬局で処方された薬については把握できません。気づかないうちに、効果が重複した薬や飲み合わせの悪い薬を処方してしまう危険性もあります。複数の医療機関にかかっている場合、お薬手帳を提示することで、そのような可能性を避けることができます。また、お薬手帳にはご自身で記入していただきたい情報もあります。

編集部編集部

どんな情報を記入すればいいのでしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

過去に薬を飲んで起きた副作用歴やアレルギー歴、主な既往歴などです。健康診断の記録も貼り付けてあるといいですね。例えば腎臓に負担の大きい薬が処方されたときなどに、その情報を元に医師や薬剤師が確認を行います。

編集部編集部

医師に見せてもいいものなのでしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

お薬手帳は薬局と同様に、病院、クリニックでも提示する必要があります。過去の副作用歴、アレルギー歴、現在服用している薬を医師が確認するためです。

お薬帳を持っていくと薬が安くなる

お薬手帳を持っていくと医療費が安くなる

編集部編集部

お薬手帳を持っていくと調剤の料金が安くなるって本当でしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

はい、安くなります。具体的には「薬剤服用歴管理指導料」が安くなります。「薬剤服用歴管理指導料」とは、薬剤師が患者に安全に薬を服用していただくために必要な情報の収集、分析、管理、記録や薬をお渡しする際の説明に対して支払われるものです。お薬手帳をお持ちいただければ、確認に必要な時間が短縮できるので、その費用が安くなるのです。通常500円のところ、お薬手帳の提示で380円になるので、3割負担の場合の支払額は40円安くなります。

編集部編集部

新しいお薬手帳はどこで作れますか?

渡辺 るい渡辺さん

薬局、ドラッグストアで相談すれば、処方箋がなくても無料で作ることができます。かわいらしいデザインのお薬手帳も増えているので、「どんなデザインがありますか?」と聞いてみると、愛着の持てるものが見つかるかもしれません。

編集部編集部

ほかの薬局で作ったお薬手帳は使えますか?

渡辺 るい渡辺さん

患者の薬に関する情報を一元管理するのが目的なので、ほかの薬局のお薬手帳を使用していただいて構いません。お薬手帳が数冊ある場合は、なるべく一冊にまとめるのが理想的です。

編集部編集部

お薬手帳を忘れてしまったり、失くしてしまったりした時はどうすればいいのでしょうか?

渡辺 るい渡辺さん

忘れてしまった場合は、処方箋の内容が記載されたシールをお渡しする方法と、次回来局時に追加する方法があります。なるべく記録に抜けがないように、患者に合わせた方法でご案内しています。また、失くしてしまった場合は、かかりつけの薬局に相談しましょう。その薬局に残っている履歴から、新しいお薬手帳を作ってもらえると思います。

アプリのお薬手帳も登場し、対応薬局も増えている

アプリのお薬手帳も登場し、対応薬局も増えている

編集部編集部

アプリのお薬手帳の主な機能を教えてください。

渡辺 るい渡辺さん

ほとんどの薬局では、調剤明細にQRコードが印刷されるようになってきています。このコードを読み取るだけで、アプリ内に処方箋の内容が記録されます。基本的には紙のお薬手帳と同じように活用でき、アプリでも「薬剤服用歴管理指導料」は安くなります。アプリの種類によって細かい違いはありますが、服薬アラームや処方箋予約などの機能も充実しています。

編集部編集部

アプリにするメリットはありますか?

渡辺 るい渡辺さん

ページ数の制限がないため、健康診断の結果など多くの情報が一元管理できますし、スマートフォンであれば「持っていくのを忘れた」ということが起きにくいですよね。また、アプリの処方箋予約機能を使えば、写真撮影した処方箋を事前に薬局に送信しておくことで、薬局での待ち時間も短縮できます。ただし、実際に薬を受け取る際には、処方箋の原本が必要になりますので忘れずに持参しましょう。

編集部編集部

アプリにするデメリットはありますか?

渡辺 るい渡辺さん

スマートフォンを直接見せる必要があるので、抵抗感を感じる人も多いようです。ただ、「ワンタイムコード」に対応しているアプリであればスマートフォンを提示していただく必要はありません。「ワンタイムコード」をお伝えいただければ、患者の同意の上で、一時的に薬局のパソコンなどからお薬手帳の記録を確認できます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

渡辺 るい渡辺さん

お薬手帳は医療機関を受診する時にしか持ち歩かないという人も多いようです。しかし、服用中の薬、副作用歴、アレルギー歴といった情報があれば、万が一の事故や災害の時にも役立つので、なるべく常に携帯することをおすすめします。「個人情報だから失くした時が心配」「かさばるから持ち歩きたくない」という場合はアプリという選択肢もあるので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

お薬手帳は自分が使用している薬の情報を一元管理するものだとわかりました。多数の医療機関を受診し、その度に利用する薬局が違っても、お薬手帳があれば安全に薬を処方してもらえます。最近では、アプリの普及も進んでいるようなので利用してみるのもいいですね。

この記事の監修薬剤師