「異常に喉が渇く」のは糖尿病のサイン? 原因と対処法を医師が解説
適度な水分摂取は必須ですが、過度に水分を欲しがるようになっていたら、異変が起きているかもしれません。もしかすると、その喉の渇きは尿で糖分を排出せざるを得ない“緊急事態”によって引き起きているのかもしれません。そこで、体内の糖と水分の関係について、「大場内科クリニック」の大場先生を取材しました。
監修医師:
大場 啓一郎(大場内科クリニック 院長)
昭和大学医学部卒業。昭和大学医学部大学院薬理学講座医科薬理学部門卒業。2014年、神奈川県相模原市に「大場内科クリニック」開院。2016年、法人化に伴い「医療法人社団若葉堂」理事長就任。なんでも相談できる「かかりつけ医」として尽力している。医学博士。日本内科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本ワクチン学会の各会員。
糖は十分にあるのに、体が糖を利用できない状態
編集部
糖尿病になると喉が渇くのは、本当なのでしょうか?
大場先生
はい。糖尿病とは、血液中の糖が増え、それを体内でコントロールできなくなる病気です。水分は糖と結びつきやすいため、過剰な糖が尿の中に排出される際、一緒に水分も体外へ出ていきます。すると、頻回な排尿によって脱水となり、喉が渇きます。それは糖尿病の代表的な自覚症状と言えるでしょう。
編集部
正常時なら、血糖はどのようにコントロールされているのですか?
大場先生
「インスリン」というホルモンの働きにより、筋肉などの細胞は血糖をエネルギー源として取り込むことができます。エネルギーとして消費されずに余った糖は、脂肪などの形で体内に蓄えられます。ところが、高血糖の状態が続くとインスリンの分泌が減り、働きが弱くなってしまうのです。血糖の高い状態が続くと、尿中にも糖があふれて出てきてしまうというわけです。
編集部
結果として糖を排出できていれば、インスリンが少なくても大丈夫なのでは?
大場先生
血糖値が高くなるような生活習慣を続けている限り、糖を排出し続けても状態は改善しないどころか、インスリンの分泌はさらに減り、働きも弱まっていきます。そして、インスリンの働きが弱まることで、筋肉がエネルギー源として血糖を十分に使えなくなり、代わりに脂肪や蛋白質が消費されはじめます。その結果として、体重が減っていきます。ただし、「ダイエットに効果的」とは絶対に考えないでください。糖尿病による弊害の方が、肥満のそれをはるかに上回ります。
編集部
運動不足によって、体内の糖が過剰になることは?
大場先生
筋肉量の減少とともに基礎代謝が少なくなってくると、血糖値は上がりやすくなります。ですから、“太っていないのに糖尿病”という人はいらっしゃいますね。ですが、典型的なのは、糖分の取りすぎで糖尿病になるパターンでしょう。
喉の渇きを覚えたら、体重の変化に注意
編集部
喉の渇きは糖尿病以外でも起こりますよね? それが糖尿病のサインかどうかを知りたいです。
大場先生
スポーツをした後や、飲酒によっておしっこがたくさん出た後などにも、喉は乾きます。ただし、頻尿があって、それを追いかけるように水分を取っているとしたら、糖尿病かもしれません。また、体重の顕著な増減に着目してみましょう。余った糖が脂肪へ変わると太りますし、糖が使えなくて脂肪を燃やしはじめると痩せます。
編集部
ほか、糖尿病ならではの自覚ってありますか?
大場先生
「甘い物が欲しくなる」習性ですね。糖分の過剰摂取を続けると、次第により多くの糖分が欲しくなってしまう一種の中毒症状を引き起こすことがわかっています。また、体内で糖が余っているにもかかわらず、体がそれをうまく利用できていないためでしょうか。糖尿病が進行している際にみられる症状で、悪循環を起こしています。
編集部
もし上記に該当していたら、確信がなくても受診すべきでしょうか?
大場先生
ぜひ、そうしていただきたいですね。糖尿病の早期発見はもちろんですが、「糖尿病ではなかった」という“除外診断”をつけることも大切です。受診と治療は別物と捉え、「自分の体になにかが起きているのか、起きていないのか」を確認しておきましょう。治療の必要性を考えるのは、その後の話です。
勢いがついてからでは、止まりたくても止まれない
編集部
ちなみに、高血糖が続くとどうなるのでしょうか?
大場先生
全身の血管の壁が傷付きます。あくまでイメージですが、「研磨剤の入った洗剤で、ガラスのコップをこすっている状態」に近いですね。血管の老化は誰にでも起こり得ることですが、「より加速させている」のが糖尿病の実態です。
編集部
具体的な影響は?
大場先生
真っ先に影響が出るのは全身の細い血管で、次々と“詰まり”が起きていきます。細い血管が多い目の網膜や腎臓、神経で症状がみられはじめます。具体的には、視力の低下や尿蛋白、局所的なしびれや痛みなどです。
編集部
すぐに命が脅かされることはなさそうですが?
大場先生
そんなことはありません。次の段階として、心臓や脳の血管に障害が起きてくると、心筋梗塞や脳卒中を起こしかねないからです。むしろ、糖尿病の治療で大切なのは、患者さんが心筋梗塞や脳卒中にならないことです。
編集部
健康診断で血糖の異常値が出たら、どれくらい深刻に受け止めるべきでしょうか?
大場先生
糖尿病の進行は例えるとすれば、坂道の転がり方に似ています。初期の緩やかな下りほど元に戻りやすいです。ある程度下ってしまってから治そうとすると、時間がかかりますし、その間の合併症リスクも高まり続けます。来院される人で多いのは、異常値が出ているのに“様子見を数年間も続けてしまった”患者さんです。糖尿病は一生にわたって自己注射や薬の服用を続けることになる可能性もあり得ますから、早めに対処しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大場先生
糖尿病予防でまず求められるのは、食生活や運動を含めた生活習慣の改善です。その人の健康意識を変える必要もあります。ぜひ、糖尿病が軽度なうちから、改善に取り組んでください。また、「良かれと思って間違えていた」パターンもよく見受けられますので、信頼して相談できる医師の指導の下、健康づくりに励みましょう。
編集部まとめ
糖尿病で喉の渇きが起きるのは、血糖値が高い状態が続いて尿中に糖があふれ、尿の回数が増えて脱水状態となるからです。また、血糖値が高い状態が続くとインスリンの分泌が減り、働きも弱まってしまい、体重が減ってしまいます。ぜひ、医師からの正しいアドバイスの下、生活習慣の改善に取り組んでみてください。
大場内科クリニックのホームページにて糖尿病の症状・可能性チェックリストが公開されていますので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
糖尿病の症状チェックリスト-初期症状~末期症状- 目の症状や足の痛みなど(大場内科クリニック)
https://obanaika.com/diabetes/checklist
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