「BMI22が理想的」は本当なの?
肥満の度合いを示す体格指数の1つに「BMI(Body Mass Index)」という計算式があります。算出した数値の低い方から、痩せ型、標準、肥満、高度肥満の4項目に分かれ、それぞれ幅があるものの、一般的な目標値は「22」とされているようです。はたして、その根拠はどこにあるのでしょうか。本当の意味での理想について、「銀座有楽町内科」の山村先生に解説してもらいます。
監修医師:
山村 聡(銀座有楽町内科 院長)
九州大学医学部卒業。昭和大学で助教を勤めたほか、複数のクリニックで糖尿病・内分泌診療に従事。2019年、東京都中央区に位置する「銀座有楽町内科」の院長に就任。治療はもちろん、病気になりにくい体質・健康づくりを提案している。日本内科学会認定内科医、日本旅行医学会認定医。日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本甲状腺学会の各会員。
健康診断結果から得られた統計値
編集部
健康的な身長と体重の指標として、「BMI」が用いられていますよね?
山村先生
はい。BMIとは、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で得られた数値のことです。仮に身長155cmで体重が55kgなら、「55÷1.55÷1.55」ですから、BMIは約22.9となります。
編集部
目標とするような値は決まっているのですか?
山村先生
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、年代によって目標値を変えているようです。18~49歳なら18.5~24.9、50歳から64歳なら20.0~24.9、65歳以上は21.5~24.9となっています。数値の下限に注目すると、年配者ほど上がっていますよね。国は、寝たきり生活にならないため、高齢者ほど“制限をしすぎない”よう投げかけています。
編集部
よく、ピンポイントで「22」がクローズアップされていますよね?
山村先生
それは、30~59歳の日本人男女約5000人の健康診断結果を調べたところ、「各異常値の最も少なかった人のBMIが22だった」からです。つまり、30歳未満と60歳以上のデータは含まれていません。さらに、実際に生活習慣病やがんなどの疾患を抱えた方のデータも加味していませんよね。
編集部
問題は、「健診で異常値が出ない」イコール「理想的」かどうかです。
山村先生
なにが理想的かは、人によるのではないでしょうか。例えば、国立がん研究センターは、BMIと死亡率との関係についても発表しています。それによると、BMI23.0~24.9の間が、死亡率の底値に位置していました。つまり「長生き」を指標とすると、どうやらBMI24あたりがストライクゾーンになってくることが読み取れます。
遠くの理想より、間近な目標
編集部
BMIの指標値を、どう受け止めるべきでしょうか?
山村先生
少なくとも肥満の人は、BMIを下げる努力をした方がいいですよね。ただし、BMI22だと目標が高くなりすぎて、最初から“諦めてしまう”人もいらっしゃると思います。その場合、まずは、体重を「3%、あるいは8%」減らすことに目標を置いてみましょう。それぞれ、血圧や血糖、血液中の脂肪などの改善が報告されている数値です。
編集部
なぜ、「3%と8%」なのですか?
山村先生
統計的に生活習慣病などのリスク減が示されているのは、3%と8%の2ステップです。体重が90kgなら、87.3kgか82.8kgを最初のゴールにしましょう。そこで一息入れてもいいですし、さらに3%か8%の上積みをねらっても構いません。例え3%でも、成功体験ができると、次に続くのではないでしょうか。
編集部
「BMI22」は理想的かもしれないが、減量の現実味に乏しいと?
山村先生
みなさんがモチベーションとして、どう捉えるかですよね。「減っていく手応え」がある人なら積極的に取り入れていただく一方、「最初から無理と諦めてなにもしない」のであれば、別の努力目標を置いた方がいいのではないかと考えます。90kgから5kg痩せると、さすがにまわりの見る目も変わると思います。また、衣服のサイズを変えるといった楽しみも得られるでしょう。
編集部
BMIは、18歳未満の目安が示されていません。
山村先生
成人にのみ用いられる指標がBMIであり、学童児には「肥満度」を用います。細かな計算式は複雑なので省略しますが、男女で別の目標値を定めていて、女児の方が“高く”設定されています。詳しくは、インターネットなどで検索してみてください。
BMI22が唯一絶対の解ではない
編集部
BMI22よりも「痩せた方がいい」ような風潮を感じます。
山村先生
とくに日本人の女性の場合、どちらかというと痩せ型を目指しがちなのかもしれません。しかし、「痩せ型でも、糖尿病の状態に近い健康上の問題がある」ことが、統計的に示されています。つまり、ぽっちゃり型も痩せ型も異なる背景から健康上、同等のリスクがあるということです。とにかく低いBMIを目標とする風潮は、個人的に少し疑問を感じます。
編集部
栄養バランスやストレスも、人生の質に関係してきますよね?
山村先生
はい。BMI22でも、偏食だったり運動不足だったりでは、意味がないですよね。偏食や過度なダイエットが続くと、便秘やお肌の荒れなどを伴いかねません。見た目や数値だけにとらわれることなく、ぜひ、健康の本意について考えてみてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
山村先生
太っている場合、上述のような「実現可能な目標」を目指しましょう。その趣旨は、各種病気の予防です。他方、痩せていて体調が優れないようなことがあれば、最寄りの婦人科や内科へ相談してみてくだい。もしかしたら低エネルギー体質になり、体の臓器が“ガス欠状態”を起こしているのかもしれません。必要に応じて、薬やサプリメントなどで不足した栄養素を補充します。結論として、「22」という数値を絶対視するより、「どうやって健康を維持していくのか、その中身が問われる」ということなのでしょう。
編集部まとめ
健康診断で異常値のなかった人の多くがBMI22だったようです。おそらく各人に、なにかしらの工夫や努力があったのでしょう。問いたいのはその点であり、結果とプロセスを混同しないようにしたいものです。適度な運動、栄養バランスのよい食事、十分な睡眠。これらをおろそかにしたまま数値管理だけをしていては、得られる中身がありません。理想的ともいえないと思われます。
ダイエットに関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
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