訪問リハビリってどのようなサービスを受けられるの? 受けられる対象はどんな人?
高齢者社会である昨今、「訪問リハビリ」という言葉を耳にする機会が増えました。はたして、どのようなリハビリ内容を受けることができるのか。また、どんな人がサービス対象者なのかも気になるところです。年々増加している訪問リハビリを、10年経験されている「理学療法士」の杉浦さんに解説していただきました。
監修理学療法士:
杉浦 良介(理学療法士)
訪問看護・訪問リハビリテーションの10年の経験を元に、全国へ訪問リハを広める活動をしている。現在は、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションの在宅リハビリ統括として医療法人で科長を務める。訪問リハコミュニティ「リハビリコネクト」代表。書籍「リハコネ式! 訪問リハのためのルールブック」編著・監修。訪問リハブログ「リハウルフ」管理者。訪問看護メディア「ビジケア訪問看護経営マガジン」編集長。YouTube「訪問リハ&訪問看護&介護保険【制度マニア】」管理者などで活動中。
訪問リハビリは普段から生活している環境でリハビリが可能
編集部
訪問リハビリって、どんなサービスのことを指すのでしょうか?
杉浦さん
訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が利用者さんの自宅に訪問して、リハビリをお手伝いするサービスです。最大の特徴は、普段から生活している環境でリハビリをするということです。
編集部
訪問リハビリは、どのような医療機関や施設から家に来てくれるのですか?
杉浦さん
大きく2つに分けることができます。1つ目は、病院や介護老人保健施設などからの訪問リハビリテーションです。2つ目は、訪問看護ステーションからのリハビリ専門職による訪問です。それぞれ、医療保険と介護保険がありますが、ほとんどが介護保険のサービスとなります。
編集部
訪問リハビリは、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
杉浦さん
病名や時期、地域、各種保険の負担割合によって異なります。一度の訪問リハビリは40~60分間ですが、例えば自己負担割合が1割の介護保険での訪問リハビリテーションの場合、40分間あたり約600〜900円でサービスを受けることができます。
訪問リハビリは通院が困難な人が対象
編集部
訪問リハビリは、どのような人が対象なのですか?
杉浦さん
訪問リハビリは、原則「通院が困難な人」が対象のサービスとなっています。通院によって、同様のサービスが受けられるのであれば、通所リハビリテーションやデイサービスなどの通いサービスを受けることをおすすめしています。
編集部
通院が困難な人しか受けることができないのでしょうか?
杉浦さん
もし通院が可能である場合も、「通所リハビリテーションのみでは、家屋内における日常生活の自立が困難である場合の家屋状況の確認を含めた訪問」は認められています。例えば、自宅での環境での入浴動作練習や調理練習、外出練習などを指します。自宅でしかできないことがあるのであれば、訪問リハビリの対象といえるでしょう。
編集部
訪問リハビリを受けている人は、どのような疾患の人が多いのでしょうか?
杉浦さん
脳卒中や大腿骨頸部の骨折、腰椎圧迫骨折、腎不全などによる人工透析患者、ALSやパーキンソン病などの神経難病疾患、末期がん、小児疾患など様々な疾患の人が訪問リハビリをしています。
編集部
訪問リハビリを受けられる対象年齢はありますか?
杉浦さん
介護保険における訪問リハビリは、40歳以上で介護保険の要介護1〜5、要支援1〜2の認定を受けた人が対象となります。一方、医療保険では、年齢問わず0歳から受けることが可能です。原則、介護保険が優先となりますが、状況によっては医療保険が優先となる場合もあります。
日常生活動作練習や移動・外出練習などをおこなう
編集部
1回の訪問リハビリはどのような流れで進むのでしょうか?
杉浦さん
まず、リハビリの専門職員がご自宅を訪問し、感染予防のための手洗いをさせていただきます。その後、体温や血圧の測定、全身状態の把握、生活状況の把握などをおこないます。そして、その人ごとに合ったリハビリを提供して、最後に手洗いをして退居となります。
編集部
リハビリの内容は、具体的にどのようなことをするのでしょうか?
杉浦さん
主に、自主練習指導や入浴、トイレ動作、食事などの日常生活動作練習、歩行器やベッドなどの福祉用具の助言、生活環境調整、屋内外の移動練習、外出練習、家族指導などをおこなっています。
編集部
ケーススタディがあれば、教えてください。
杉浦さん
脳梗塞発症後、急性期病院を経て、回復期リハビリテーション病棟を退院した人の事例です。1人で入浴ができるか不安だったため、通所リハビリを利用しながら訪問リハビリを併用し、入浴動作の練習をおこないました。自宅での環境で入浴動作練習を繰り返しおこない、福祉用具を活用して入浴に必要な道具を整えた結果、安全に安心して入浴できるようになったため訪問リハビリが卒業となりました。
編集部
最後に、もう一例くらいあればお願いします。
杉浦さん
進行性の神経難病疾患により、少しずつ身体が不自由になってきている高齢の男性の事例です。自宅で生活していましたが、介助者である妻が介助の仕方が分からずに困ったため、訪問リハビリの利用を開始しました。まずは進行する疾患と闘う利用者さんの心理的支援をしながら、妻に介助方法の指導をしました。そして、少しずつ不自由になる身体に合わせて食事に使用する自助具の提案、ベッドや車椅子の変更の助言、着替えの練習などをおこない、なるべく本人・妻が共に生活しやすい環境を整えながら、豊かな生活を送られるように支援しました。
編集部まとめ
訪問リハビリの対象者や内容について教えていただきました。これから超高齢者社会となり、在宅で生活する人も多くなると予想されています。その際に、自宅で受けられる訪問リハビリというサービスは強い味方になるかもしれません。主に通所系サービスを活用しながら、必要な時には訪問系サービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。