排尿時に膿が出てくる…原因と対策を教えて!
いつもとは違う分泌液が尿に混じっている場合、性感染症を疑うべきでなのでしょうか。もし自分に心当たりがないとしたら、パートナーとの信頼関係を疑いかねない、ナイーブな問題でもあります。しかし、放置して得るものはなにもありません。イザというときのトラブルに対する心構えを、「高田Ysクリニック泌尿器科・内科」の保田先生に教えていただきました。
監修医師:
保田 賢吾(高田Ysクリニック泌尿器科・内科 院長)
筑波大学医学群医学類医学科卒業。横浜市立大学関連基幹病院の泌尿器科勤務を経た2020年、神奈川県横浜市に「高田Ysクリニック泌尿器科・内科」開院。安心安全な満足度の高い医療をモットーとしている。日本泌尿器科学会認定専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、難病指定医、身体障害者福祉法第15条指定医。日本泌尿器内視鏡学会、日本生殖医学会、日本アンドロロジー学会、日本臨床泌尿器科医会の各会員。
1カ月以内の心当たりを探る
編集部
尿道の“膿”について調べたら、性感染症とあったのですが本当ですか?
保田先生
レアケースを除けば、ほとんどの原因は性行為にあるといっていいと思います。例外的に、高齢者などで前立腺に炎症が起きていると、排尿障害や膿を伴うこともあります。そうではなく、比較的若い方でおしっこに困っていないとしたら、感染症から疑っていきますね。
編集部
感染というと、どのような菌なのでしょうか?
保田先生
感染源として最も多いのは「クラミジア」で、その次が「淋菌(りんきん)」ですね。淋菌の場合、感染から発症までの期間が1週間程度と比較的早く、濃い膿が多量に出て、強い排尿痛を覚えます。クラミジアの場合は、発症までの期間が1~3週間と比較的長く、透明に近い膿が少量出る可能性があって、排尿痛も軽いとされています。加えて、淋菌とクラミジア感染の併発を起こしている症例もあります。
編集部
痛みの自覚が伴わない場合もあるのですか?
保田先生
無症状のケースもありますよ。あるいは、性器に違和感や軽度のかゆみを覚えるものの、「受診するまでもない」と考えてしまうパターンですね。もし、パートナーになにかしらの自覚があるとしたら、大抵はご自身も感染しているはずです。
編集部
そのまま放置していると、どうなるのでしょうか?
保田先生
性交渉を通じて、周囲の人に感染させてしまいます。そのような方が一定数いらっしゃるので、なかなか「撲滅」とならないのでしょう。また、菌が前立腺や精巣、腎臓などへ上がっていくことで、前立腺炎や精巣上体炎、腎盂腎炎を起こすリスクもあります。
薬を飲み終えても治療は続く
編集部
菌であれば、抗生剤で治りますか?
保田先生
そうなりますが、淋菌やクラミジアには、それぞれに効く抗生物質が決まっています。通常はどちらの感染であるか予想し治療をおこないます。その後、予想とは違った場合や併発してる場合には、もう一方の治療をおこないます。ただし、腎盂腎炎や前立腺炎のような合併症が余談を許さないケースでは、同時に治療を開始するケースがあります。
編集部
患者としては、いっぺんに治してもらいたいですね。
保田先生
おっしゃるとおりなのですが、抗生物質の多用により菌が“薬への耐性”をもって、効かなくなってしまうこともあるので、できれば別々に治療していきたいです。仮に、すべての菌が耐性をもつと、新薬の登場まで治せなくなりかねません。
編集部
薬というと、患部への塗り薬ですか?
保田先生
注射、もしくは経口薬になります。飲み薬の場合、用量・用法を守っていただかないと効果が期待できません。そのため最近では、1回の投与で済むような薬を使うケースも多いですね。ただし、前述の耐性の問題から、毎日の服用が必要となる薬を処方するパターンもあります。その際は、用量・用法を“厳密に”守ってください。
編集部
おおむね、どれくらいの治療期間が必要なのでしょうか?
保田先生
まずは“1回で済む”薬で様子を見て、それでも効かなければ、症状に応じた投薬期間が必要になるでしょう。ただし、大切なのは、医師が「治りました」と言うまで通院を続けていただくことですね。治療期間イコール投薬期間ではありません。治療のゴールは、「薬が終わったタイミング」ではなく、「菌の全滅を確認できたタイミング」になります。そこまでで、3週間ほどかかるのではないでしょうか。
再発するかどうかは心がけ次第
編集部
続けて、性感染症の対策についてもお願いします。
保田先生
「膿が出ること」への対策は、治療を除くとありません。そうではなく、「予防」という意味合いなら、コンドームの着用が有効です。100%予防できるわけではありませんが、効果はあると言われています。しかし、ピルの服用で感染は防げません。「避妊対策」とは別の観点になりますので、ご留意ください。避妊と感染は別問題です。
編集部
パートナーがそれぞれ浮気しなければ、性感染症は防ぎきれますよね?
保田先生
そうかもしれませんが、お二人とも「絶対に感染していないこと」が前提条件になります。もし治療を受けるとしたら、自覚の有無にかかわらず、お二人で同時にはじめてください。お一人だけ感染しているということは、あまり考えられないからです。受診先について、男性は泌尿器科、女性は婦人科をおすすめします。
編集部
例えば、公衆浴場から感染することはないのでしょうか?
保田先生
よく聞かれる質問ですが、衛生の行き届いた現代では、まず考えられませんね。また、性感染症をもたらす菌は「弱い」ので、ヒトの体から出てしまうと、そんなに生きていられません。逆に、性行為を通じて“体の中で接触”するからこそ、原因菌が生きたままうつってしまうのです。
編集部
あと、オーラルセックスが危険とも聞きますが?
保田先生
オーラルセックスが特別危険ということはありません。お二人とも感染していなければ、感染症とは無関係でしょう。ただし、オーラルセックスでも感染するというのは事実です。口から性器へ、もしくは性器から口へ感染します。“口でしてるから大丈夫”という考え方は非常に危険だと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
保田先生
症状が出たら、通院が「恥ずかしい」というお気持ちもあるでしょうが、ご自身とパートナーのため、ひいては人類のために、間を置かず受診してください。また、治療のゴールは、医師が「治りました」と言うまでです。痛みや膿が治まった段階ではないことを、重ねて説明させていただきます。
編集部まとめ
排尿時の膿への対策は、「一刻も早い受診」に尽きるということでした。また、「投薬期間が終わった後も治療期間は続く」ということを、心に留めておきましょう。問われるのは、自覚症状の有無よりも、菌そのものの有無です。ほか、耐性菌の話題が怖いですよね。医師の処方は、その可能性を考えたうえでの結果なのでしょう。あまり自分の都合を強いることなく、医師と二人三脚で治療に取り組んでいってください。
尿痛に関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
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