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どうして誤嚥がおこってしまうの? 原因や対策方法を知りたい!

 更新日:2023/03/27
どうして誤嚥が起こってしまうの? 原因や対策方法を知りたい!

乳幼児や高齢者に多い誤嚥(ごえん)。お正月には、お餅の誤嚥に関するニュースをよく耳にしますが、誤嚥とはなぜおこるのでしょうか? また、誤嚥した際には、どう対処すればいいのでしょうか? 予防法や応急処置方法とあわせて、元看護士で、現在は医療ライターとして活躍されている広田さんに、詳しく伺いました。

広田沙織

監修看護師・医療ライター
広田 沙織(看護師・医療ライター)

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大阪府立看護大学医療技術短期大学部卒業。卒業後、国立系総合病院の産婦人科病棟にて勤務。婦人科クリニック、派遣看護師などを経て、医療ライターに。2020年に医療ライターズ事務所medipen(メディペン)を立ち上げ。正しい医療情報を発信することを理念として活動中。

誤嚥とは

誤嚥とは

編集部編集部

誤嚥とは、どんな状態なのか教えてください。

広田沙織広田さん

通常、食べ物や唾液を飲み込むと、食道に入り胃へと送られます。これがなんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまった状態が誤嚥です。

編集部編集部

誤嚥すると、どうなるのでしょうか?

広田沙織広田さん

誤嚥したものの大きさや量、内容、詰まる位置によって症状や処置の緊急度が変わってきます。通常、誤嚥すると、むせたり咳き込んだりするといった気道を守る反射によって、異物を外に出そうとします。しかし、誤嚥したものが大きかったり、量が多かったりすると、異物を排出できず窒息にいたる恐れもあります。また、気道を守る反射が低下している場合、誤嚥した唾液などに含まれる細菌が気管から肺に入り、肺炎(誤嚥性肺炎)をおこしやすくなります。

編集部編集部

子どもがビー玉や飴を詰まらせるのも誤嚥でしょうか?

広田沙織広田さん

食べ物や異物が誤って気道内に入ることを誤嚥といい、異物を誤って飲み込むことを誤飲といいます。そのため、気道に入ってしまったら食べ物でも異物でも誤嚥になります。飴などの食べ物の場合は、食道に入り途中で引っかかったりしなければ通常の嚥下(えんげ)ですので問題はありません。しかし、ビー玉などの異物が食道に入ったのであれば、誤飲となります。さらに誤飲したものが、ボタン電池やタバコ、大人用の薬、防虫剤などの場合、子どもの健康に害が及ぶ可能性が高く、医療機関での早急な処置が必要になります。

よくある誤嚥のケース

よくある誤嚥のケース

編集部編集部

どんな人が誤嚥しやすいか教えてください。

広田沙織広田さん

誤嚥しやすいのは、1歳前から3、4歳までの乳幼児や高齢者です。

編集部編集部

乳幼児の誤嚥はなぜおこってしまうのでしょうか?

広田沙織広田さん

この時期の乳幼児は、目にしたものをなんでも口に入れてしまい、食べられるものと食べられないものの区別が付きません。そのため、手の届く範囲にあって口に入るものはすべて、誤嚥、誤飲する危険性があります。家具から落ちた小さなネジや服から取れて落ちていたボタン、車のおもちゃから外れたタイヤなど、思わぬものを誤嚥、誤飲してしまうことがあります。

編集部編集部

高齢者の誤嚥はなぜおこってしまうのでしょうか?

広田沙織広田さん

高齢者は、加齢や脳梗塞後遺症、認知症、パーキンソン病などによって嚥下機能に障害が発生し、飲み込む、咳き込むといった反射する能力が低下しやすいため、誤嚥がおこりやすい状態となります。また、誤嚥をしても咳き込む反射が見られない場合、気づかぬうちに誤嚥性肺炎を発症していることがあるので注意が必要です。

誤嚥の予防法・対処法

誤嚥の予防法・対処法

編集部編集部

誤嚥を予防する方法があれば、教えてください。

広田沙織広田さん

乳幼児の場合、3.9cm以内の物はすべて口の中に入れてしまう可能性があるため、日ごろから誤嚥、誤飲の危険性があるものは、手の届かない位置に置いておくことが大切です。特に、球形や円錐形のものは、喉に詰まった際に取り出しにくいため、ビー玉やスーパーボールなどのおもちゃは与えないようにし、ブドウやミニトマトなどは切ってから食べさせましょう。高齢者の場合は、食前に嚥下体操をする、食事にとろみを付ける、誤嚥しやすい餅やこんにゃくなどは避けることが効果的です。また、誤嚥性肺炎の予防のために、歯磨きやむし歯、歯周病の治療を行い、口腔内を清潔に保つことも大切です。

編集部編集部

もし家庭や職場などで誤嚥の場面に遭遇したら、どう対処したらいいでしょうか?

広田沙織広田さん

窒息が疑われる場合は、すぐに詰まっている異物を取り出す必要があります。1歳以下の子どもや妊婦さんの場合は「背部叩打法(はいぶこうだほう)」、1歳以上の子どもや大人の場合は「ハイムリック法」などの応急処置を行いましょう。周りに家族や同僚など人がいる場合は、救急車の要請をお願いしてください。発見した時すでに意識がない場合や、ぐったりして反応がなくなった場合は、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。また、窒息していない場合には、むせこみや咳の持続がないかを確認し、症状が続く場合には注意が必要です。稀に小さな異物が、肺にある細い気管支に入ってしまっている場合があり、肺炎の原因になることがあります。そして高齢者の場合、発熱や食欲の低下、喉がゴロゴロするなどの風邪に似た症状が誤嚥性肺炎だったという例がよくあります。いつもと様子が違うなと感じたら、医療機関を受診しましょう。

編集部編集部

背部叩打法やハイムリック法とはどんな応急処置方法でしょうか?

広田沙織広田さん

背部叩打法は背中を強く何度もたたく方法で、ハイムリック法はこぶしを胃のあたりに押し当てて、上に数回素早く押し上げる方法です。どちらも、姿勢の取り方やたたき方、押し上げ方を実際に見てみないとわかりにくいため、市民講座や初期救命コースを受講するのがおすすめです。また、応急処置方法をわかりやすく説明してくれている東京消防庁や自治体などの動画もあるので、そちらを確認するのもいいですね。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージがあればお願いします。

広田沙織広田さん

窒息をともなう誤嚥の場面に遭遇する可能性は誰にでもあります。もしもの時に適切な対処ができるように応急処置方法を知り、シミュレーションをしておくことが大切です。身近な人を救える対策方法をぜひ身につけておきましょう。

編集部まとめ

誤嚥は乳幼児と高齢者に多く、窒息や誤嚥性肺炎などにつながり、命に関わる危険性があることがわかりました。予防法を実践し、もしもの時に備えて、背部叩打法やハイムリック法を習得しておくと安心です。自治体や学校などで行われる救命講習会に、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修看護師・医療ライター